「わがまま」がチームを強くする。

未読
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「わがまま」がチームを強くする。
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出版社
朝日新聞出版

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定価
1,540円(税込)
出版日
2020年05月30日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

ユニークで柔軟な制度で従業員一人ひとりの幸福と生産性を追求するサイボウズは、『2020年版 日本における「働きがいのある会社」ランキング 中規模部門』で第2位に輝き、その組織作りに注目の集まる企業である。しかし、2005年の離職率は28%、年間で4人に1人が辞めていくという状況で、最初からこの環境が整えられていたわけではなかった。本書は、サイボウズが高度なチームワークを発揮する組織を作り上げるまでの試行錯誤を、「わがまま」の重要性から説明したものである。

サイボウズでは、ネガティブなイメージのある社員の「わがまま」を、会社や社会を変革する貴重なアイデアととらえ、「わがまま」を引き出し、まとめながらチームの力に変えている。少子高齢化や人口減少の中にある現代においては、どの会社も競争力を高める必要性を感じていることだろう。そのために、世代や価値観の異なる社員同士のチームワークを高めたいと思ってはいても、一筋縄ではいかない。活発な議論を目指そうとして、意見のぶつかり合いからすれ違いが生まれては、事態の悪化を招きかねない。しかし、社員の「わがまま」をうまく利用することができれば、それは競争力の源泉になるというのが本書の主張だ。

本書の提案は小さなチームからでも始められ、それでいて社会にも変化をもたらすかもしれない。複雑そうな社内課題の解決に必要なのは、実はシンプルなルールづくりなのかもしれないと思わせてくれる。小さなチームの一員から、会社規模のリーダーまで、チームにかかわるすべての人に大切に読んでほしい一冊である。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

青野慶久(あおの よしひさ)
サイボウズ株式会社代表取締役社長。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現・パナソニック)を経て、1997年、愛媛県松山市でサイボウズ株式会社を設立。2005年より現職。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を7分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーや一般社団法人コンピュータソフトウェア協会の副会長を歴任。著書に『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)、『会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。』(PHP研究所)などがある。

サイボウズチームワーク総研
「チームワークあふれる社会を創る」を企業理念とするサイボウズが試行錯誤し、10年以上にわたり蓄積した自社のノウハウをメソッドとして提供している。自社事例を元にした学びの場と実践する場を、講演、企業研修、組織コンサルティングサービスとして提供し、組織の課題解決の支援をしている。

松川隆(まつかわ たかし)
チームワーク総研シニアコンサルタント。銀行、広告代理店、テニススクール経営という異色のキャリアの持ち主。本書では、主に第2章「チームで『わがまま』を言う練習をしよう」を担当。

青野誠(あおの まこと)
チームワーク総研研究員。人事本部部長を務めながら、採用・育成・制度づくりの業務を行うプレイングマネージャー。本書では、主に第3章「みんなの『わがまま』の交通整理をしよう」を担当。

なかむらアサミ
チームワーク総研シニアコンサルタント。サイボウズがチームワークと言い始めた当初から一貫してチームワークに関する活動に携わっている。本書では、主に第4章「たくさんの『わがまま』で石垣のような組織をつくろう」を担当。

本書の要点

  • 要点
    1
    会社が個人のわがままに応え、対応する能力をつけていくことは、消費者の価値観が多様化した現代において、会社の競争力を高めるために重要である。
  • 要点
    2
    企業理念は、会社全体の理想であり、全社員共通のわがままである。社員がわがままを言う際には、企業理念に照らし合わせ、「自分のわがままが組織に貢献するかどうか」が判断基準となる。
  • 要点
    3
    情報共有を徹底することによって、社員のモチベーションが高まり、企業理念への主体的な参加が期待できる。

要約

【必読ポイント!】 「わがまま」には社会を変える力がある

競争力の源泉としてのわがまま
Mikolette/gettyimages

サイボウズは、わがままは「楽しく働くためのヒント」であり、「社会を変えるかもしれないアイデア」であるとしてポジティブにとらえている。そして、わがままを引き出すことが、多様化した価値観へ対応するための競争力を与えてくれるとすらいうのだ。

戦後日本ではいわばみんなが「同じわがまま」を抱えている状態であり、ビジネスモデルは「大量生産、大量消費」が一般的であった。しかし、今は消費者の価値観が多様化し、みんなそれぞれ「違うわがまま」を持っている。今後は消費者それぞれのわがままに応え、対応できる企業だけが成長できる。だとしたら、社員のわがままはアイデアの宝庫だ。

サイボウズの代表取締役社長である青野慶久氏(以下、青野氏)はよく、出身地の愛媛県今治市で生産される「今治タオル」を例に社員のわがままの重要性を説明している。かつて日本のタオル生産量の半分以上を占めた今治タオルは、円高で工場が中国に移転すると、一転して生産量が落ち込んだ。変革の必要性を感じた今治タオルは、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を招へいし、「高品質なものしか作らない、多品種少量生産でいこう」という方針を固める。結果として、今治タオルの品質やブランド価値が高まり、生産量は少ないまま売り上げは飛躍的に伸びたのだという。

この成功の大きな要因は「わがまま」にあるというのが青野氏の解説だ。今治タオルの付加価値や販売戦略を考えるには、さまざまな人からの多様なアイデアが不可欠である。たとえば、「私はベビーグッズをつくりたい」と、現場でわがままを言う人が現れなければ、ニーズがあることにすら気づかなかったかもしれない。日本の社会は少子高齢化、人口減少に直面し、これまでの働き方や価値観では会社の競争力は落ちていくことが予想される。だからこそ、多品種少量生産や高単価に結びつく私たち一人ひとりのアイデア、すなわちわがままを競争力の源泉にし、社会を変えるきっかけにしていかなければならない。

本当のわがままである「Beのわがまま」
RichVintage/gettyimages

わがままの力を引き出すためには、わがままという言葉から感じられる「自分勝手」という印象を変えていく必要がある。人はそれぞれ関心を持つ分野が異なる。わがままもこうした関心の一形態にすぎず、一人ひとりの「欲望」や「理想」の現れである。その人のわがままが実現することで、世の中もその人も幸せになるならば、わがままを言うことに何の問題もない。

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