対話型マネジャーの表紙

対話型マネジャー

部下のポテンシャルを引き出す最強育成術


本書の要点

  • 組織に属する人がやりがいを持って成長し成果を上げていくには、上司と部下の間で対話を行い、「業務」「個人」「組織」の3つのレベルですり合わせを行っていくことが重要である。

  • 「業務」「個人」「組織」の3つをそれぞれ「現在」「過去」「未来」の時間軸で分けた「すり合わせ9ボックス」を活用し、頭の中にある9つのボックスを開けていくイメージで対話してみよう。

  • 対話では、部下の話に反応し、話を返し、質問をするなどして、部下にどんどん話してもらうようにする。

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なぜ企業に対話が必要なのか

3つの要素をすり合わせる

YinYang/gettyimages

会社や組織において、人は「業務」「個人(自分)」「組織(自分以外)」の3つの要素を考えなければならない。多くの人は入社当初には期待に胸を膨らませ、「早く仕事で結果を出して(業務)、能力を高めて(個人)、組織に貢献していこう(組織)」といったように3つの要素をつなげて考えているはずだ。しかしやがて、「今の仕事がつまらない(業務)から、成長実感も湧かないし(個人)、そもそも会社がどこに向かっているかわからない(組織)」と、3つの要素が乖離してやる気をなくし、組織から去っていってしまう。本書は、業務、個人、組織の3つの要素について上司と部下が対話し、すり合わせをしていくことの重要性について説いている。対話もなく、上司からただ業務に必要な指示を出されているだけでは、部下はそれをこなすだけの生活になってしまう。一方、部下が自分の言いたいことを言えて、マネジャーがそれをしっかり受け止め、組織としての考えも伝えてくれる「対話」の場があれば、部下はもっと働きがいを持って仕事に取り組めるはずだ。

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【必読ポイント!】 「何を」すり合わせるか

業務レベル、個人レベル、組織レベル

本書では、対話を次のように定義している。「従業員の継続的な成果創出、モチベーション向上、成長促進、働きがい向上のために必要な業務・個人・組織に関する諸認識をすり合わせること」組織の中でやりがいや働きがいを感じていくためには、何よりまず自分に課せられた「業務」で成果を上げる必要がある。目の前の業務を全うすることで、周囲からも認められて、自分に自信がつくからだ。そして、継続的に成果を出し続けていくためには、その土台となる「個人」の能力や資質を磨き、キャリア観など自分の軸をつくっていくことが不可欠だ。加えて、所属する「組織」の成り立ちやそこにいるメンバー、組織の方向性への理解を深めていく必要がある。要するに、主に業務から派生するテーマである「業務レベル」、個人の成長やライフスタイルに関する「個人レベル」、組織やチームに関する「組織レベル」の各レベル(領域)の中で、上司と部下の諸認識をすり合わせていくこと、そして各レベル間をつなげていくことこそ、対話の目的なのだ。3つのレベルがつながっていくほど、業務成果を出すことが自分の将来を見すえた能力開発となり、同時に組織貢献になっているという手ごたえ、つまりやりがいを感じることができる。といっても、「対話によってモチベーションを上げよう」と意気込んで失敗してしまうケースも多い。モチベーションが上がるのは結果であって、対話の焦点をそこに合わせるべきではない。業務レベルの対話の焦点は「成果」、個人レベルでは「成長」、組織レベルでは組織の方向性についての「共感」であるべきだ。

すり合わせ9ボックス

画像提供/日本能率協会マネジメントセンター

本書では、対話のテーマを明確にするために、「業務」「個人」「組織」それぞれを時間軸で3分割した、「すり合わせ9ボックス」を利用する。横軸が現在、過去、未来の時間軸、縦軸が業務、組織、個人の3つのレベルを表す3×3の9つのボックスを想像していただきたい。それぞれのテーマが人の頭の中の箱に詰まっていて、該当テーマについて対話をしながら、その箱を開けて中身を探っていくようなイメージだ。業務レベルの「現在」時間軸では、部下が抱えている業務不安の解消や解決がテーマだ。対話を通して、顕在化している不安だけでなく、潜在的に抱えているモヤモヤを具現化していく。業務レベルの「過去」時間軸では、

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要約公開日 2020.10.20
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