対話型マネジャー

部下のポテンシャルを引き出す最強育成術
未読
対話型マネジャー
対話型マネジャー
部下のポテンシャルを引き出す最強育成術
未読
対話型マネジャー
出版社
日本能率協会マネジメントセンター

出版社ページへ

出版日
2020年06月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

「自分はこのままでいいのか」という感覚は、ビジネスパーソンなら誰しも身に覚えがあるものだろう。日々の業務に追われているうちに仕事をこなすだけになり、「仕事はつまらないし、自分が成長している気もしないし、会社が目指すところもわからない」という気持ちになってしまいがちだ。本書で著者は、こうして「業務」「個人」「組織」の3つのレベルが乖離すると、やがて離職につながると指摘している。

本書では、マネジャー側の視点から、部下と充実した対話を行い、部下の「業務」「個人」「組織」のレベルをそれぞれ結びつけることによって、部下の成長を促し、成果へとつなげるための知識やスキルが多数掲載されている。ノウハウがなければ、1on1の時間を設けても、思いつきで話を進めたり、上司ばかり話してしまったりしがちだ。意図的に話題を選択し、部下にしゃべってもらうのは、特に口下手な人にとっては荷が重く感じられるだろう。

本書で紹介されている「すり合わせ9ボックス」の考え方はシンプルで理解しやすく、具体的な活用法、それぞれの場面で聞くべきこと、聞き方、いい対話の例なども豊富に掲載されており、細かい場面対応についても網羅されている。自分のマネジメント方法を見直したい、マネジメントに対話を取り入れたいと考えているマネジャーにとっては、参考にしたい情報ばかりだろう。本書を教科書に、部下との向き合い方を見つめ直してみてはいかがだろうか。

ライター画像
池田友美

著者

世古詞一(せこ のりかず)
1973年生まれ。千葉県出身。組織人事コンサルタント。1on1ミーティングで組織変革を行う1on1マネジメントの専門家。早稲田大学政治経済学部卒。 Great Place to Work® Institute Japanによる「働きがいのある会社」2015年、2016年、2017年中規模部門第一位の(株)VOYAGE GROUPの創業期より参画。営業本部長、人事本部長、子会社役員を務め、2008年独立。コーチング、エニアグラム、NLP、MBTI、EQ、ポジティブ心理学、マインドフルネス、ストレングスファインダー、アクションラーニングなど、10以上の心理メソッドのマスタリー。個人の意識変革から、組織全体の改革までのサポートを行う。
著書に『シリコンバレー式最強の育て方―人材マネジメントの新しい常識1on1ミーティング―』(かんき出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    組織に属する人がやりがいを持って成長し成果を上げていくには、上司と部下の間で対話を行い、「業務」「個人」「組織」の3つのレベルですり合わせを行っていくことが重要である。
  • 要点
    2
    「業務」「個人」「組織」の3つをそれぞれ「現在」「過去」「未来」の時間軸で分けた「すり合わせ9ボックス」を活用し、頭の中にある9つのボックスを開けていくイメージで対話してみよう。
  • 要点
    3
    対話では、部下の話に反応し、話を返し、質問をするなどして、部下にどんどん話してもらうようにする。

要約

なぜ企業に対話が必要なのか

3つの要素をすり合わせる
YinYang/gettyimages

会社や組織において、人は「業務」「個人(自分)」「組織(自分以外)」の3つの要素を考えなければならない。多くの人は入社当初には期待に胸を膨らませ、「早く仕事で結果を出して(業務)、能力を高めて(個人)、組織に貢献していこう(組織)」といったように3つの要素をつなげて考えているはずだ。しかしやがて、「今の仕事がつまらない(業務)から、成長実感も湧かないし(個人)、そもそも会社がどこに向かっているかわからない(組織)」と、3つの要素が乖離してやる気をなくし、組織から去っていってしまう。

本書は、業務、個人、組織の3つの要素について上司と部下が対話し、すり合わせをしていくことの重要性について説いている。対話もなく、上司からただ業務に必要な指示を出されているだけでは、部下はそれをこなすだけの生活になってしまう。一方、部下が自分の言いたいことを言えて、マネジャーがそれをしっかり受け止め、組織としての考えも伝えてくれる「対話」の場があれば、部下はもっと働きがいを持って仕事に取り組めるはずだ。

【必読ポイント!】 「何を」すり合わせるか

業務レベル、個人レベル、組織レベル

本書では、対話を次のように定義している。

「従業員の継続的な成果創出、モチベーション向上、成長促進、働きがい向上のために必要な業務・個人・組織に関する諸認識をすり合わせること」

組織の中でやりがいや働きがいを感じていくためには、何よりまず自分に課せられた「業務」で成果を上げる必要がある。目の前の業務を全うすることで、周囲からも認められて、自分に自信がつくからだ。

そして、継続的に成果を出し続けていくためには、その土台となる「個人」の能力や資質を磨き、キャリア観など自分の軸をつくっていくことが不可欠だ。加えて、所属する「組織」の成り立ちやそこにいるメンバー、組織の方向性への理解を深めていく必要がある。

要するに、主に業務から派生するテーマである「業務レベル」、個人の成長やライフスタイルに関する「個人レベル」、組織やチームに関する「組織レベル」の各レベル(領域)の中で、上司と部下の諸認識をすり合わせていくこと、そして各レベル間をつなげていくことこそ、対話の目的なのだ。3つのレベルがつながっていくほど、業務成果を出すことが自分の将来を見すえた能力開発となり、同時に組織貢献になっているという手ごたえ、つまりやりがいを感じることができる。

といっても、「対話によってモチベーションを上げよう」と意気込んで失敗してしまうケースも多い。モチベーションが上がるのは結果であって、対話の焦点をそこに合わせるべきではない。業務レベルの対話の焦点は「成果」、個人レベルでは「成長」、組織レベルでは組織の方向性についての「共感」であるべきだ。

すり合わせ9ボックス
画像提供/日本能率協会マネジメントセンター

本書では、対話のテーマを明確にするために、「業務」「個人」「組織」それぞれを時間軸で3分割した、「すり合わせ9ボックス」を利用する。横軸が現在、過去、未来の時間軸、縦軸が業務、組織、個人の3つのレベルを表す3×3の9つのボックスを想像していただきたい。それぞれのテーマが人の頭の中の箱に詰まっていて、該当テーマについて対話をしながら、その箱を開けて中身を探っていくようなイメージだ。

業務レベルの「現在」時間軸では、部下が抱えている業務不安の解消や解決がテーマだ。対話を通して、顕在化している不安だけでなく、潜在的に抱えているモヤモヤを具現化していく。

業務レベルの「過去」時間軸では、

もっと見る
この続きを見るには...
残り1909/3381文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2020.10.20
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
課長の心得
課長の心得
安部哲也
未読
コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方
コロナ後に生き残る会社 食える仕事 稼げる働き方
遠藤功
未読
自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方
自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方
島村華子
未読
無意識がわかれば人生が変わる
無意識がわかれば人生が変わる
前野隆司由佐美加子
未読
危険人物をリーダーに選ばないためにできること
危険人物をリーダーに選ばないためにできること
ビル・エディ宮崎朔(訳)
未読
超速フレームワーク
超速フレームワーク
大嶋祥誉
未読
思うことから、すべては始まる
思うことから、すべては始まる
植木宣隆
未読
頭を「からっぽ」にするレッスン
頭を「からっぽ」にするレッスン
アンディ・プディコム満園真木(訳)
未読
法人導入をお考えのお客様