デカルトの悪魔はなぜ笑うのか

100のアナロジーで読む素晴らしき科学の世界
未読
デカルトの悪魔はなぜ笑うのか
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デカルトの悪魔はなぜ笑うのか
ジャンル
出版社
創元社
出版日
2014年04月17日
評点
総合
4.5
明瞭性
5.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

科学はわかりにくい。無味乾燥で、わけの分からない数式が散乱し、途方も無く大きいものと小さいものが出てきて、結局つかみどころがない。これまでに少しでも科学に対して、そう思ったことがある方はぜひ本書を手にとっていただきたい。

『みなさんはご存知だろうか? 地球の断面がまるでスコッチ・エッグのように見えること。タンク1杯分のガス燃料で月を往復できること。マクスウェルの悪魔やデカルトの悪魔のこと。クモの糸がジャンボジェット機を捕まえられること。』このように、思わず「ん?」と目を向けてしまう内容からはじまる本書はまさに科学の面白さに触れられる一冊だ

直感が通用しにくい学問だからこそ、難しい科学をわかりやすく教え、広く伝えるため、人びとは「アナロジー」に頼ってきた。アナロジーとは、複雑なことを説明する際、身近なものに置き換えた「たとえ話」のことだ。なじみのないことを、なじみのあることと比べたり、パターンと意味を見出したりすることで、推論しやすくする効果をもつのがアナロジーの力だ。

本書では、美しいイラストや図版とともに物理学、化学、生物学、天文学、地球科学、人体、テクノロジーの7章に分かれた、110個のアナロジーの例がそれぞれ見開き2ページずつ紹介されている。ぱらぱらめくっているだけで楽しい、大人のための科学図鑑といったところだ。ぜひ本書を手に取って、あなただけのお気に入りのアナロジーをさがして欲しい。

著者

ジョエル・レヴィ
ジャーナリスト。『詐欺師ハンドブック』(トランスワールドジャパン)、『世界の終焉へのいくつものシナリオ』(中央公論新社)、『世界陰謀史辞典』(柏書房)、『秘密結社の謎バイブル』(産調出版)、大人のためのやり直し講座『化学』(創元社)など歴史、科学に関する著作多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    わかりにくく複雑な科学も、身近なものに置きかえた「たとえ話」で表現することで、すっと心に入りこめるようにすることができる。
  • 要点
    2
    アナロジーは科学的直感や創造性の謎を解くカギである。
  • 要点
    3
    アナロジーも誤用や乱用によって、誤解を生むことがある。
  • 要点
    4
    アナロジーの力で科学に対する固定観念を打ち破り、広くたくさんの人の知的好奇心をくすぐることができれば、結果としてそれは科学技術を発展させ、人々の生活に花を添えることにつながる。

要約

生物の巧妙さを伝えるアナロジー

たとえ話で語るからこそ見えてくる「生命」の巧
arvitalya/iStock/Thinkstock

本書は科学を7つの分野に章分けし、アナロジーを使ってその魅力的な世界を紹介している。まずはその中から「生物」の分野から2つのたとえ話を紹介しよう。

直径わずか0.03mmの糸を紡ぐクモは、人間の技術でつくり出せる最高のものに匹敵する、もしくはそれを超える材料を自然界の進化の中で生み出してきた。クモの糸は、それを鉛筆(約6mm)の太さにまで束ねれば、着陸時の速度である時速260キロで飛んでいるジャンボジェット機を止めることができるというのだ。

本当にこれが実現できるかどうかは置いておいて、これはクモの糸の強靭な強さを表現するときによく使われるたとえだ。1匹のクモは目的に応じて違う種類の糸をつくり出すことができる。たとえば、クモが命綱に使う「引き糸」。この引き糸は、含まれる水分の量やクモの種類によっても変わってくる。しかし、いずれの引き糸であっても、その糸が支えることができる重さは「スチールよりも強く、もっとも強力で防弾チョッキにも使われる人工繊維であるケプラーと同程度をほこる」のだという。クモが飛んでいる昆虫を捕らえるために使う「捕獲糸」の場合、支えることができる重さをメガパスカルで表すと1338Mpaとなる。これは400Mpaという比較的柔らかいスチールの強さの3倍にも値するのだ。

誤用されたアナロジー

アナロジーが間違って使われることもある。例えば「荒野の時計」というたとえ話がそれにあたる。

ウィリアム・ペイリーは1802年『自然神学』でこう表現した。「荒野をさまよっているときに、時計をみつけたとする。たくさんの歯車が精巧に組み合わさり、じつに複雑な姿から、それが偶然と運によって生じたとは考えにくく、時計職人の手によって作られなければ存在しえない」と主張した。これは神の存在を証明しようとしたアナロジーである。この世界に存在する、生物や宇宙などの複雑なしくみは(神という)誰かが設計したもののはずだというのだ。

しかし著者によれば、これは無知によって生まれた誤りだという。複雑な構成があるから設計者がいるというのは論理の飛躍であり、進化生物学者たちは生物の進化が段階的に行われ、たくさんの中間段階を経た上で今の形に至っていることを、化石などをつかって主張した。

「地球」を食卓で

想像できないほど巨大なものは、想像できるもので実感する
olgna/iStock/Thinkstock

続いて、地球科学の分野から地球の断面をおいしくたとえたアナロジーを紹介しよう。

スコッチ・エッグというイギリスの料理をご存知だろうか? ゆで卵をひき肉で包み、表面にパン粉をつけて油で揚げたもので、大変おいしい。

実はこのスコッチ・エッグの断面は、まるで地球の断面とそっくりだ。

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要約公開日 2014.09.19
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