破壊する創造者
ウイルスが人を進化させた

未 読
破壊する創造者
ジャンル
著者
フランク・ライアン 夏目大(訳)
出版社
早川書房
定価
2,700円
出版日
2011年11月25日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
5.0
応用性
4.0
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破壊する創造者
破壊する創造者
ウイルスが人を進化させた
著者
フランク・ライアン 夏目大(訳)
未 読
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出版社
早川書房
定価
2,700円
出版日
2011年11月25日
評点
総合
4.5
明瞭性
4.5
革新性
5.0
応用性
4.0
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レビュー

エイズ、インフルエンザなどの様々なウイルスと、私たち人類は戦い、生き延びてきた。ウイルスは人類にとって宿敵であり、駆除するべきものと思うのがふつうかもしれない。

しかし、進化生物学者であり、医師でもある著者フランク・ライアン氏は、ウイルスは私たちと共生している生命体であるという。さらに、ウイルスによって生物は進化が促されてきたのだというのだ。本書は、今までの進化に関する見方を一新する視点を提示している。

実は、広く知られているダーウィンの進化論の考え方である「突然変異と自然選択」だけでは、生物の多様性・複雑性は説明しきれない。本書にあるウイルスによる生命の進化は、それを補完する性質のものだ。通常、ウイルスは、感染した宿主を破壊すると考えられているが、徐々に宿主とともに共生できる道を進んでいく。ウイルスに耐えうる宿主が生き残ると、宿主のゲノムにウイルスの成分が入り込む。すると、今までと異なるゲノムが作り出され、宿主もウイルスも共に進化を遂げることになる。

ヒトゲノムは、全ゲノムのうち46%がウイルス由来の配列だという。つまり、ヒトはウイルスによって現在まで進化させられた生物と言っても過言ではないかもしれない。本書にはそのほかにも、ウイルスと病気の関係、異種間交配による進化など、既存の進化生物学の概念を覆す内容が盛り込まれている。読み終わるころには、改めて生命というものの複雑さを実感することになるだろう。

著者

フランク・ライアン
英国の進化生物学者、医師。シェフィールド大学で医学を修める。同大動植物科学科名誉研究員。英国王立医師会、同医学協会、ロンドン・リンネ協会の会員。著書に、NYタイムズのノンフィクション・ブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれた Tuberculosis(The Forgotten Plague) (1992)、『ウイルスX—人類との果てしなき攻防』(1996)、Darwin’s Blind Spot(2002)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    様々な生物とウイルスの関係を調査することで、ウイルスが生き物と共生関係をもち、ヒトをふくむ生物の遺伝子に突然変異を起こすことがわかってきた。
  • 要点
    2
    ヒトゲノムのうち約半分がウイルス由来の生成物である。このことは、ヒトの長い進化の歴史に、ウイルスが大きく影響してきたことをうかがわせる。
  • 要点
    3
    外的ウイルスだけでなく、ヒトのDNAに内在化されたレトロウイルスが、統合失調症、自己免疫疾患、癌などの様々な病気と関わりがあることがわかってきている。

要約

ウイルスは進化に関与してきたのではないか

ウイルスとは何者か
Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock

ウイルスとは何者なのだろうか。ウイルスは生命体ではないと主張する人もいる。ダーウィン進化学者は、種間で遺伝子を水平移動させる「仲介者」でしかないという。ニューヨーク州立大学の分子遺伝学・微生物学部で教鞭を執る、ポリオウイルスを人工合成したことで知られるウィンマー教授は、ウイルスは生物でないと暗に主張するかのように、ウイルスの化学式を発表した。

しかし、例えば、天然痘やインフルエンザのウイルスを人間に注射したとしたら、ウイルスは人間という自然宿主のなかで活発に活動し、ウイルスと人間の間に恐ろしい相互作用が起きる。宿主の外にいるとき、ウイルスは確かに単なる化学物質のようだが、本来の生存環境である自然宿主の中にいるときは、他の生物と同じように、宿主の中で誕生し、子孫を残し、死ぬ。つまり私たちと同じライフスタイルを持っている「生き物」なのだ。

種の異なる生物を「共生」させるウイルス

「共生」というと、ある生物が別の生物の「掃除屋」をするサメとエビのような関係や、有用な化学物質を共有する植物と菌類のような「代謝共生」があげられるが、もう一つ、遺伝子レベルでの驚くべき共生関係も知られている。

例えば、エリシア・クロロティカというウミウシと藻類の共生だ。ウミウシは、成長段階に藻類を食べ、植物が光合成するために使う葉緑体を体内に取り込む。葉緑体で体を満たしたウミウシの口はなくなり、死ぬまで光合成のみによってエネルギーを得ることができるようになるという。一方、藻類の葉緑体は、自らを維持するためのタンパク質が必要になる。本来、遺伝情報をもっている細胞核から切り離されてしまった葉緑体は、このままでは機能できないはずだ。しかし、実は、あるウイルスによって、藻類の細胞核からウミウシの細胞核に、重要な遺伝子が受け渡されており、そのために葉緑体は機能できるということが現在ではわかっている。ウイルスが遺伝子操作に関与し、2つの生物の共生の仲立ちとして共に生き続けているのである。この種の「共生」はまさに驚くべきもので、「天然の遺伝子工学」ともいえる。

著者は、ウイルスを生物とみなすことで、ウイルスと宿主との関係も、一種の「共生」と呼べるのではないかと考える。さらに、両者の関係によって遺伝子レベルで突然変異が起きることでも進化が起こるのではないか、厄介者であるウイルスは人の進化に影響を与えてきたのではないかという考えを持つに至った。

【必読ポイント!】ウイルスが私たちをヒトにしたのか

ヒトゲノムの不思議
Eskemar/iStock/Thinkstock

2001年2月、史上初めてヒトゲノムの基本的な構造が突き止められた。これは21世紀の歴史に刻まれる偉大な業績であるが、その割に一般の人たちの注目度があまり高くなく、何がわかったのか正しく理解されていない節がある。

ヒトゲノムの構造には、不思議な部分が非常に多い。まず驚くのは、その規模の小ささで、ヒトの遺伝子数は、約2万という少なさなのである。そして、最も不思議なのは、

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ウイルスが人を進化させた
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フランク・ライアン 夏目大(訳)
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