まどわされない思考

非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために
未読
日本語
まどわされない思考
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非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために
未読
日本語
まどわされない思考
出版社
定価
2,200円(税込)
出版日
2020年03月28日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

現代社会には、他者に対して攻撃的で極端な主張や怪しげな主張、陰謀論を疑う主張が満ちている。なぜそんな意見に耳を傾け同調するのか不思議に感じるようなものもあれば、知らないうちに受けいれて信じてしまっているものもあるだろう。たとえば、ビタミンCが風邪に効く、通信用電波は体に悪影響を及ぼすといったことは、多くの人が漠然と信じているかもしれない。人間の知性は完全ではないため、どんなに聡明な人物でも誤りを犯すことから逃れられないのだ。

本書は、人間の論理や心理がどのようなときに誤謬に陥りやすいかを、豊富な実例をもとに紹介している。反ワクチン運動、温暖化否定論、通信用電波への不安、代替医療、人種差別など、なぜそれらが誤っていて、信じることが害になるのか、エビデンスに基づいて説明されているのだ。それぞれの例が極めて具体的でわかりやすいため、私たちが誤謬に陥る理由がはっきりと理解できるだろう。

感染症の流行と対策について様々な言説が飛び交い、どのような議論を信頼すれば良いのかわからなくなってしまう現在において、本書が紹介する批判的思考は、よりよい理解の手助けとなるだろう。人には感情があり、容易に間違える。偏った意見や怪しげな主張を信じる他人をバカにすることなく、自分も誤りに陥っていないか批判的に考えつづけることの大切さを学べるはずだ。

ライター画像
大賀祐樹

著者

デヴィッド・ロバート・グライムス
物理学者、ガン研究者、科学ジャーナリスト。1985年アイルランドのダブリン生まれ。オックスフォード大学およびクイーンズ大学(ベルファスト)所属。BBC(英国放送協会)・RTE(アイルランド放送協会)で科学・政治・メディアに関するコメンテーターとして活躍中。ガーディアン紙、アイリッシュ・タイムズ紙、スペクテイター誌、その他多くの媒体で記事を執筆した。アイルランドにおける科学関連の政策のアドバイザーも務める。ワクチン反対運動や気候変動、原子力などに対する認識の誤りを科学的な視点から解説して世論を正しい方向に導いた功績から「2014 Sense About Science / Nature Maddox」賞を受賞。

本書の要点

  • 要点
    1
    私たちは様々な誤謬に陥りやすいが、どのような理由で間違いを犯すのか。その方法を知り、エビデンスに基づいて自分の信念を批判的に検証することが大切だ。
  • 要点
    2
    人は、論理構造を誤ったり、思い込みにとらわれたりしがちである。自分の信念に都合良い事実だけを過度に重視してしまうと、それを否定する事実を見逃し、誤りに陥ってしまう。
  • 要点
    3
    反証可能な考えだけを対象として、都合の悪いエビデンスであっても排除せずに受けいれる。何よりもまず自分の信念を批判的にとらえ、誤りに気づいたら修正していく科学者的な態度でいることが重要である。

要約

思考の罠

批判的思考の大切さ
Who_I_am/gettyimages

筋道立ててよく考え、推測する能力は人類が誇る才能だ。しかし、その人類の知性が誤った考え方をすることも少なくない。詐欺まがいの健康アドバイスにはじまり、最近盛んなフェイクニュースなど、現代ほどペテン師や愚か者の意のままに人々が操られている時代はない。

とはいえ、その誤りから学ぶというユニークな才能も備えている。どんな場面で間違えやすいかを知ることができれば、誤った考え方をしないで済む。そのための強力な武器となるのが、批判的に考える能力だ。思考の道筋を最後まで論理的にたどる方法を身につければ、私たちは本能や直感などよりもはるかに信頼できる形で結論を下せるようになるに違いない。

もちろん、自分の信念に対して、他人の信念に向けるのと同じくらい厳しい疑いをもつことは難しい。明らかな事実を頼りにして、どれだけ心地よいものであっても間違った考えや信念を捨てる覚悟を持つことが大切なのだ。導き出した結論が気に入るか、自分の世界観に合っているかよりも、その結論がエビデンスと論理によって導き出されたかどうかが重要なのである。

私たちの現実はいとも簡単にねじ曲げられてしまう。私たちが間違いを犯す理由を明らかにしたうえで、どうすれば分析的思考を身につけ、科学的手法を用いて個人の生活を、そして世界全体をよりよくすることができるかを探ることが本書の目的だ。

論理構造の誤りを見抜く
Radachynskyi/gettyimages

論証において、論理構造に欠陥があるために論証も間違えてしまうことを「形式的誤謬」と呼ぶ。「すべての人間は死ぬ。ソクラテスは死んだ。したがってソクラテスは人間だった」。この論証は表面的には正しいように見えるが、「後件肯定」という誤りに陥っている。試しに「人間」を「犬」に置き換えると間違いがわかるだろう。

この後件肯定は、誤りのある論証があたかも正当であるかのような幻想をつくり出す。たとえば陰謀論者は次のように自分の主張を正当化する。「隠蔽工作があるなら公式声明は否定するだろう。公式声明は我々の主張を誤りだと証明した。したがって隠蔽工作があった」。有効な論拠で否定しても、こうした後件肯定を用いれば正当化できてしまう。

製薬会社は癌の治療法を知りながら隠している、といったあらゆる種類の陰謀論の根幹に、後件肯定がある。そもそも、大規模な陰謀を長期間隠し続けるのはほぼ不可能だ。

他にもこうした論理の飛躍はある。近年、癌の発生率は著しく上昇した。多くの人は、遺伝子組み換え食品や予防接種などにその責任を押しつけようとした。しかし、癌の最大のリスク要因とは加齢である。感染症や劣悪な衛生状態などを克服した人類が長生きするようになったため、癌の発生率が上がっているのが事実なのだ。

関心を引きつけるたった1つの例から結論に飛びつくと錯誤に陥ってしまう。幸運な成功例だけから結論を出す「生存者バイアス」や、エビデンスのなかから自分に都合のいいものだけを選ぶ「チェリーピッキングの誤謬」などにも導かれて、私たちは誤った結論にたどり着いてしまう。

論点のすり替えに気づく

論理構造自体は合理的でも、前提に誤りがあると非形式的誤謬が生じる。

2つの分野でノーベル賞を受賞した唯一の人物であるライナス・ポーリングは、大量のビタミンCは風邪はおろか万病に効く万能薬だと世界中に伝えた。しかしその説には確かな根拠が存在しなかった。

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