StrategicMind 2014年新装版

変わり続ける状況の中で決断するための4つの思考法
未読
StrategicMind 2014年新装版
StrategicMind 2014年新装版
変わり続ける状況の中で決断するための4つの思考法
未読
StrategicMind 2014年新装版
出版社
masterpeace
出版日
2014年05月09日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

本書は「企業参謀―戦略的思考とは何か―」(flierでも既に紹介)を元に、海外で出版された『The Mind of the Strategist(1982)』を日本語に翻訳した書籍『ストラテジックマインド(1984)』の新装版である。この2014年新装版発刊にあたっては、装丁を一新するに留まらず、各章の初めに大前研一氏により、『ストラテジックマインド』の解釈と現代における応用の考え方が述べられており、この部分だけでも極めて価値が高い内容となっている。

本書が出版された1982年という時期は、エズラ・ヴォーゲル著の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版されて間もない、日本製品が世界を席捲していた日本の黄金時代に当たる。その中で、日本企業の特徴を初等教育から一貫した文化に紐づけ、欧米企業が形だけを真似ても効果は限定されるだろうと喝破しているあたりは、翻って90年代の日本企業が行い続けた失策を予言しているようで興味深い。

そして、本書で語られている「3C分析」という言葉を聞いたことがある方は多いのではないだろうか。3Cはコンサルティングファームやビジネススクールで、フレームワークの基本中の基本として第一に叩き込まれるものだ。この3Cをベースにした分析手法は、(そうと意識しないケースも含めると)あらゆる企画担当者が使っていると言えるほどで、多くの中期経営計画や新規事業計画はこのフレームワークを元に作成されているのである。その3Cの本質も語られた本書は、教養あるビジネスパーソンを目指す方であれば、間違いなく一度読むべき書であると言えよう。

ライター画像
大賀康史

著者

大前 研一
1943年、福岡県若松市(現北九州市若松区)生まれ。早稲田大学理工学部卒業。東京工業大学大学院原子核工学科で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院原子力工学科で博士号を取得。経営コンサルティング会社マッキンゼー&カンパニー日本社長、本社ディレクター、アジア太平洋地区会長等を歴任。94年退社。96~97年スタンフォード大学客員教授。97年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院公共政策学部教授に就任。現在、株式会社ビジネス・ブレークスルー代表取締役社長。オーストラリアのボンド大学の評議員(Trustee)兼教授。

また、起業家育成の第一人者として、05 年4月にビジネス・ブレークスルー大学大学院を設立、学長に就任。2010年4月にはビジネス・ブレークスルー大学が開学、学長に就任。02年9月に中国遼寧省および天津市の経済顧問に、また10年には重慶の経済顧問に就任。04年3月、韓国・梨花大学国際大学院名誉教授に就任。『新・国富論』、『新・大前研一レポート』等の著作で一貫して日本の改革を訴え続ける。『原発再稼働「最後の条件」』(小学館)、『洞察力の原点』(日経BP社)、『日本復興計画』(文藝春秋)、『「一生食べていける力」がつく大前家の子育て』(PHP研究所)、『稼ぐ力』(小学館)、『日本の論点』(プレジデント社)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    現代の企業経営において、「ヒト・カネ・モノ」の他に、「2S」、すなわち「スピード」と「スケール」が重要となっている。
  • 要点
    2
    顧客を表すカスタマー(Customer)、競合相手を表すコンペティター(Competitor)、そして自社を表すカンパニー(Company)の「3つのC」は戦略の3要素を表す。
  • 要点
    3
    戦略とは自分の会社の持てる強さが競争相手に対して相対的に最も優位になるような形で、顧客の求めているものを持続的に提供することだ。

要約

戦略的思考の基礎

Melpomenem/iStock/Thinkstock
企業経営における重心の変化 ~2014年インタビュー~

ここ30年、企業経営の「ヒト・カネ・モノ」の重要性が変化し、現在は「ヒト」に遥かに重きがおかれるようになっている。特に過去と比較して「カネ」は世界に溢れており、一度成功した経営者が新しいことをする場合には、お金はいくらでも集めることが可能だ。ジャック・ドーシーやイーロン・マスクが次に何かするなら、投資家達が殺到するのである。

また、「ヒト・カネ・モノ」の他に、「2S」、すなわち「スピード」と「スケール」が重要となっている。「スピード」とはつまり、競争相手よりも先んじて行うことにより差別化しようという考えだ。

また、「スケール」に関しても、グローバルにおいて圧倒的な「スケール」の違いが差別化ポイントになり得る。台湾の鴻海精密工業の従業員数は120万人にも及ぶ。同様に台湾のTSMCという半導体のファウンドリも、二番手企業に比べると十倍以上大きい「スケール」で製造する力を有している。

時代が変わり、経営の要素自体は変わらなくても、要素間の相対的な重要性が大きく変わっているという点に着目するべきなのだ。

競合他社との相対的な地位強化のための4つの道

現実のビジネスの世界においては、「完璧な戦略」が要求されるのではなく、競合との間の相対的な戦果が求められる。つまり、優れた企業戦略とは、受入可能なコストで競争相手に何歩も先んずることができる戦略をいうのである。戦略家として進むべき、競合他社との相対的な地位強化の道は4つある。

(1)KFSに基づく企業戦略

関連産業ないし企業の「成功のカギ」(KFS)を見定め、他社に対して最も効果的に戦略的優位に立てる特定の分野へ経営資源を集中的に注ぎ込む。

(2)相対的な優位性に基づく企業戦略

目標の競合相手と直接に競合していない製品の技術、販売網、収益性などを材料に工夫するか、自社と相手の間の資産構成の相違点を見出し活用する。

(3)攻撃的なイニシャティブに基づく企業戦略

ゲームのルールを変え、現状を打破し、それによってまったく新しく、また強力な優位を勝ち取るべく、挑戦する。

(4)戦略的自由度(SDF)に基づいた企業戦略

競合他社がまだ手を付けていない特定領域に押し出して、市場の利益を享受するものだ。これには新市場を開く、新製品を開発する、などが該当する。

成功のカギ要因(KFS)への絞り込み
dr911/iStock/Thinkstock

KFSを見定めることは、いつも容易にできるとは限らない。しかしその発見には基本的に2つの方法がある。

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要約公開日 2014.08.08
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