BRAIN DRIVEN ブレインドリブン

パフォーマンスが高まる脳の状態とは
未読
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パフォーマンスが高まる脳の状態とは
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出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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出版日
2020年09月25日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

自動車のしくみや特性を知らなければ上手く運転することは難しいし、身体のしくみを知らなければ健康を維持することはできない。だからモチベーションとクリエイティビティにあふれ、ストレスの少ない毎日を送ることができるように脳をよりよく使いたいなら、脳のしくみや働きを理解した方がいいはずだ。

私たちが歴史的に行動の指針としてきたのは、「汝自身を知れ」「よく学び、よく遊べ」といった格言や、「虫の知らせは当たる」「ルーティンで心を落ち着ける」といった経験則である。こうした教えは、ともすると科学的・合理的でないように見えるかもしれない。だが近年、神経科学の飛躍的な発達によって、これらの教訓の妥当性が、脳の作用という観点からも裏付けられ始めている。また興味深いことに、神経科学は「ストレスやモチベーションの源泉は人によって異なる」といった、人々に多様性が生じる理由も明らかにしつつある。

いま、AI(人工知能)の進歩によって、人の仕事がAIに置き換えられてしまうのではないかという議論が盛んだが、人間にしかできないこと、人間のほうが得意なことについても、脳とコンピュータの違いから導けるだろう。命令をかならず実行し、記憶を蓄積し続けるコンピュータに対して、挑戦を繰り返して能力を向上させ、忘却や曖昧さから新しい価値をつくり出す人間。神経科学がより発達すれば、AIと人間が相互に補完しあって、よりよい世の中をつくっていけるのではないだろうか。そんな希望を抱かせてくれる一冊である。

ライター画像
ヨコヤマノボル

著者

青砥瑞人 (あおと みずと)
DAncing Einstein Founder & CEO
日本の高校を中退。その後、米国大学UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)の神経科学学部を飛び級卒業。
脳の知見を、医学だけでなく、そして研究室だけに閉じず、現場に寄り添い、人の成長やWell-beingに応用する応用神経科学の日本パイオニア。
また、AI技術も駆使し、NeuroEdTech®/NeuroHRTech®という新分野も開拓。同分野にて、いくつもの特許を保有する「ニューロベース発明家」の顔ももつ。
人の成長とWell-beingに新しい世界を創造すべく、2014年に株式会社DAncing Einsteinを創設。
対象は、未就学児童から大手役員まで多様。空間、アート、健康、スポーツ、文化づくりと、神経科学の知見を応用し、垣根を超えた活動を展開している。

本書の要点

  • 要点
    1
    近年、脳を含む「神経系」の研究がめざましく発展している。本書の役割は、神経科学による新たな発見を、哲学や心理学が見出してきた叡智と照らし合わせることである。
  • 要点
    2
    世界中の企業や教育の現場で、神経科学の応用が始まりつつある。本書ではビジネスパーソンからの要望が多い「モチベーション」「ストレス」「クリエイティビティ」という3テーマを考察している。
  • 要点
    3
    神経科学によって「脳内で何が起こっているのか」「なぜそうなるのか」を解き明かすことは、新しい視点での人間理解、新しい考え方に基づいた自己成長に役立つだろう。

要約

【必読ポイント!】 モチベーション

そもそも、モチベーションとは何か?
Orla/gettyimages

モチベーションを辞書で引くと、「動機付け」と説明されている。モチベーションは行動の原因であり、その結果として行動が誘引されるということだ。「1万円あげるからコーヒーを買ってきて」と言われれば、嬉々としてお使いに行くだろう。

だが行動という結果に至る過程には、脳の中で起きる「直接的な原因」と、それに作用する「間接的原因」の2種類があることに留意したい。前述の「1万円」は間接的原因であり、これを「モチベータ」と呼ぶ。一方で、ある特定の脳部位にモチベータが届けられたときに起こる神経細胞の反応や、それに伴って放出される化学物質は、総称して「モチベーション・メディエータ」と呼ばれる。モチベーションを感じている状態というのは、すなわちモチベーション・メディエータを感じ、認知している状態のことを指している。

だからこそ自分自身を客観視、俯瞰視した「メタ認知」が、決定的に重要になる。メタ認知ができていないと、そもそも自分のモチベーションが高いか低いかもわからないからだ。しかもモチベータやモチベーション・メディエータの状態は一人ひとり異なる。そのため、自分で自分の状態を認知しようとしなければ、モチベーションとうまく付き合っていくことは難しいのである。

モチベーションにはエネルギーが必要
TakakoWatanabe/gettyimages

ビジネスパーソンであれば、ほとんどの方が「マズローの欲求五段階説」をご存じだろう。ただし神経科学的にみると、マズローの欲求段階説の上下関係は、必ずしも正しいとは言えない。

そこで「神経科学的欲求五段階説」を提唱する。これは下から(1)延髄:呼吸/体温/心拍/血圧、(2)大脳基底核・中脳:快・欲、(3)間脳:自律神経系、(4)大脳辺縁系:学習系、(5)大脳新皮質:高次機能系と区分される。

モチベーションという観点から神経科学的欲求五段階説を見てみると、上位の欲求ほどエネルギーを要することがわかる。なぜなら下位の欲求と違って、もとから強い神経回路を持ち合わせておらず、無意識的に選択されにくいからだ。

モチベーションには、トップダウン型とボトムアップ型の2種類がある。「あれを考えよう」「この勉強をしよう」はトップダウン型、「お腹が空いた」「眠い」はボトムアップ型のモチベーションだといえる。一般的には、ボトムアップ型のモチベーションの方が強い。だからうまくボトムアップ型のモチベーションを抑制したり、トップダウン型のモチベーションに転用したりすることが大切になる。

ボトムアップ型のモチベーションを、トップダウン型のモチベーションに転用する方法のひとつが、自分なりの「やる気スイッチ」をつくることである。まず本気で心を動かされる言葉や音楽、映画のシーンなどを見つけ、それを思い浮かべるとよい。そしてモチベーションが高まったら、その効果を自分のやりたい行動にシフトさせるのだ。

このとき、身体的動作を関連づけると、さらに効果を高めることができる。たとえば野球のイチロー選手やラグビーの五郎丸選手のように、独特な身体の動きとモチベーションを高める言葉を関連付け、繰り返し学習させると、それがあなたの「やる気スイッチ」になる。

モチベーションをマネジメントする

お金は脳にとって特異な刺激物だ。

ポジティブなエピソードを伴う出来事は、脳に「価値記憶」として保存される。しかし大人になると、価値記憶を伴う快の体験はお金で買えてしまう。するとあらゆる価値記憶がお金と結びつき、脳の中でお金が他に例を見ない存在となってしまう。

「これをやると、これくらいの金額がもらえるかもしれない」という期待が良い方向に裏切られるとモチベータとなるが、悪い方向に裏切られるとネガティブな情動反応を引き起こす。継続的にモチベーションを高めるには、お金だけがモチベーションにならないように、仕事や学習といった取り組みを設計する必要がある。

大事なのは、

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要約公開日 2021.02.03
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