教養としてのお金とアート
誰でもわかる「新たな価値のつくり方」

未 読
教養としてのお金とアート
ジャンル
著者
山本豊津 田中靖浩
出版社
定価
1,870円(税込)
出版日
2020年09月02日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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教養としてのお金とアート
誰でもわかる「新たな価値のつくり方」
著者
山本豊津 田中靖浩
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定価
1,870円(税込)
出版日
2020年09月02日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
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レビュー

「お金とアート」と聞くと、水と油のような関係を思い浮かべはしないだろうか。美を探求する芸術家がお金について考えることは「汚い」という感覚を抱く人もいるかもしれない。しかし、本書の著者らは、ビジネスにとってもアートにとっても、社会的な価値を確立するためには「お金を稼ぐ」という発想が欠かせないのだと指摘する。

本書は公認会計士の田中靖浩氏と東京画廊オーナーの山本豊津氏の対談である。会計とアートの世界は遠く離れているように思える。しかし、両氏の対談からは、お金とアートは切り離して考えることができないこと、そして会計の世界とアートの世界には驚くほどの共通点があることが浮き彫りになってくる。たとえば、オランダでの簿記の普及は、結果的に市民ブルジョアによる絵画の購入を引き起こしている。もしも市民ブルジョアが生まれなければ、彼らが絵画に興味を示さなければ、フェルメールは画家にならなかったかもしれないと考えられるのだ。また、株式市場の仕組みと、アートが売買されるプライマリー、セカンダリーのマーケットにも類似点が見られる。

ビジネスでもアートでも、作り手がいくらものづくりに情熱を注いで労力をかけたところで、第三者がその価値を認めなければ価格がつかず、社会と接点を持つことはない。普段はアートに縁遠いという方であっても、本書で紹介されているような「お金」という切り口からアートを見れば、その見方が変わるかもしれない。古今東西のトリビアが満載の本書から、美術を見る目を養ってみてはいかがだろうか。

しいたに

著者

山本豊津(やまもとほず)
東京画廊代表取締役社長。1948年東京都生まれ。1971年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。元大蔵大臣村山達雄秘書。2014年より4年連続でアート・バーゼル(香港)、2015年にアート・バーゼル(スイス)へ出展。アートフェア東京のアドバイザー、全銀座会の催事委員を務め、多くのプロジェクトを手がける。全国美術商連合会常務理事。日本現代美術商協会理事。著書に、『コレクションと資本主義』(共著、角川新書)『アートは資本主義の行方を予言する』(PHP新書)がある。2020年、東京画廊は創立70周年を迎えた。

田中靖浩(たなかやすひろ)
田中公認会計士事務所所長。1963年、三重県四日市市出身。早稲田大学商学部卒業後、外資系コンサルティング会社を経て現職。ビジネススクール、企業研修、講演などで「笑いが起こる会計講座」の講師として活躍する一方、落語家・講談師とのコラボイベントを手がけるなど、幅広くポップに活動中。主な著書に、『名画で学ぶ経済の世界史』(マガジンハウス)、『会計の世界史』(日本経済新聞出版社)など、翻訳絵本に『おかねをかせぐ!』『おかねをつかう!』(ともに岩崎書店)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    資本主義を支えるグローバルな文明ともいうべき会計システムは、イタリアにアラビア数字がもたらされたことをきっかけに発展し、オランダへと渡る。そのことがオランダ美術の発展に大きく貢献した。
  • 要点
    2
    流通市場で株式の価格がいくら上下しようとも、会社の資本金は影響を受けない。これと同じように、アートが後からいくら値上がりしても、芸術家に入ってくるお金は変わらないという構図がある。
  • 要点
    3
    アートは第三者がその価値を認め、価格がついて、はじめて社会的な意味をまとう。これはビジネスにも共通する重要な視点である。

要約

日本人が絵と会計を嫌いになる理由

「制作重視」の教育の弊害
ilverkblack/gettyimages

公認会計士の田中靖浩氏によれば、会計士や税理士は資格試験のための辛い勉強のせいで「勉強嫌い」になってしまう人が多いのだという。小学生のときの写生会で無理やり絵を書かされて絵が嫌いになってしまったという経験を持つ田中氏は、会計も美術も初期教育で失敗しているのではないかと指摘する。

東京画廊オーナーの山本豊津氏は、美術鑑賞は「見る」ことから「観る」ことに変化する形而上的な「かたちのない」事象であるのに対して、美術制作は形而下の「身体的な」作業であると指摘する。「観る」ことと「つくる」ことはまったく異なる行為であるが、日本の美術教育は制作することに重点が置かれ、観ることの大切さが疎かにされている。

この「制作重視」の問題は、会計業界にも見られる現象だと田中氏は言う。会計界でも「つくる」ことを勉強する簿記重視で、決算書を「観る」教育が疎かにされている。美術も会計も、「観る」教育を増やすべきなのかもしれない。

懐かしさと珍しさが「美しさ」をつくる

山本氏の考えるアートの源泉は、「懐かしさ」だ。あるものが文明の発展によって廃れると、それを懐かしいと思う気持ちが生まれる。部屋を片付けていたら小学生のときに遊んでいたブリキのおもちゃが出てきたとする。もう売られていないおもちゃに対する懐かしいという気持ちがアートになり、数百円だったおもちゃが数万円で売買されるようになるのである。そんな懐かしさを含む気持ちが山本氏の思う「文化」である。

モノが文化になるためには、一度捨てられないといけないとも言える。浮世絵は現在ではアートとして売買されているが、明治には山のように捨てられていた。そうして残ったものが時間を経てマーケットに出たからこそ、「懐かしさ」に「美しさ」が加わったのである。

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