シン・ニホン

AI×データ時代における日本の再生と人材育成
未読
シン・ニホン
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AI×データ時代における日本の再生と人材育成
未読
シン・ニホン
出版社
NewsPicksパブリッシング

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定価
2,640円(税込)
出版日
2020年02月20日
評点
総合
4.7
明瞭性
4.5
革新性
5.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

日本はもう終わった――失われた30年の間に幾度ともなく口にされてきたこの言葉は、多くの日本人の心に陰を落としている。無力感が蔓延するなかで、この『シン・ニホン』についたコピーは「この国は、もう一度立ち上がれる」だ。本書は「読者が選ぶビジネス書グランプリ2021」の総合グランプリおよび政治・経済部門賞を受賞した。多くの読者が、このような本を待ち望んでいたのだろう。

著者である安宅和人氏は、感情論ではなく、事実とデータに即した分析をもとに、世界とこの国の現状の苦しさを冷静に見つめる。そして、単なる悲観論を「逃げだ」と喝破し、未来を自ら目指し創るために行動を続けている。

たとえば、日本の国家予算を分析すると、金はあるのに未来への投資である教育や科学技術の予算が削られていることがわかる。日本の科学技術の予算は圧倒的に不足しており、主要国で唯一、博士号の取得にまとまった費用がかかる国だ。米国の主要大学と大きな差を生んでいる収入は投資からの運用益であることを踏まえ、著者は本書で国家レベルの基金システムの設立を提言した。理想を語っても現実は変わらないと思う人もいるかもしれない。しかし、本書の刊行後の2020年12月、10兆円規模を目指す大学ファンド創設が盛り込まれた緊急経済対策が閣議決定した。まさに、「未来を創る」を体現している。

著者の描くこの国の状況は厳しい。それでも、著者の眼差しは、日本への愛に溢れている。希望を灯す一冊を手に、あなたもいっしょに未来を創る一人になってほしい。

ライター画像
池田友美

著者

安宅和人(あたか かずと)
慶應義塾大学 環境情報学部教授
ヤフー株式会社 CSO(チーフストラテジーオフィサー)
データサイエンティスト協会理事・スキル定義委員長。東京大学大学院生物化学専攻にて修士課程修了後、マッキンゼー入社。4年半の勤務後、イェール大学脳神経科学プログラムに入学。2001年春、学位取得(Ph.D.)。ポスドクを経て2001年末マッキンゼー復帰に伴い帰国。マーケティング研究グループのアジア太平洋地域中心メンバーの一人として幅広い商品・事業開発、ブランド再生に関わる。2008年よりヤフー。2012年7月よりCSO(現兼務)。全社横断的な戦略課題の解決、事業開発に加え、途中データ及び研究開発部門も統括。2016年春より慶應義塾大学SFCにてデータドリブン時代の基礎教養について教える。2018年9月より現職。内閣府 総合科学技術イノベーション会議(CSTI)基本計画専門調査会 委員、官民研究開発投資拡大プログラム (PRISM) AI技術領域 運営委員、数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度検討会 副座長なども務める。著書に『イシューからはじめよ』(英治出版、2010)

本書の要点

  • 要点
    1
    本書は、著者が極めて広範なテーマで生み出してきた数十のバージョンの「シン・ニホン」をひとつなぎに俯瞰したものを描く試みである。
  • 要点
    2
    現在終わりつつあるデータ×AIの革新の「第一フェーズ」に乗り遅れた日本の勝ち筋は、「第二フェーズ」「第三フェーズ」にある。
  • 要点
    3
    未来を創るのは若者だ。時代に合わせて教育を刷新し、他人とは異なる軸で勝負する、「異人」をうまく育て上げることが重要だ。
  • 要点
    4
    未来を創るための仕掛けとして、著者は「風の谷を創る」という運動論を進めている。

要約

シン・ニホンの実現に向けて

自ら未来を創り、仕掛ける

2016年のTEDxTokyoでシン・ニホンという言葉を生み出して以来、著者は多様なテーマで、数十のバージョンの「シン・ニホン」を生み出してきた。大人のサバイバル方法から子どもの教育、AI時代の人材育成や高等教育のあり方まで、広範なテーマを扱い、オーディエンスもバラバラだ。本書は、それらをひとつなぎに俯瞰したものを描く試みである。

日本には長らく不安と停滞感が蔓延している。現実を直視しない楽観にも、単なる悲観論にも意味はない。本当に未来を変えるべきだと思うならば、現実に向かい合い、建設的な取り組みを仕掛なければならない。少しでもましになる未来を描き、次世代にバトンを渡そう。未来は目指し、自ら創るものだ。

データ×AI時代の変化の本質

人類史に残る対局
Zerbor/gettyimages

2016年3月、「魔王」の異名を持つ韓国の天才棋士、イ・セドルと、英国DeepMind社が開発した碁AIのAlphaGoの対局が行われた。チェスの対戦においては、1997年にAIが世界チャンピオンを打ち破った。しかし、チェスよりも盤面のパターンが極端に多い囲碁の世界では、計算機の性能が格段に進化し、iPhoneが誕生した2007年になっても、AIはアマチュア級位者に負けるほど弱かった。

この対局の数ヶ月前に、AlphaGoは欧州プロ棋士に勝利した。しかし、イ・セドルは、自分と同等のレベルに追いつくには時間が足りないはずだと考え、接戦になるとすら思っていなかった。結果は5試合中1勝4敗で、イ・セドルの敗北に終わった。さらに、翌年には、「大帝」と呼ばれる世界最強棋士、カ・ケツも3番勝負で3局全敗。人類は本気のマシンに二度と囲碁で勝つことができなくなったことが示された。

イ・セドルとの対局1ヶ月ほど前の発表によると、AlphaGoは16万局、約3000万の局面をわずか3週間で学習したうえで、自己対局や別のアルゴリズムとの組み合わせで新たに3000万局面を生み出し、その局面と勝敗結果を1週間で学習していた。人間では到底できないような訓練量を短期間で実現していたがゆえの勝利であった。

指数関数的な思考が不可欠に
miss_j/gettyimages

2007年にはアマチュアよりも弱かった囲碁AIは、わずか9年でトッププロ9段すら打ち負かすようになった。深層学習が動くようになってからはわずか4年のことだ。

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