本書の要点

  • 私たちの活動の根底には、「個体として生き残り、種が繫栄するために行動する」という生命原則がある。

  • 私たちは生命原則を理解したうえで、なお主観的な意志を持ってそれに抗うことができる。

  • 不確かで曖昧な未来に対しても、「絶対に後悔しない」と決めれば、自分の決断に迷いはなくなる。

  • 外界の環境変化が予測できない以上、あらゆる可能性を試すしかない。生命は失敗許容主義である。

  • ひとつのテクノロジーに着目するだけでなく、「システムとしてどうあるべきか」という全体的な視点を忘れてはいけない。

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【必読ポイント!】 生命原則を知る

人間のすべての活動は生命原則に基づいている

私たちの日々の活動の根底には、生命に共通した原理原則が存在している。それは「個体として生き残り、種が繁栄するために行動する」というものである。

この生命科学の視点に立脚すれば、個人の人間関係や組織の問題なども含め、世間の出来事のほぼすべてに説明がつく。逆に言えば、生命の仕組みを知ったうえでそれに抗うことで、私たちはより良い未来に進めるはずだ。

本書は「生命原則を客観的に理解したうえで主観を活かす思考法」を提示する。視野を自在に切り替えて主観的な意志で行動すれば、自然の摂理に従いながらも希望に満ちた自由な生き方ができるようになるだろう。

生命の非効率は生存戦略の一環である

rancescoch/gettyimages

生命原則を理解するうえでまず押さえておくべきなのは、「生命には一見非効率に思える仕組みがある」という点だ。

たとえば個体の「死」は苦労してつくりだした命をわざわざ壊す現象だし、「感情」はストレスやトラブルのもとになる。しかしマクロの視点から見れば、いずれも生命原則に基づいた活動の一部であることがわかる。

非合理的に思える「死」が存在するのは、目まぐるしく変化する環境の中で、生命単体が連続性を持ちつつ適応するのは難しいからである。来るべき環境変化に備えるため、新しい生命は生まれつづけるのだ。

同様に、感情も生命原則に基づいた事象である。怒りの感情は自分の敵に対応するためであり、孤独感は一人で生きることを避けるために存在する。生命にとっては生き残ることが最優先ミッションであり、こうした感情は生存戦略上の必要性があるからこそ備わっている。負の感情も、遺伝子に搭載された機能が正常に働いている結果にすぎない。

視野は広くも狭くも自由に設定できることが重要

個人の死から生命の生存戦略へ、個人の感情から遺伝子の機能へと視野を広げると、世界の見え方が変わる。視野――自分が見ている、あるいは考えている世界の範囲――は広い方がいいと思われがちだが、「視野を広くも狭くも自由に設定できる能力」のほうが大切だ。

視野には大別すると2種類、短期または長期スパンで捉える「時間的視野」と、現在という時間の中で物事を捉える「空間的視野」がある。特に空間的視野をうまく設定しないと、物事を見誤ることになる。

このことを「鶏が先か、卵が先か」という問題から考えてみよう。鶏と卵という二者間の狭い視野で考えると、すっきりした答えが出せず、思考停止に陥ってしまう。この問題を解決するには、進化という生物学の知識まで視野を広げなければならない。すると「卵から生まれる鳥類から、長い時間をかけてニワトリの卵が生まれた。ゆえに卵が先である」という答えが導き出せる。

ビジネスでも狭い視野で物事を考えていると、視野の外側にある本質を見逃すことになりかねない。どの視野で物事を見るべきかを意識する必要がある。

多様性は進化の一形態である

ktsimage/gettyimages

人間の体で細胞が分裂するとき、まれにDNAのコピーミスが起こる。これががんの原因となるのだが、なぜこのようなミスを完全に除外する仕組みが備わってこなかったのだろうか。

その理由は

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要約公開日 2021.04.05
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