対話型OJTの表紙

対話型OJT

“主体的に動ける部下”を育てる知識とスキル


本書の要点

  • 自律型人材を組織につなぎとめておくためには、「成長環境」を提供できなければならない。そのためのひとつの手法が「対話型OJT」だ。

  • 対話型OJTの実践においては、「あたたかさ」と「したたかさ」が必要だ。

  • 部下・後輩に教えるべき仕事は、「助けがあればできること」だ。ここでは、「スキャフォルディング」という考え方がヒントとなる。一から十まで教えるのではなく、その基本的な方向性や要点を示すとともに、適切なポイントでフィードバックの機会を設け、部下・後輩の内省を促していく。

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「自律型人材」とは

自律型人材が求められる3つの理由

recep-bg/gettyimages

本書では、「自律型人材」を「自ら考え行動できる人材」と定義する。このようなタイプの人材は今、次の3つの理由から、あらためて求められるようになっている。1つ目は「時代環境」である。変化の激しい現代においては、指示待ちの「問題解決型人材」ではなく、自ら問いを立て、解決すべき問題を見つけていく「問題発見型人材」が求められる。寿命が延び、「教育・仕事・引退」というモデルがなくなる時代でもあるため、自らステージをつくる力が必要だ。2つ目は「業務内容」である。定型的な業務が機械化され、多くの人が非定型の分析・対話型業務に携わる中で、自律型人材が求められることは言うまでもない。3つ目は「リモートワーク」である。監督者の目が届きにくい環境においては、自ら考え行動する力をつけなければならない。

自律型人材の3つの行動

自律型人材は、3つの行動によって周囲からの信頼を得ていく。まず「やることを決める」。指示されなくても、自分がやることを決められる。次に「決めたことをやる」。そして、決めたことができなかったとしても、言い訳をせず改善につなげる。最後に「チームとして働く」。周囲を気遣い、報告・連絡・相談を欠かさず、協力して仕事を行う。自律型人材の最たるものとして、ミニ起業家である「一人社長」や、副業・兼業を行う人が挙げられる。自ら考え、動きたいと希望しているこうした人材を育てることも、これからの組織に求められることだ。

自律型人材を育てるための3つの軸

alvarez/gettyimages

ミニ起業家や複業・兼業が増えるのは、日本社会から見ればいいことであるはずだ。だが一方で、自分の部下・後輩が副業・兼業をしていたり、起業を希望していたりする場合、「正直なところやりづらい」と感じる人も多いかもしれない。自律型人材や副業・兼業者、起業希望者が増えたり、リモートでも仕事をしたりする状態は、組織において、外に向かう力(遠心力)が働いている状態だ。社員をつなぎとめておきたくても、物理的な場所や気持ちが離れていってしまいかねない。実際に、組織を離れ、転職や独立をするケースもあるだろう。このような状況において、どうすれば「求心力」を保ち、人材を組織につなぎとめておけるか。重視すべきは「成長環境」だ。この組織に所属していれば成長できる、この仲間と一緒にいれば成長できると感じさせることが、組織の求心力となる。そのような「成長環境」を提供するためのひとつの手法が「対話型OJT」をはじめとした育成の方法論だ。人は「ヒト・コト・トキ」を通じて育っていく。背伸びが必要な「ストレッチ経験」(コト)が多く、職場メンバーの「関わり」(ヒト)の量が多いほど、その職場は成長環境であるといえる。この2軸に「時間」(トキ)の概念を追加したのが、自律型人材を育てるための3つの軸である。

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部下・後輩に「経験」させる

どんな経験を積むのか一緒に考える

かつて人材育成においては「経験・他者・研修」それぞれから得る学びの割合は「70:20:10」だと言われていた。しかし近年、大規模かつ科学的な調査により「55:25:20」という数字が示されるようになった。数字は変わっても、やはり経験が一番重要であることに変わりはないのだ。部下・後輩にどのような経験をしてもらえばいいかを考える際にヒントとなるのは、

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要約公開日 2021.04.23
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