唯識の思想

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唯識の思想
出版社
定価
1,221円(税込)
出版日
2016年03月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

葬式や法事、初詣などでお寺に行く機会は多い。お寺ではなんとなくお経を聞き、仏像に手を合わせて願掛けをするが、私たちの多くは仏教の教え、考え方をほとんど知らないままなのではないだろうか。

本書では、大乗仏教の一派である唯識派の世界観、生き方に関する教えが、実践的に解説されている。本書を読めば、たとえば般若心経に出てくる「色即是空」という言葉や、菩薩、如来の意味など、これまで日常的に接しつつもあまり深く考える機会がなかった仏教の教えが、どう自分の生活と結びついているかが理解できるだろう。

「唯識」とは、世界の存在は全て心によって生じるとする考え方である。近代西洋の哲学においても観念論の考え方として同様の思想があったが、インドでは古代から論じられ続けてきたのだ。西洋哲学の観念論は世界の姿を正確に理解するための方法論であるのに対して、唯識思想は人間が生きる上で抱える、「生老病死」といった「苦」から解放されるための実践的な思想であることも特徴だ。

先行きの不透明な時勢の中、不安を抱えながら孤独に日常生活を送っている人も少なくないだろう。抽象的な理論を理解するだけでなく、生き方にまで実践的に反映させる。現代を生きる私たちの人生も、苦から生じる心の重荷から解き放たれ、より軽やかなものとなるに違いない。

ライター画像
大賀祐樹

著者

横山紘一(よこやま こういつ)
1940年生まれ。東京大学農学部水産学科、同文学部印度哲学科卒業、東京大学大学院印度哲学博士課程修了。立教大学名誉教授、鹿島神流師範、「唯識塾」塾長。専攻は唯識思想。著書に『唯識思想入門』『唯識の哲学』『唯識とは何か』『十牛図の世界』『「唯識」という生き方』『唯識 仏教辞典』『阿頼耶識の発見』『唯識の真理観』ほか多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    私たちは「自分」や「もの」が存在していると考えているが、あるのはただ心の働きだけで、「自分」や「もの」は存在しないと考えるのが唯識思想。
  • 要点
    2
    「自分」や「もの」への執着を捨てることで、他者との対立やお金、地位への執着から生じる苦から解放される。
  • 要点
    3
    物事の全ては心の深層にある阿頼耶識から生じる。善業によって阿頼耶識は清められ、悪業によって濁る。阿頼耶識が濁ればその人の世界も汚れて暗くなる。善い行いをすることは自身の世界を清め、自分のためにもなる。

要約

唯識思想の世界

心だけしか存在しない
francescoch/gettyimages

仏教を興した釈尊の根本的教理とは、「自分」は存在しないという教え、すなわち「無我」である。

「手を見てください。それはだれの手ですか」と問いかけてみると、聞かれた人は必ず「自分の手です」と答える。「いまあなたが言った自分という言葉に対応するものがあるでしょうか」と再び問いかけると、相手は困った顔をするだけで、答えが返ってくることはない。なぜなら、「自分」という言葉が指し示すものを発見できないからだ。

あるのは「自分」という言葉だけなのに、あたかも自分というものが存在するかの如くに思い、すべての行動の主体、主人公としてとらえるのは自分本位なことである。静かに心の中を観察すると、存在するのは唯だ(ただ)手、足、身体、あるいは心の働きだけだ。これを自分のものと誤認しているという事実を認識することから、仏教理解が始まるといっても過言ではない。

身心を構成する諸要素があるだけで、それらから構成される我(自分)が存在しないゆえに無我なのだ。そして、この「唯だ」あるのはなにかという探究をとおして、すべての存在の構成要素が心の中に認識されて初めて成立するとしたのが、「唯識」という思想である。唯識とは、「唯だ識、すなわち心だけしか存在しない。自分の周りに展開するさまざまな現象は、すべて阿頼耶識(あらやしき)から生じたもの、変化したものである」と主張する思想だ。すべては心の中にあり、心の外にはものはない。

一人一宇宙

私たちは1つの共通の宇宙に住んでいると思っている。しかしそれは、人間同士が言葉で語り合うことで、「ある」と認め合った抽象的な存在に過ぎない。

朝、目を覚ますと、その人の宇宙がいわばビッグバンを起こして再び生じる。個人が毎朝経験するこのビッグバンによって生じた宇宙には、決して他人が入ってくることはできない。この「一人一宇宙」を〈人人(にんにん)唯識〉という。3人いれば3つの世界がある。たとえば「そこに1本の木がある」と3人で言い合うとき、3人の外に実在する1本の木があるのではなく、一人ひとりの心の中にある木の影像(観念)があるだけである。3人が言葉をとおして、あたかも1本の木があるが如くに認め合っているにすぎないのだ。

一人一宇宙だから、その個人の気分がすぐれなければ暗い世界となり、うれしいことがあれば明るい世界に変わる。私たちは、自分の心の中にある一宇宙に閉じ込められていて、そこから抜け出すことはできない。

感覚、思い、言葉
Victor_Tongdee/gettyimages

「感覚」が感じとったものを「思い」で色づけし、「言葉」として語ることで、心が織りなす世界をはっきり認識できる。たとえば、誰かに対して私たちは憎いという「思い」を生じさせ、「あの人は憎い人だ」と「言葉」で決めつける。その人そのものは本来はいわば無色の人なのに、キャンバスの絵が色付けされていくように、私の思いと言葉によって「憎い人」になるのだ。

世界はもともと無色だった。

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