デジタルエコノミーの罠
なぜ不平等が生まれ、メディアは衰亡するのか

未 読
デジタルエコノミーの罠
ジャンル
著者
マシュー・ハインドマン 山形浩生(訳)
出版社
定価
2,860円(税込)
出版日
2020年11月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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デジタルエコノミーの罠
なぜ不平等が生まれ、メディアは衰亡するのか
著者
マシュー・ハインドマン 山形浩生(訳)
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定価
2,860円(税込)
出版日
2020年11月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
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レビュー

インターネットが普及し始めて、30年近くが経過した。その過程で、インターネット技術だけでなく、社会のあり方も大きく変わった。黎明期には「インターネットは平等であり、国家から独立し、真の民主主義を実現する」と大きな期待が寄せられていた。だが、実際はどうか。アメリカのIT企業が幅を利かせた結果、世界の民主主義に悪影響が出始めている。加えて、特定の企業や国の活動が、イギリスのEU離脱を問うた国民投票やアメリカ大統領選挙の結果を左右したというのも有名な話だ。

インターネットの大企業は、世界中の人々の「関心」を集め、その結果莫大な企業利益を得ている。本書はそれがなぜそうなったのかを、膨大な実証データをもとにモデル化している。もちろん資本主義において、企業が成長するのは自然なことである。だが、ある一線を越えてしまい、経済が独占状態にあることはいいことなのだろうか。これに対する明確な答えは、まだほとんどの人が持ち合わせていない。このままだと格差は広がるばかりだ。

ここまで私たちを取り巻く環境が変わった今、必要なのは新たな社会通念である。とはいえ、それは一朝一夕で生まれるものではない。新しい社会通念を形成するためには、一人ひとりがその論点について考えなくてはならない。その第一歩として、まずは本書を通じ、インターネットの大企業が世界を支配する構造の堅牢さを知っていただければと願う。

ライター画像
小林悠樹

著者

マシュー・ハインドマン (Matthew Hindman)
ジョージ・ワシントン大学メディア公共問題学校准教授。プリンストン大学Ph.D. 政治的コミュニケーション、デジタル観衆、オンライン虚報などを中心に研究。最初の著書『デジタル民主主義の神話』(The Myth of Digital Democracy, Princeton University Press, 2009)でハーバード・ゴールドスミス・ブック賞およびコミュニケーション研究に対するドナルド・マッギャノン賞を受賞。本書もハーバード・ゴールドスミス・ブック賞を受賞している。

本書の要点

  • 要点
    1
    デジタル世界で生き残るためには「粘着性」が重要である。成長の初期段階におけるわずかな優位性が、のちに大きな差へとつながっていく。
  • 要点
    2
    巨大IT企業はいずれも粘着性を高めるべく、データサーバーや光ファイバーなど、大規模なインフラ投資を進めている。
  • 要点
    3
    インターネット上でも規模の経済がはたらき、富める者はさらに富んでいく。インターネットはけっして平等ではない。
  • 要点
    4
    巨大IT企業が市場を占有することは危険をはらんでおり、民主主義すらも脅かしかねない。この現状に危機感を抱くのであれば、まずは実態を知るべきである。

要約

【必読ポイント!】 粘着性が企業を大きくする

わずかな優位性が大きな差を生み出す
Khosrork/gettyimages

グーグルは2000年のはじめ、「検索結果をいくつ表示すべきか」という実験を行なった。研究者たちは利用者に対して、結果を10件、20件、30件と変えながら調査をした。その結果、検索結果を増やすとトラフィックが大きく減ることがわかった。その原因は、検索結果の表示にかかる「時間」だ。たった0.5秒でもロードに時間がかかるだけで、トラフィックに大きな影響を及ぼしたのである。

この実験には、多くの教訓が含まれている。それはデジタル世界で生き残るためには、「粘着性」が重要ということだ。粘着性とは、利用者を惹きつけ、何度でもくりかえし戻って来てもらう能力を指す。そしてこれは累積ではなく、累乗で加算されていく。成長の初期段階におけるわずかな優位性(たった0.5秒の読み込み時間のような)が、のちに大きな差へとつながっていく。

グーグルは粘着性を追求した結果、世界で最も価値のある企業のひとつへと成長した。今やグーグル、フェイスブック、マイクロソフト、ヤフー! が、ウェブ訪問の3分の1を占めている。さらに2016年時点では、グーグルとフェイスブックがデジタル広告シェアの7割以上を占有している。

インターネットも規模の経済である

アメリカ・オレゴン州の工業団地に2006年、グーグルが大規模なメガデータセンターをつくった。このコンピューター倉庫は他の工場と並んで鎮座しており、高電圧から何メガワットの電力が日々送り込まれている。こうしたメガサーバーをグーグルは世界で20カ所以上も保有しており、他のデジタル企業もこのようなサーバーファームを持っている。その投資額は、一国のGDPをも上回る規模だ。インターネットが「ポスト工業技術」と呼ばれて久しいが、見た目はまさに工場のそれだ。

データセンターでは、途方に暮れるような複雑なプログラムが機能している。これにより複数のサーバー間で、シームレスにデータを動かせるようになっている。また、サーバーなどのインフラが整備されれば、ソフトウェアの構造も巨大になり高速化させることもできる。これにより、何万台ものマシンがGmailやYouTubeといったさまざまなアプリケーションを同時に運用できるようになった。

さらに、世界中に自前の光ファイバーを張り巡らせ、データの送受信の速度も高速化した。インフラが巨大化すると、小規模なデータセンターと比べて運用にかかる電気料金も割安となる。このように従来の産業と同じく、インターネットにおいても規模の経済がはたらくのだ。

「速いほうが遅いよりよい」
Apatsara/gettyimages

グーグルのインフラ投資が、どうオンライン上での粘着性につながっていくのかを見てみよう。グーグルの優位性として、「計算力」と「ネットワーク規模」が挙げられる。たとえば、グーグルは2004年にGmailを立ち上げた。当時、他社のメールサービスが提供するデータ容量は4メガバイト程度だった。しかしGmailは、1アカウントに対して1ギガバイトの容量を与えた。250倍もの容量を提供できたのは、大規模なインフラだからこそできることだ。グーグルはかつてから、「速いほうが遅いよりよい」と謳っていた。動画の読み込みが遅ければ、ユーザーはほかのページへ移ってしまう。いくらすぐれた新機能を開発できても、それが検索を遅延させるものなら、それを捨ててしまうことすらあるという。

そのためグーグルの検索結果においても、各サイトの読み込み速度が検索順位を決定づけるひとつの指標となっている。「速度」は疑いなく、ユーザーがそのサイトを気に入るかの分水嶺となる。仮にグーグルが読み込みの遅いサイトを検索結果に出せば、閲覧者はその間に別のことをし始めてしまうかもしれない。小規模サイトではただでさえ速度が遅くなりがちなのに、さらにそこにグーグルによるペナルティが科される。このように速度による順位付けという仕組みは、インフラの整った大規模サイトの優位性をさらに高めていくのだ。

あるグーグルのデザイナーが退職した理由

あるグーグルのデザイナーが、次のような理由で会社を退職した。

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