365日 #Tシャツ起業家

「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘
未読
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「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘
未読
365日 #Tシャツ起業家
出版社
出版日
2021年02月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「将来は起業して何か社会の役に立つビジネスをしたい。」「自分も何かひとつのことに心を燃やせたら素敵だな。」

……とは言うものの、そもそも何をすればいいのかわからない。うまく行かなかったらと思うと怖気付いてしまう。そんなモヤモヤを抱えたビジネスパーソンは少なくないかもしれない。

本書を読めば、起業経験ゼロの著者がTシャツ起業家として事業を大きく成長させるまでの軌跡を辿ることができる。起業相談や将来への不安といった相談に対し、著者が一問一答形式で回答している。リアルな疑問に著者が率直に答えてくれている。

著者の実家は農家で、子どもの頃はよく手伝いもしていた。しかし娘の将来を心配した母親に将来安泰な道を進むようにと育てられた。農業とはまったく異なる道を歩み始めていた著者が、何をきっかけに農業の世界に舞い戻り、新規ビジネスを立ち上げ成功するに至ったのか。堅実な未来へと突き進んでいた一人のビジネスパーソンが、己の使命を見つけて果敢に挑んでいく──。

いまや産直ECサイトとして大きく成長した「食べチョク」を見ると、自分には手の届かない別世界の話だと感じるかもしれない。だが本書を通じて等身大の著者を知ると、起業は何も雲の上の出来事ではないと知ることができる。それ相応の覚悟は必要だが、やりたいことがあるなら絶対にやったほうがいい。将来のことで悩んでいる人や起業にいま一歩踏み切れないでいる人にとって、大きな力となる一冊だ。

ライター画像
金井美穂

著者

秋元里奈(あきもと りな)
1991年1月21日、神奈川県相模原市出身。住宅街にポツンとある野菜農家で生まれ育つ。相模原高校、慶應義塾大学理工学部を経て、2013年に株式会社ディー・エヌ・エーに入社するが、荒れ果てた実家の農地を目にして起業を決意。16年には農業支援ベンチャー・ビビッドガーデンを創業し、翌年にはオンライン直売所「食べチョク」を開始。その後20年に6億円の資金調達を実施し、同様のサービスの中で認知度が№1に。『Forbes』の「アジアを代表する30歳未満の30人」に選出。TBSの報道番組『Nスタ』にレギュラー出演中。

本書の要点

  • 要点
    1
    「農業は儲からないのよ」と母に言われて育った著者は、DeNAに入社。そこで自ら立てた企画を実行する楽しさを知った。
  • 要点
    2
    自慢だった実家の農地が荒れ果てているのを目の当たりにしたショック。そして「農業は儲からないから子どもたちには継がせたくない」という農家の人の心の内を知り、著者のなかに農業にかける熱い思いが芽生えた。
  • 要点
    3
    やりたいことは見つかってもなかなか起業には踏み切れない。そんなとき、知人の言葉が背中を押した。「いまやらなかったら、きっと一生やらないね」。ここからTシャツ起業家の物語が始まる。

要約

【必読ポイント!】 起業までのストーリー

Tシャツ起業家、秋元里奈
MEDITERRANEAN/gettyimages

朝起きて、紺色Tシャツから新しい紺色Tシャツに着替える。胸元には「食べチョク」の文字。本書はTシャツ起業家であり、「ビビッドガーデン」の代表取締役社長である秋元里奈の物語である。

会社の主力サービスである「食べチョク」は、いわばオンラインの直売所である。全国各地の生産者からこだわりの野菜やお肉、お魚などを直接購入することができる。

2017年8月のサービス開始当初、月間売上は2万円だった。そもそも一次産業の領域は不採算を理由に、多くのIT企業が進出しては撤退を繰り返してきた歴史がある。生産者側を説得するところから難航した。

それでも自分の足で全国の生産者の元を駆け回り、事業にかける自分の思いを伝えて、2020年12月現在では3300軒を超える生産者が登録するサービスに成長した。同年8月には投資家から総額8・4億円の資金調達にも成功し、産直ECサイトとしては「お客様認知度」「お客様利用率」などで堂々の№1を獲得した。

「農業は儲からないのよ」。そう母に言われて育った著者。いったいどのような軌跡を辿って、全国の生産者とお客さんをつなげる事業を成功させたのだろうか。

農家は継がなくていい

著者は農家の娘として生まれ、子どもの頃から「実家が農家」が自慢だった。しかし大学への進学時に農業ではなく金融工学を志望したのは、農家を継ぐ気がなかったからだ。早くに夫を亡くしてひとり親として育ててくれた母には、常日頃から「農家は継がなくていい」と言われていた。子どもには安定した未来をと願う親心である。

そんな著者にターニングポイントが訪れたのは、大学3年生のタイミング。学園祭の実行委員会のリーダーを任されたときだ。同期メンバーが活動に来なくなり、消去法で任されたリーダーの仕事だったが、もともとの負けず嫌いな性格からお客さんに喜んでもらおうと徹夜するほど作業にのめり込んだ。

自ら企画を立てて実行していくことはなんと面白いのだろうか。それまでは将来安泰な金融への道を進もうと考えていたが、学園祭での経験を通じて次第に自分のアイデアを形にする仕事に携わりたいと思うようになっていく。

どうして安定した道を捨てるの?
conceptualmotion/gettyimages

就職先は金融業界ではなく、DeNAに決めた。私服で面接に臨めるのが自分の人格を尊重されているようで、“わたしらしく”働けるかもしれないと思ったからだ。安定志向の母からは反対された。しかし、他の企業なら任せてもらうまで5年、10年かかることでも、DeNAなら1年目からチャンスがある。

また創業者の南場智子さんが会社説明会で語った言葉も決め手となった。南場さんは、本当の意味でスキルを身につけるためには、若いうちに厳しい環境に身を置き、実際に経験することが大事で、それは5年後に大きな差となって表れるのだと語ってくれた。

そうして社員に「成功確率50%の仕事を委ねる」と言われているDeNAでの日々が始まった。志望とは異なる部署に配属となったが、まずは自分を認めてもらい、希望を通してもらうためにがむしゃらに働いた。積極的に他部署の人たちとも交流し、新しいアイデアを提案し続けて異動も叶い、4つの事業を経験することができた。

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要約公開日 2021.05.11
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