オンライン・ファースト

コロナ禍で進展した情報社会を元に戻さないために
未読
オンライン・ファースト
オンライン・ファースト
コロナ禍で進展した情報社会を元に戻さないために
未読
オンライン・ファースト
出版社
東京大学出版会

出版社ページへ

出版日
2020年12月18日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
要約全文を読むには会員登録ログインが必要です
ログイン
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

コロナ禍で生活は大きく変化した。自由に移動できず、人とのつながりが制限されるなど、Withコロナの時代は快適ではない。しかし、社会のオンライン化が急速に進んだことで、非効率な業務フローの見直しや遠隔でのコミュニケーションの可能性に注目が集まった。

リモートワークへシフトする人が増えたことで、オンラインで行われる会議も急増した。オンライン会議では相手の視線やちょっとした仕草から読み取れるコミュニケーションのヒントが少なく、相手の存在を近くに感じることができないため、やりにくさもある。一方で、会議のための移動時間がないことから、効率的に商談を行える。さらに、画面上で資料の共有が手軽にできるなど、コミュニケーションがスムーズになるシーンもある。講義をオンライン化したある大学では、チャット機能を使ったことで学生からの質問が増え、教授と学生のコミュニケーションのハードルが低くなったことがわかったという。

オンライン化によるメリットを感じる一方で、電子データで送られた書類を印刷し、押印するといった非効率的な手続きを見直せていない企業も多いはずだ。サイバー空間を単なる情報伝達の手段としてのみ利用することは、真のオンライン化とはいえない。

情報社会への道は開かれている。よりよい社会へシフトするためには、社会のオンライン化によって生み出される新しい価値に気づき、その恩恵を享受する必要がある。本書は情報社会への大きな一歩を踏み出すための重要な指南書となるはずだ。

ライター画像
光野美香

著者

本書の要点

  • 要点
    1
    これからの社会の在り方として、時空間とサイバー空間が融合した「超スマート社会」が挙げられる。
  • 要点
    2
    人間同士の物理的な接触を避けるコロナ禍は、現実と同等以上のインタラクションが体験できるVRや空中ハプティクスといった技術の発展につながった。
  • 要点
    3
    身体的・精神的にハンデを負った人々の社会活動を支援できるため、人工知能やロボットの技術の発展や活用は、バリアフリー社会につながる。
  • 要点
    4
    遠隔コミュニケーションが引き起こす孤独感や不安感といった課題を解決するカギは「アウェアネス」という考え方だ。

要約

コロナが社会のスマート化を加速させた

超スマート社会への道
Boris Brown/gettyimages

他人との距離を保つ必要があるコロナ禍において、社会活動の継続を可能としたのが情報通信技術だ。東日本大震災など、今までも多くの天災に対して重要な働きをしてきたが、今回の感染症対策おいて、特に大きな役割を果たした。

これからの情報社会の在り方として、「超スマート社会」(Society5.0)が挙げられる。時空間とサイバー空間が高度に融合した社会を指す。遠隔医療、介護ロボット、自動運転、安定したエネルギー供給と温暖化防止、防災システム、スマート工場、持続可能な産業社会、スムーズな行政サービスなどが具体的な応用例だ。単純なサービス提供にとどまらず、曖昧で抽象的な問い合わせに対して、決められた時間内に最良の回答を出すことがシステム側に求められる。

情報社会では全てのデータを等しく「数」(2進数)として扱うため、一つの情報ネットワークで多様な情報をやりとりすることができる。それは領域の越境を促し、行政、産業、教育、文化、娯楽の連携・一体化が進む。学問・文化では、理学、工学、農学、政治、経済、文学・文芸、哲学、エンタメなど、それぞれの分野を尊重しつつも越境の動きが広がっている。

このように、情報化は身近なところから人間社会の在り方を変革している。Amazonなどのネット通販や、YouTubeによる情報共有などにみられるように、世界のグローバル化を促すものでもあるのだ。

これからの情報教育

残念ながら、日本では旧来の業務をそのまま踏襲したオンライン化が主流だ。業務の効率化と高度化といった、本来のオンライン化の意味や目的を理解できていないためである。情報システムを導入する際は、非専門家であるユーザ側が情報システムに関するリテラシーを有していることが求められる。

情報教育は子どもだけでなく大人にも必要である。特に大人への教育はプライドの高さや忙しさなどが邪魔をするため、とても難しい。特別定額給付金をめぐる詐欺事件のように、情報教育を受けないと痛い目にあうという教訓が、大人に教育を促すきっかけとなりうる。

本書で紹介される楠正憲CIO補佐官の『情報処理』への寄稿記事によると、システム構築の前に様式が定まっていることから、電子申請であっても紙の申請書と同様の項目で、印刷すれば郵送申請と同様に処理できるよう設計されていた。そのため、手作業による照合をなくすことができず、「10万円がなかなかもらえない」という事態が引き起こされた。

ほかにも、親子で楽しめるプログラミング教室は大人に教育を促すきっかけとなるだろう。既に情報教育のコンテンツも方法論も十分にある。これからは情報教育に人々を向かわせることが必要となってくる。

情報化の社会によるポジティブな動き

触れずに触り、操作できる世界
mediaphotos/gettyimages

コロナ禍において、人間同士あるいは人間とモノとの物理的近接をできる限り避けるという考え方が定着した。それは、人々が現実とVR(Virtual Reality)の世界を行き来し、物理的な接触なしに触覚を再現できる、

もっと見る
この続きを見るには...
残り2778/4050文字
会員登録(7日間無料)

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2021.05.14
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
ジョブ型人事制度の教科書
ジョブ型人事制度の教科書
柴田彰加藤守和
未読
 オンライン研修実践ガイドブック
オンライン研修実践ガイドブック
土屋裕介
未読
 ZERO IMPACT ゼロ・インパクト
ZERO IMPACT ゼロ・インパクト
鉢嶺登
未読
News Diet
News Diet
ロルフ・ドベリ安原実津(訳)
未読
リフレクション REFLECTION
リフレクション REFLECTION
熊平美香
未読
勝てるデザイン
勝てるデザイン
前田高志
未読
フォン・ノイマンの哲学
フォン・ノイマンの哲学
高橋昌一郎
未読
365日 #Tシャツ起業家
365日 #Tシャツ起業家
秋元里奈
未読
法人導入をお考えのお客様