リーダーに求められるトランスフォーメーション
有事が平時の時代

2020年初めに起きた「コロナショック」により、すでに世界の姿は大きく変容している。今後も「有事が平時」の時代となる。そうした時代では、この「変容(トランスフォーメーション)」の考え方がますます重要な意味をもつ。不連続な変化が起きる社会では、過去にとらわれずに柔軟に変容する能力が、個人にとっても会社にとっても重要だ。そもそも現代の日本企業の形は、戦後復興のなかで形成されてきたものだ。現場主義を尊重し、絶えざる改善を繰り返しながら、高品質なモノづくりを強みとしてきた。大量生産の経済のもとでは、新卒採用・年功序列制をベースとした同質的かつ固定的な組織構造やメンバーシップ雇用などの日本企業の慣行はフィットしていた。だが、現在はどうだろうか。デジタル時代が到来し、ハードからソフトへとメインストリームが移行した。企業に求められる意思決定のスピードも、これまでとは比較にならないほど速くなっている。しかしながら日本企業は、金融危機や自然災害によるカタストロフィにおいても、「応急処置で止血をしておこう」というような近視眼的な選択をしてきた。そこには「今の危機は一時的な不景気のせい」という甘えがあった。
コーポレートトランスフォーメーション
昨今日本でもよく耳にするのが、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という言葉だ。業務の自動化や会議のIT化といった意味合いにとられることもあるが、DXの真のインパクトはそれにとどまらない。真に求められているDXは、「野球からサッカー」というまったく違う競技へ転向するほどの、産業構造やビジネスモデルの大変容だ。これまでの経営は、攻守が順番に入れ替わり、打順が決まっていて、一球ごとにサインを確認するような野球スタイルであった。いざサッカーへ種目を変えようとしても、組織には野球経験者しかいない。年功序列に手がつけられないので、サッカーができそうな社員をサッカー場に送り込むぐらいしか手だてがない。ゆえに、従来型の日本的経営モデルでは、真のDXは不可能といえる。だとすれば、生き残るためには、会社の形の根本を改革するコーポレートトランスフォーメーションが必要となる。ゲームチェンジに対応する方法はそれしかないのだ。
今はリーダーの時代

有事のときには、組織のリーダーにもトランスフォーメーションが求められる。大変革の時代は「リーダーの時代」とも言い換えられるだろう。これまで日本では、トップダウン型のリーダーは独裁者などと揶揄され、敬遠される傾向にあった。だが、トップの意思決定は、「独断」であって然るべきである。