レビュー
「新しい実在論」や「新実存主義」などを唱え、世界で注目されている若きドイツの哲学者マルクス・ガブリエル。理論を説くだけでなく、分野を超えて世界中のプロジェクトに参加し、倫理資本主義の浸透に奔走している。パンデミックによるロックダウンの最中行われたインタビューをもとに構成されたのが本書である。
本書のキーワードは、「つながり」だ。グローバル化が進むにつれて、世界はつながり続けてきた。一方で、米中の対立や、陰謀論の拡散など、思想における分断は著しい。そんな中で発生したパンデミックは、歴史的に見ても私たちに大きな発想の転換を迫っているように思える。世界が一斉にウイルスへの対策を余儀なくされたパンデミックの後、私たちは世界をどのように捉え、どう生きればいいのだろうか。本書は、コロナ禍における人とウイルスのつながりから、ソーシャルメディアとの付き合い方、最後には、個人の生の在り方まで、世界を新たな視点で問い直そうとする。
混迷しているように見える経済や国際情勢の中で、斬新でありながらシンプルな著者の視点は、すっと腑に落ちるものがある。今、世界で何が起こっているのか、なぜそうなっているのか、そしてこれからどう生きるかを考えようとする読者には、一読をお勧めしたい。
著者
マルクス・ガブリエル Markus Gabriel
1980年生まれ。史上最年少の29歳で、200年以上の伝統を誇るボン大学の正教授に就任。西洋哲学の伝統に根ざしつつ、「新しい実在論」を提唱して世界的に注目される。著書『なぜ世界は存在しないのか』 (講談社選書メチエ)は世界中でベストセラーとなった。さらに「新実存主義」、「新しい啓蒙」と次々に新たな概念を語る。NHKEテレ『欲望の時代の哲学』等にも出演。他の著書に『世界史の針が巻き戻るとき』 (PHP新書)、『「私」は脳ではない』 (講談社選書メチエ)など。
大野和基(おおの かずもと)
1955年、兵庫県生まれ。大阪府立北野高校、東京外国語大学英米学科卒業。79~97年渡米。コーネル大学で化学、ニューヨーク医科大学で基礎医学を学ぶ。その後、現地でジャーナリストとしての活動。97年に帰国後も取材のため、頻繁に渡航。世界的な識者への取材を精力的に行っている。著書に『代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳』 (集英社新書)、訳書に『世界史の針が巻き戻るとき』 (マルクス・ガブリエル著、PHP新書)、編書に『コロナ後の世界』 (文春新書)など多数。
髙田亜樹(たかだ あき)
東京都生まれ。国際基督教大学教養学部卒業後、同大学大学院行政学研究科博士前期課程修了。大学院在学中よりCNNの通訳をはじめ、多数の通訳・翻訳業務をこなす。オックスフォード大学大学院で政治学修士号を取得後、日本政府国連代表部専門調査員、国連開発計画コンサルタントなどを経て個人事業を経営。現在は日本国際基督教大学財団アソシエート・ディレクター。
訳書に『誰が文明を創ったか』 (ウィル・デューラント著、PHP研究所)など。
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本書の要点
要点1
倫理とは、文化によって異なることのない、普遍的な価値のことである。パンデミックによる世界的危機後は、倫理的に正しい行動と経済的収益を両立する新しい経済体制が必要とされる。
要点2
新自由主義経済論に基づいたグローバリゼーションは終焉を迎える...
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