本書の要点

  • われわれは、資本主義をあるべき姿、正しい役割に立ち返らせる必要がある。

  • 生きる意味を見つけようとするとき、誰もが持つべきなのは「正当な利己性」である。人は、本当の自分を探すとき、他者の存在を必要とし、必然的に社会との関わりを考えることになる。

  • 信頼を得るためには、信頼に足る存在であることを自ら示す必要があることを忘れてはいけない。

  • 人は、よりよい世界、より公正な世界を求め、偉大にも善良にもなれる。変わるなら、いまだ。

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資本主義のゆがみを見つめる

資本主義は道具にすぎない

Nuthawut Somsuk/gettyimages

大昔にアリストテレスは「われわれが探し求める善は富ではない。富に宿る目的は唯ひとつ、ほかの何かを得るための手段となることだ」と指摘した。つまり、お金は幸福における必要条件であっても、十分条件ではない。だから、すでにお金をたくさん持っているならば、それ以上増えてもあまり意味がないということになる。

だとしたら、なぜわれわれはこんなに働くのか。それは、資本主義の根本原理である「創造的破壊」が、社会にだけでなく、企業の内部にまで入り込んでいるせいではないか。

会社の中でも、もっとも適応したものだけが生き延び、残りが消滅するのは当然だと思うようになってはいないか。アダム・スミスは、労働の分業化と専門化という革命的な考え方を提唱すると同時に、「寛容さ、気高さ、優しさといった感情」を抱けなくなると警告していた。いまの社会は、そのような段階にまで来ているのかもしれない。

どんなシステムでも完璧ではないように、資本主義というシステムにも欠陥がある。だからこそ、われわれはこのシステムを客観的にとらえなければならない。資本主義はただの道具であって、崇拝の対象ではないのだ。

資本主義は「生きる理由」を導きだせない

効率化追求の結果として生み出されたのが、資本主義、競争、市場だ。そうしてできたものは人々の暮らしを便利でよりよいものにするが、効率を追求する「熱意」には危険が潜んでいる。効率を客観的にとらえなければ、効率化を追求するあまり、企業本来の目的を見失ってしまう。「効率的」であることは、「効果的」であることと同義ではない。

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要約公開日 2021.06.12
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