人事の組み立て
~脱日本型雇用のトリセツ~

未 読
人事の組み立て
ジャンル
著者
海老原嗣生
出版社
定価
1,870円(税込)
出版日
2021年04月05日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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人事の組み立て
~脱日本型雇用のトリセツ~
著者
海老原嗣生
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定価
1,870円(税込)
出版日
2021年04月05日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

本書は、昨今の「ジョブ型雇用」の議論に対して的確に警鐘を鳴らしている一冊だ。まず前提として、欧米と日本の人事制度は全く別物である。組織図の見え方は似ていても、職業観や人生観といったベースになる「思想」が違う。

欧米の企業では、大学を出た一般の勤労者は、同じような仕事を同じような処遇で生涯続けることが多い。昇進や昇給はほとんどないので、長時間労働のインセンティブは働かない。また「明確なジョブディスクリプション(JD)」が存在するという幻想もあるが、そもそもJDはポストにつくものであって、人につくものではない。しかもその定義は曖昧で、JDの時代は終わったといわれて久しい。

雇用ジャーナリズムの第一人者である著者の第1の提言は、ジョブ型雇用のような誤解と幻想に基づいた議論を止めることだ。次いで、欧米と日本の人事システムの仕組みを正しく理解することである。いずれの人事制度も、メリットとデメリットのトレードオフで成り立っている。簡単にいいとこ取りはできないのだ。

日本の人事制度は正社員一括採用で、基本的には年功に従って昇級・昇給していく右肩上がりの仕組みである。これは誰もが将来の夢を見られると同時に、誰もが階段を上らねばならない制度でもある。それが長時間労働をはじめとするさまざまな問題の元凶となっている。この階段から下りるキャリアコースをつくること――本書の提言はそこに行きつく。人事担当者はもちろん、働き方を模索するすべての方にお読みいただきたい。

ライター画像
しいたに

著者

海老原嗣生(えびはら つぐお)
雇用ジャーナリスト、ニッチモ代表取締役、厚生労働省労働政策審議会人材開発分科会委員、大正大学特命教授、中央大学大学院戦略経営研究科客員教授
1964年東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートキャリア)入社。新規事業の企画・推進、人事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。『エンゼルバンク-ドラゴン桜外伝-』(「モーニング」連載、テレビ朝日系でドラマ化)の主人公、海老沢康生のモデルでもある。人材・経営誌「HRmics」編集長、リクルートキャリア フェロー(特別研究員)。『AIで仕事がなくなる論のウソ』(イーストプレス)、『人事の成り立ち』(白桃書房)など著書多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    欧米と日本ではキャリア構造や雇用システムが異なる。真の「ジョブ型」とは「ポスト限定雇用」に他ならない。
  • 要点
    2
    日本の人事制度では、30代後半以降も昇進の可能性があるので、顧客と会社のために長時間働くという職務態度を変えられない。このことが、ワークライフバランスやミドル・シニアの雇用不安といった問題の元凶となっている。
  • 要点
    3
    今後は日本企業でも、同じ給与で同じ仕事を続ける「階段から下りる」コースを設計することが求められる。

要約

欧米企業のキャリア形成

すべてをポストにひもづける欧米企業
AndreyPopov/gettyimages

欧米と日本の人事システムにおいて、本質的な違いは何だろうか。ポイントは「ポスト」にある。

欧米企業の場合、組織編制は管理職からリーダーやアソシエイトといったヒラ社員まで、売上規模や業務量に応じて、ポスト数がロジックでピシッと決められていく。そして給与はポストごとに決まる。日本のような能力等級はないため、同じ職務なら多少の差はあれども基本的には同じ給料となる。そのため昇給しようと思えば、上のポストに就かなければならない。

ところが、いくら能力を磨いても、上のポストに空きがなければ昇進することはできない。そこで、自社をあきらめて上位ポストの空いている他社を探すか、昇進をあきらめてWLB(ワークライフバランス)にいそしむか、いずれかの道を選ぶことになる。これが欧米企業のJob for Post「職務主義」である。

幻想のジョブディスクリプション

今回の「日本式ジョブ型」騒動では、「欧米にならって、一人ひとりのジョブディスクリプション(職務記述書・JD)をしっかり定義しよう」といった会話が交わされている。この時点でボタンの掛け違いが起きている。欧米企業の場合、JDはポストにつくものであり、人につくものではない。

さらには、欧米企業のJDが詳細に書かれているというのも幻想だ。そこには「周囲の仕事も手伝う」「書かれていないことは上司の指示に従う」「業務に付随する諸々の問題を解決する」など、曖昧な言葉が頻出している。

そもそもホワイトカラー、特に上級職の仕事(タスク)を細かく記述することなど不可能である。欧米では1980年代に、JDの時代は終わったと言われている。

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