働くみんなの必修講義 転職学

人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは
未読
働くみんなの必修講義 転職学
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人生が豊かになる科学的なキャリア行動とは
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働くみんなの必修講義 転職学
出版社
出版日
2021年04月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

終身雇用制度が崩れ、転職は当たり前の選択肢になった。しかし、転職はある種、一か八かの賭けである。今の職場にとどまるか、新天地をめざして転職するか。悩みに悩んで転職したものの、思い描いていたような職場ではなく落胆した……という人も少なくないだろう。

著者も書いているとおり、転職が頭をよぎるのは、多くの場合、今の職場に不満を感じているときだ。不満の塊になっているとき、「転職」はキラキラと輝いて見える。しかし本書は、「ここではないどこか」を夢見ているあなたを一刀両断する。本書によると、転職とは一過性のイベントでも、自分に合った仕事と出会うマッチングでもない。長く地道な自己認識と変容のプロセスに他ならないのだ。

『転職学』と銘打った本書は、転職について科学的にアプローチした、いわば学問の書である。著者は1万2000人に及ぶ大規模な調査を実施し、その中で得られた研究知見を本書に余すところなく収録した。離職、転職、そして新たな組織への定着という「転職にまつわる一連のプロセス」を一気通貫で探求した、稀有な本である。

転職がこんなに身近になっているにもかかわらず、私たちは転職についてよく知らないし、学ぶ機会もない。転職学は今や、長い仕事人生を生き抜くための「必修科目」だといえるだろう。小手先のテクニックではない、転職の本質を知るために、すべての社会人にお読みいただきたい一冊である。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

中原淳(なかはら じゅん)
1975年北海道生まれ。立教大学経営学部教授。博士(人間科学)。1998年東京大学教育学部卒業後、大阪大学大学院人間科学研究科、メディア教育開発センター(現・放送大学)、米マサチューセッツ工科大学客員研究員、東京大学講師・准教授などを経て、2018年より現職。「大人の学びを科学する」をテーマとして、企業・組織における人材開発・組織開発・リーダーシップ開発について研究している。立教大学大学院経営学研究科リーダーシップ開発コース主査、リーダーシップ研究所副所長などを歴任。著書に、『経営学習論 人材育成を科学する』(東京大学出版会)、『フィードバック入門 耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術』(PHPビジネス新書)、共著に、『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(光文社新書)ほか多数。
ブログ:NAKAHARA-LAB.net(http://www.nakahara-lab.net/)

小林祐児(こばやし ゆうじ)
1983年福岡県生まれ。上智大学大学院・総合人間科学研究科・社会学専攻博士前期課程修了。NHK放送文化研究所に勤務後、総合マーケティングリサーチファームを経て、現在、パーソル総合研究所上席主任研究員。労働・組織・雇用に関する多様なテーマについて、調査・研究を行なっている。専門分野は理論社会学・社会調査論・人的資源管理論。著書に、『残業学 明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?』(共著・光文社新書)、『会社人生を後悔しない 40代からの仕事術』(共著・ダイヤモンド社)などがある。テレビ・新聞など各種媒体への出演・寄稿も多数。

パーソル総合研究所
パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、タレントマネジメントシステム提供、社員研修などを行なう。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしている。

本書の要点

  • 要点
    1
    転職は、自分に最適な場所を探そうとする「マッチング」ではない。自分が場に最適に適応することで成功にたどり着こうとする思考が求められる。
  • 要点
    2
    「不満×転職力>抵抗感」となったとき、人は転職を考え、行動を起こす。
  • 要点
    3
    転職活動において厳しい現実に直面したとき、「自分自身の内側を見つめて理解する『内向き』の認識(内面的自己認識)」と「他者から自分がどう見えているのかを理解する『外向き』の認識(外面的自己認識)」を重ね合わせ、ズレを補正していく「セルフアウェアネス行動」をとる必要がある。

要約

なぜ「転職学」が必要か

転職が当たり前の時代がやってきた

今、働き方に対する日本人の意識は大きく変わりつつある。長寿化によって一人ひとりの働く期間が長くなったことや、ビジネスの変化のスピードが速くなったことなどがその要因だ。バブル崩壊以前、多くの会社員は長期雇用が保証され、給与は右肩上がりだったが、今や成果を出せなければ生き残れないようになっている。

このような状況において、「転職」は「当たり前」の選択肢になりつつある。就職した会社でずっと働くことが前提ではなく、転職は「キャリアの選択肢の一つ」になっているのだ。

転職が学びにくい3つの理由
kazuma seki/gettyimages

転職は、なかなか学ぶことができないものだ。その結果、転職によってキャリアが「遭難」「沈没」する例が後を絶たない。

現代の日本において、転職が学びにくい理由は次の3つだ。

まず、「学校では教えてくれない」。高校や大学ではキャリア教育が行われるようになったが、その多くは仕事への意識づけや就職ガイダンスであり、社会人になってからの「転職」を学ぶものではない。

次に「他者の経験談に頼れない」。転職は他者の経験談を聞きづらく、そもそも他者の経験談があまり役立たない領域である。また世代によっては、いまだに転職に対するネガティブなイメージが根強くあり、転職そのものをやめるように説得されることもあるだろう。

最後に、「後戻りできない」。転職後に転職前の状況に戻ることは難しい。ほんとうに転職に成功したかどうかを実感するのは、新たな職場でしばらく働いたあとだ。教訓を得るまでには長い時間がかかる。

以上の理由から、多くの人は転職を「学ばない」まま実行することとなる。そしてその結果、「アンハッピーな転職」が量産されてしまう。

転職はマッチングではない
kazuma seki/gettyimages

著者は1万2000人に調査をして、転職する人がほんとうに求めている客観性と有用性を提供する「転職学」という講義をつくった。転職学における第一のスタンスは、転職は「プロセス」であり、一過性の「イベント」ではないということだ。転職とは離職から転職活動、そして入社、組織順応に至る一連のプロセスを指し、「内定」をゴールにするものではない。

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要約公開日 2021.06.20
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