スケールフリーネットワーク

ものづくり日本だからできるDX
未読
スケールフリーネットワーク
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ものづくり日本だからできるDX
未読
スケールフリーネットワーク
出版社
出版日
2021年01月12日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

バブル崩壊に端を発した「失われた30年」。日本経済は停滞を続けている。平井デジタル改革担当相の「デジタル敗戦」の言葉の通り、デジタル化も出遅れた。一方で、世界経済を牛耳るGAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のような企業は、コロナ禍でも順調に成長を続けている。

そうしたなか、果敢にDX(デジタル・トランスフォーメーション)を掲げて取り組んでいる日本企業がいくつもあることをご存知だろうか。日本企業はこの30年間、いたずらに失い続けただけではない。これから日本に大逆転のチャンスが来るというのが著者たちの見立てだ。今後IoT(モノのインターネット)が進み、フィジカルとサイバーが融合した広大な世界が登場したとき、日本が勝者になる可能性は十分にある――こうした主張には、率直にワクワクさせられる。

アメリカ企業が「選択と集中」で勝ち進んできた一方で、日本企業は「選択と集中」を苦手としてきた。しかし「選択と集中」を積極的にやってこなかったからこそ、日本は多様なものづくり技術と人材にあふれている。今後はハードウェアに強く、開発技術力を持つ多様な人材が、日本企業の強力な武器になるだろう。

先行き不透明な時代において、本書は日本の進むべきひとつの方向性を明確に表している。老若男女問わず、多くのビジネスパーソンに読んでいただければと思う。

著者

島田太郎 (しまだ たろう)
東芝執行役上席常務・最高デジタル責任者。90年に新明和工業に入社し、航空機開発に携わる。PLM(製品ライフサイクル管理)を手がけるシーメンスPLM(当時SDRC)へ。同社の日本法人社長を経て、シーメンスのドイツ本社に勤務。その後、日本法人の専務としてインダストリー4.0を推進。東芝では、事業のデジタル化の責任者としてDXを推進している。

尾原和啓 (おばら かずひろ)
フューチャリスト。京都大学大学院で人工知能を研究。マッキンゼー・アンド・カンパニーやNTTドコモ、グーグル、リクルート、楽天など数多くの企業で新規事業立ち上げを担う。現在はシンガポール、インドネシアのバリ島が拠点。著書は『ITビジネスの原理』『ザ・プラットフォーム』『アフターデジタル』『ディープテック』など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    ものづくりの技術と「スケールフリーネットワーク」が有機的につながれば、日本が今後のビジネスで大逆転する可能性はある。
  • 要点
    2
    スケールフリーネットワークでは、「平均的なノードにはこれくらいのリンク数がある」というスケール(尺度)がなく、大きなハブになったものがすべてを勝ち取る。
  • 要点
    3
    日本企業はハードウェアなどの物理的な資産を多く持っており、これから始まる二回戦では優位に立つ。各社がアセットをオープンにすれば、ユーザーによってスケールフリーネットワークは自然と成長していくだろう。

要約

日本の大逆転のチャンス

デジタル敗戦からの逆転はありうるか

世界中の企業がDX(デジタル・トランスフォーメーション)に取り組み、デジタルを使って新たなビジネスモデルを構築していっている。しかし日本はその波に乗り遅れてしまった。2001年のIT基本法施行から20年経っても、新型コロナのオンライン申請すら満足に対応できない。平井デジタル改革担当相も「デジタル敗戦」を宣言し、仕切りなおしを始めた。

GAFA(グーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)のような世界的企業はいま、圧倒的なパワーと洗練されたビジネスモデルで世界を席捲している。しかし日本にも、まだチャンスは残されている。そのチャンスのカギとなるのが「スケールフリーネットワーク」だ。日本の「ものづくり」と「スケールフリーネットワーク」が有機的につながれば、日本が大逆転する可能性すらある。

スケールフリーネットワークとは
metamorworks/gettyimages

スケールフリーネットワークは、米ノートルダム大学のアルバート=ラズロ・バラバシ教授らが発見した現象だ。1998年、彼らはウェブの地図を作ることにした。ウェブページの作者は自分のウェブページの内容に応じて、好きにほかのページのリンクを貼ることで、巨大なネットワークを形成する。そこでネットワークのリンク構造を調査したところ、なんと0.01%に満たない少数のページに、膨大なリンクが集中していることがわかった。

これはバラバシ教授たちにとっては驚きだった。というのも彼らは当初、ウェブページの形は「ランダムネットワーク」になると予想していたからである。ランダムネットワークの場合、「平均的なノードにはこれくらいのリンク数がある」という「スケール(尺度)」があるのだが、現実はそうではなかった。つまりスケールフリーだったのだ。

ランダムネットワークが、都市間をつなぐ高速道路網のようなものだとすると、スケールフリーネットワークの構造は航空網に似ている。巨大なハブ空港に、多くの小空港(飛行空港)が接続しているようなイメージだ。

GAFAの躍進も、スケールフリーネットワークの力が関係している。彼らはマネタイズを先行させるのではなく、ネットワークの成長を先行した。たとえばグーグルのマネタイズは創業から4年後だし、フェイスブックも3年後だ。彼らはまずスケールフリー構造を確立し、そこで自らが巨大なハブとなることで、莫大な収益を上げるようになったのである。

インダストリー4.0

ドイツはいま政府主導、産官学一体で、「インダストリー4.0」を進めている。これは工場内の装置をインターネットにつなぎ、スマート工場化をめざすもので、さまざまな要素が含まれる取り組みだが、その本質は製造業のスケールフリーネットワーク化にあると言っていいだろう。

著者の島田氏は2014年、シーメンスのドイツ本社に着任し、デジタルファクトリー担当としてインダストリー4.0に取り組んだ。そのときドイツの担当者は口を揃えて、インターネットでの敗北と、インターネットで起きたことを次は産業界で起こすと語っていた。インターネットでアメリカの後塵を拝したことは、ドイツにとっては痛恨の出来事だった。しかし彼らは自らの間違いを認めて、逆転を狙っている。

島田氏が日本のエンジニアと話すときも、同じ話が出てくるという。しかし本気で取り組む人はいない。なぜなら

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要約公開日 2021.07.15
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