福岡市長高島宗一郎の

日本を最速で変える方法

未読
日本を最速で変える方法
福岡市長高島宗一郎の
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日本を最速で変える方法
出版社
出版日
2021年05月31日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

全国住みたい街ランキングで常に上位にランクインしている福岡県福岡市。2020年度の人口増加数・増加率は政令指定都市で第1位。2019年度の開業率は政令指定都市で第1位。7年連続で税収過去最高を更新。福岡市をこんなふうに活力あふれる街にしているものは何なのか。

本書の著者は、アナウンサー出身で、2010年の初当選から現在まで3期連続して再選を続けている福岡市長の高島宗一郎氏である。しかも、いずれの期でも史上最多得票を叩き出すという人気ぶりだ。福岡市を変えることで、日本を変えたいと本気で願い、新たなチャレンジを続ける姿勢とその結果が人々を魅了するのだろう。著者は、これからの時代のキーワードとして、「データ連携」と「感染症対策」を挙げる。そして、新たなテクノロジーを社会実装することにより、日本の未来を創造したいと考えている。福岡市が実践するチャレンジの詳細とその背景にある戦略が明らかになり、「福岡市から日本を変える」という未来図が提示されるさまは圧巻だ。

人間の感情から生まれる本質を突いたWhy視点の問い、あるべき姿を追求した大義ある提案力、そして疑問を抱いた事象を深く洞察し、実行に結びつけていく力。本書の文章にも、著者の人間力と志の強さがにじみ出ているのを要約者は感じた。

本気で日本を変えたいと思い、新たなチャレンジに奮闘するビジネスパーソンには必ず手にとっていただきたい一冊である。挑戦の後押しをされること請け合いだ。

著者

高島宗一郎(たかしま そういちろう)
1974年生まれ。大学卒業後はアナウンサーとして朝の情報番組などを担当。2010年に退社後、36歳で福岡市長選挙に出馬し当選。2014年、2018年といずれも史上最多得票で再選し現在3期目。2014年3月、国家戦略特区(スタートアップ特区)を獲得、スタートアップビザをはじめとする規制緩和や制度改革を実現するなど、日本のスタートアップシーンを強力にけん引。福岡市を開業率連続日本一に導く。規制緩和で誘導する都市開発プロジェクトやコンテンツ産業振興などの積極的な経済政策で、政令指定都市で唯一、7年連続で税収過去最高を更新。熊本地震の際には積極的な支援活動とSNSによる情報発信などが多方面から評価され、博多駅前道路陥没事故では1週間での復旧が国内外から注目された。2017年日本の市長では初めて世界経済フォーラム(ダボス会議)へ招待される。

本書の要点

  • 要点
    1
    新型コロナウイルス感染拡大は、日本の有事における対応の遅さを浮き彫りにした。このような日本を最速で変えるには、地方からの変革が鍵となる。
  • 要点
    2
    福岡市は、「Fukuoka Smart East」「天神ビッグバン」などの新たな挑戦によって、他の自治体への後押しとなる成功事例を生み出している。
  • 要点
    3
    新たなビジネスを社会実装する際に最大の障壁となるのが「既得権」だ。この壁を乗り越えるには、政治や行政を変える力学を学ぶことが欠かせない。

要約

【必読ポイント!】 なぜ日本は変化に弱いのか

なぜ日本は変化にかくも時間がかかるのか
wildpixel/gettyimages

新型コロナウイルス感染拡大は、日本の有事対応がいかに遅いかを白日の下にさらした。国と地方の曖昧な権限と責任、デジタル化の遅れ、中途半端な外出自粛要請。こうした統治機構としての弱点が可視化されたのだ。地方自治体を通じた国民への給付金の遅れもその1つである。全国民に一律10万円ずつ給付することになったが、諸外国に比べて日本の停滞が際立って報道された。なぜ、日本は給付が遅れたのだろうか。

根本的な原因は「個人データの管理」にある。2016年に本格運用が始まったマイナンバー制度によって、国民一人ひとりのマイナンバーに、住民基本台帳情報や所得情報など、様々な行政機関が持つ情報を紐づけられるようになった。しかし、これらの行政機関が持つ情報を互いに参照することは法令により厳しく制限されているのが現状だ。そのため、給付金の振り込みに必要な情報を集約できず、全世帯から回答された情報をもとに人海戦術で手続きをするという手法に頼ることになってしまった。

ではなぜ、国はデータを一元管理していなかったのか。実は「していなかった」のではなく、意図的に「してこなかった」という歴史的背景がある。太平洋戦争によって壊滅的な打撃を受けた日本は、GHQの指導のもと「戦争をしない国づくり」を進めた。こうして「戦争につながりかねないものは徹底的に排除する」という日本人の新しい価値観が生まれた。そしてその価値観が、国による国民情報管理に否定的な考えにつながっていった側面がある。さらには、ゼロリスク神話も、日本のデータ連携や危機対応のスピードを上げるうえでの妨げとなっているのだ。

ビジネスパーソンに足りない政治的知見

著者は福岡市長に就任して以来、スタートアップをさまざまな形で支援してきた。その経験をもとに「ビジネスパーソンは、もっと現実の政治力学を知り、もっと政治と関わっていくべきだ」と主張する。

どんなに優れた製品・サービスを作っても、それを社会に実装させるかどうかを決めるのは政治や行政である。政治や行政の世界では経済合理性は往々にして通用しない。新しいビジネスアイデアを社会に実装させるには、政治の世界の力学や政治家・官僚の行動原理を理解し、法律や規制を変えていくという戦略的なアプローチが必要なのだ。

地方からの変革こそ、日本を最速で変える切り札

「日本を変える鍵は地方にある」。これが、国政選挙に出馬せずに「市長」にこだわる著者の持論だ。日本の地方自治には「基礎自治体優先の原則」が存在する。基礎自治体すなわち市町村が市民へのサービスの主体であり、基礎自治体で処理できない問題を都道府県がフォローし、そこでも処理できない問題を国がフォローする構造となっている。つまり、市民に最も近い基礎自治体こそが政治のキープレイヤーなのだ。

しかし、世間のイメージは逆である。それは、地方交付税のお金の流れが、国から都道府県を通じて市町村へ向かっており、基礎自治体優先の原則とは逆向きの流れであるためだ。また、国が作る法律や規制を緩和してほしいときには、国に対して自治体がお願いする形となっている。こうして、国に「逆らいづらい」状態が構造的に生み出されているのだ。

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要約公開日 2021.07.21
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