社会を知るためには

未 読
社会を知るためには
ジャンル
著者
筒井淳也
出版社
定価
924円(税込)
出版日
2020年09月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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社会を知るためには
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著者
筒井淳也
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924円(税込)
出版日
2020年09月10日
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おすすめポイント

「なぜこんなことになってしまったのか……」と天を仰ぐことは、誰しもあるだろう。2020年を振り返ると、正体不明のウイルスのせいでパニックに陥り、全世界の日常が一変した。これを「誰かのせい」にできたらどんなにいいだろう……と思った方も多いのではないだろうか。

しかし考えてみると、地球温暖化や少子高齢化といった社会問題も、誰かが企んで意図的に起こしたものではない。時代背景やさまざまな要素が複雑に絡んで、気がついたらそういった結果につながっていたというものがほとんどだ。

この100年でテクノロジーは進化し、あらゆる分野で技術革新が起こった。「より良い世界」に向けて努力しているのに、世の中からは問題も、わからないこともなくならない。いや、むしろ増えているようにすら見える。

本書はこの「よくわからない」現代社会に対する、社会学という学問のアプローチの仕方を紹介した一冊である。著者は社会について「私たちが作り上げているが、私たち自身よくわからなく、緩さを含んだもの」という。

私たちはモヤモヤよりもスッキリが好きだ。わかりやすく明快な「答え」を求めてしまうし、問題が起これば「ミスを犯した誰か」を探し、安易に責めてしまう。しかし、よくわからなくモヤっとしたものこそが、私たちの暮らす社会の正体なのである。

社会を理解したくて要約を読んでも、スッキリとしないかもしれない。しかし落胆しないでほしい。その複雑さを認識することが、社会を知る「はじめの一歩」なのだから。

ライター画像
矢羽野晶子

著者

筒井淳也(つつい じゅんや)
1970年生まれ。一橋大学社会学部卒。一橋大学大学院社会学研究科博士課程後期課程満期退学。博士(社会学)。現在、立命館大学産業社会学部教授。専門は家族社会学、計量社会学。著書に『制度と再帰性の社会学』(ハーベスト社)、『親密性の社会学』(世界思想社)、『仕事と家族』(中公新書)、『結婚と家族のこれから』(光文社新書)、共著に『社会学入門』(有斐閣)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間とは「自分たちで作り上げた、よくわからない環境の中で生きる存在」である。「社会はわからない」と理解することが、よりよい社会認識の第一歩になる。
  • 要点
    2
    専門知の発展により、社会の仕組みは細分化・高度化していった。専門的な学問が発達するほど世の中は複雑になり「よくわからなく」なっていく。
  • 要点
    3
    社会は意図した通りには変わらない。むしろ、意図せざる結果を引き起こすことが多い。
  • 要点
    4
    シンプルで体系的な陰謀論は人を惹きつけるが、それは、思考にかかるコストを減らしたいという合理性からきている。

要約

【必読ポイント!】 世界は「わからなさ」と「緩さ」でできている

出生率低下を引き起こしたのは誰?

日本の出生率は予想以上に低下しており、少子高齢化が加速している。出生率低下の理由についてはさまざまな研究がなされ、推論も出ている。しかし、出生率低下の「理由」は研究対象となっても、それを「誰が引き起こしたか」という問いは存在しない。少なくとも、「誰かが明確な意図をもって少子化を引き起こそうとした」と考える研究者は一人もいない。

世界で起こっている数多くの問題は、誰かが意図的に起こして生じたものではない。誰かが悪意を持って引き起こしているなら、むしろ解決しやすいだろう。しかし実際には、深刻な問題は「意図されない」うちに発生して進行し、その裏には複雑な要因が絡み合っている。研究者ですら、この絡み合いについてほとんど理解できていないのである。

緩くつながる社会
JamesBrey/gettyimages

社会を構成する様々な要素は、きちんと体系的につながっているわけではない。つまり、つながりが「緩い」のである。社会に存在する規則や制度、その背後にある理論もかなりの緩さを含んでいる。

世の中には多くの「仕事」があるが、日本の社会学が構築した分類のシステムによると、職業は700個ほどに分かれる。これだけ数が多い理由のひとつには「分業」がある。スマートフォンひとつを例にとっても、デザインをする人、部品を作る人、組み立てる人、販売する人、出資をする人など、実に様々な人が携わっている。

一方で、スマートフォンの製造・販売によって得られた利益の分配基準は明確ではない。スマートフォンの部品を作る会社にしても、社員への給与額は「年功序列」「資格の有無」などをもとに独自に判断される。しかし、これらの基準が適正かどうかの保証はなく、「よくわからない」のが実態だ。「この仕事は利益の何%にあたる」といった明確な規則の上で分配されているわけではなく、その基準は緩々(ゆるゆる)なのである。

「専門化」が社会をわからなくする

現代社会がよくわからなくなっているのは、私たちが「専門知識・専門的な仕組み」に取り囲まれていることも関係する。近代化以降、専門知識は細かく枝分かれして、その中でどんどん高度化していった。その知識を反映した仕組みやシステムが発展し、その一部は私たちの生活の土台となっている。

たとえば、会社経営は「会計」という専門知に支えられている。しかし、会計の基礎である複式簿記のことを、経営責任者である社長すらわかっていないことも多いだろう。また、現代医療は極めて高度化した専門知識によって運営されている。各分野で無数の論文が発表され、多額の資金を費やして開発研究が行われているが、専門家もその全容を把握することはできない。

身近な制度であっても専門的過ぎて理解できないことは多い。かと言って、専門知識を勉強しても世の中のことがわかるようにはならない。むしろ、専門的な学問が発達するほど世の中は複雑になり、「よくわからないもの」になっていくのである。

社会は動きつづけている

社会は動き続けており、私たちはその中に投げ込まれている。ここでは、社会で生活することを「止められない自動車に乗っている」ことに喩えてみよう。

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