突き抜けるまで問い続けろ

巨大スタートアップ「ビジョナル」挫折と奮闘、成長の軌跡
未読
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巨大スタートアップ「ビジョナル」挫折と奮闘、成長の軌跡
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著者
出版社
ダイヤモンド社

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出版日
2021年06月29日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書には、ビズリーチの創業者南壮一郎氏本人をはじめ、楽天の三木谷浩史氏など多くの関係者が登場し、南氏やビズリーチに様々な角度から光が当てられている。その描写は極めて詳細にわたり、登場人物の多さもさることながら、各人への取材がいかに膨大且つ緻密だったかを物語っている。

サブタイトルにあるビズリーチの「挫折」「奮闘」「成長」の「軌跡」が手に取るように伝わってくる良書だ。またその取材の綿密さゆえに、軌跡にとどまらず、南氏や同社がどのような成長戦略を描いているかもうかがえ、その将来像は大変期待が持てる。あとがきにおいて、「取材をすべて調整してくれたビジョナル」に対する著者の感謝が綴られているが、その苦労が報われるであろう労作と言える。

ビズリーチ創業に向け、南氏が「とことんやってやる」とファミリーレストランのドリンクバーでコーラを補充しながら誓う場面など、南氏や関係者の発言、一挙手一投足が、無駄なく、要所要所で効果的にちりばめられている印象で、大変に読み応えがあった。

本書は8章から構成されるが、それぞれ起承転結がはっきりとしていて、ドラマチックな展開につい引き込まれてしまう。難局に直面するたび、南氏がどのように考え、乗り越えてきたか、周囲はどのように振る舞ったか、ノンフィクションでありながら、経済小説さながらの臨場感あふれる筆致だ。

志ある一個人が起業して上場に至るまでのストーリーは、起業家精神のある人はもちろん、多くのビジネスパーソンに響くはずだ。

著者

蛯谷敏(えびたに さとし)
ビジネス・ノンフィクションライター/編集者
2000年日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』の記者・編集者として活動。2012年に日経ビジネスDigital編集長、2014年に日経ビジネスロンドン支局長。2018年7月にリンクトイン入社。現在はマネージング・エディターとして、ビジネスSNS「LinkedIn」の日本市場におけるコンテンツ統括責任者を務める。これからの働き方、新しい仕事のつくり方、社会課題の解決などをテーマに取材を続けている。著書に『爆速経営 新生ヤフーの500日』(日経BP)。

本書の要点

  • 要点
    1
    2021年4月、ビズリーチなどを展開するビジョナルが東証マザーズに上場した。創業者南壮一郎が起業を思い立った原点は、東北楽天イーグルスの立ち上げに携わった経験にある。
  • 要点
    2
    楽天を退職後、南は多くのヘッドハンターと会う中で従来の転職市場に違和感を抱き、ビズリーチの事業構想を思いつく。人材に恵まれ、テレビCMも奏功して成長を遂げた。
  • 要点
    3
    2020年、ビズリーチは社名をビジョナルに変え、グループ経営体制へと移行した。新事業に挑戦し、問い続け、学び続けることでさらなる成長を目指す。

要約

ビジョナルと南壮一郎

ビジョナル上場

2021年4月22日、ビジョナル株式会社が東京証券取引所マザーズ市場に上場した。

「創業して今日が12年と1週目。会社としてようやくスタートラインに立てたという思いです。これからも、価値があることを正しくやり、変わり続けるために、学び続けていきましょう」。創業者の南壮一郎は社員ら仲間たちに向けて語った。

祖業で中核事業のビズリーチは、企業が直接求職者に声を掛け、即戦力人材を採用する「ダイレクトリクルーティング」の手法を確立した。ビズリーチのほか、若年世代向け「キャリトレ」など、複数の採用プラットフォームを展開する。さらに、人材活用のクラウド型SaaS(サース)事業や、セキュリティや物流のデジタル化事業など、経営を多角化させている。

上場初日の時価総額は2400億円を超え、マザーズ市場の時価総額ランキングでメルカリやマネーフォワードなどに続き、5位に躍り出た。2020年7月期の連結売上高は258億円超、営業利益は22億円に迫り、競い合うマネーフォワードなどと比べても、抜きん出ている。

南壮一郎とは
wutwhanfoto/gettyimages

ビジョナルの創業者、南とは何者か。ビズリーチ社長の多田洋祐は、南を「データ分析好きなビジネスモデルオタク」と表現する。世の中の流れを見極めるのに長け、次に流行るものや今の世に必要なものを調べ、自身の得意なフレームワークに落とし込むという。

1976年生まれの南の同世代にはグリー社長の田中良和やマネーフォワード社長の辻庸介、Sansan社長の寺田親弘などがいる。その中でも異彩を放つ南は、幼稚園から中学までカナダで育った。学年で唯一のアジア人という強烈なマイノリティとしての体験がある。集団の傍流で育ったからこその「主流にいる人は気づけない観察力、物事を客観的に捉える力」が備わったと自己分析する。

中学で日本に帰国後、再び渡米しタフツ大学に入った。卒業後はモルガン・スタンレー証券に入社、4年で退社すると東北楽天ゴールデンイーグルスの立ち上げに携わった。

「海外育ち」「金融」「プロ野球」「人材」「インターネット」という異質な諸経験が、南がユニークであるゆえんだ。

強烈な3人

南の性格を表すとすれば「執念深さ」「手堅さ」「青くささ」といった言葉が合う。

楽天グループ代表の三木谷浩史は、南を「しつこい。とにかく結果が出るまでやり続ける」と評し、粘り強さを強調する。

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要約公開日 2021.07.23
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