お金の役割とは「人と人が価値を交換する、あらゆる活動の媒体になること」である。ある人が、自分でつくったりどこかから手に入れたりしたモノやサービスを他の誰かに提供したいとき、お金はその交換取引の間を取り持つ。
モノやサービスを誰かに提供したいときに、なぜお金が必要なのか。それは、モノやサービスをつくるまでにかかるさまざまな手間やコストを回収する必要があるからだ。材料費のような目に見えるコストだけでなく、労力やアイデアなどといった“目に見えないコスト”にも値付けをし、お金を媒体にして売ることで、価値の交換が円滑になる。
お金がない時代には物々交換をしていたが、不便で非効率だった。そこで、その不便を解消するためにお金が発明された。
最初は石や貝殻がお金として使われ、次第に、青銅などの金属へと素材を変えていった。これが貨幣の誕生である。貨幣が社会に流通するにつれ、「誰かのために何かをつくる、何かをしてあげるという行動は、お金と交換される」というルールに対する共通理解もできていった。
私たちが毎日当たり前に使っているもの、たとえばテレビを自力で作ることは不可能だ。しかし、お金で買えば、誰かがつくってくれた完璧なテレビがすぐ手に入る。
人類を発展させた発明品の多くは、お金の誕生によって生まれたと言える。お金を得れば、自分の好きなものや欲しいものが手に入る。「お金に交換できる」という約束があるからこそ、他の人に役に立つモノやサービスをつくるために熱心に努力する人や才能を発揮する人が増えていったからだ。お金の“人の努力や才能を引き出すパワー”によって文明社会の発展は加速した。
お金は、その価値を誰かが保証する必要がある。「このお金は本物で、好きなものと交換できる」と皆が信じないと、交換が成り立たなくなってしまうからだ。そのため、誰でもお金を発行できるわけではなく、時の政府が正式に貨幣を発行することで、その価値を担保していた。
“買う”という行為には、必ずその人の“意思”が伴う。新しい靴を買う場合を考えてみよう。駅前の靴屋さんに行くと、たくさん並んでいる靴の中に、あこがれのスポーツ選手が履いている靴がある。最新モデルではないが、とにかくデザインがイケている。部活で仲のいい友だちもこの靴の色違いを買うと言っていたから、おそろいになって盛り上がりそうだ――このように、一足の靴を買うまでには、明確な意思が何度も働いている。
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