決断力

誰もが納得する結論の導き方
未読
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誰もが納得する結論の導き方
著者
未読
決断力
著者
出版社
出版日
2021年07月13日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「生産ラインの歩留まりは悪いが、このまま生産を続けて直近の顧客納期を間に合わせるか」「納期遅延による損害賠償を覚悟した上で生産ラインを止めるべきか」など、簡単に判断できない問題を即断することが、仕事ではしばしば求められる。場合によっては「49対51」というような状況で、絶対的な正解がないこともある。そんな問題を前にして、「意志決定を先延ばしにしてしまった」「意志決定に困ってしまった」という経験はないだろうか。

本書は大阪府知事、大阪市長としていくつもの難題に決断を下してきた著者が、意志決定の方法を解説した一冊である。大阪府の財政再建や大阪都構想の住民投票の実施など、世間では不可能と思われたことを実現できたのは、正解がわからない問題に対しても、組織やチームが納得できるような決断を下してきたからだ。そしてそれは、「結果の正しさ」ではなく、「プロセスの正しさ」に焦点を合わせたからこそ可能だった。

いかに意志決定を行うべきか、どのような決断プロセスを踏むべきなのか、どうすれば周囲も納得する決断を下すことができるのか。さまざまな難題が舞い込んでくるリーダーにとって、一度は読んでおきたい意志決定の教科書である。本書を読み、組織やチームを力強く牽引していっていただければと思う。

ライター画像
木下隆志

著者

橋下徹 (はしもと とおる)
大阪府立北野高等学校、早稲田大学政治経済学部卒業。1998年、橋下綜合法律事務所を開設。2008年に38歳で大阪府知事、2011年に42歳で大阪市長に就任。大阪府庁1万人、大阪市役所3万8000人の組織を動かし、絶対に実現不可能と言われた大阪都構想住民投票の実施や行政組織・財政改革などを成し遂げる。2015年、大阪市長を任期満了で退任。現在は弁護士、タレントとして活動。
著書に『実行力 結果を出す「仕組み」の作り方』『交渉力 結果が変わる伝え方・考え方』(ともにPHP新書)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    決断を下すときは、メンバーが納得できるプロセスを踏むことが重要だ。
  • 要点
    2
    決断プロセスを納得してもらうには、「手続的正義」の考え方を適応するとよい。手続的正義とは、「結果に至る過程・プロセスに正当性があるなら、正しい結果とみなす」という考え方である。
  • 要点
    3
    手続的正義にもとづいた決断をするためには、次の3つのルールを守るべきだ。(1)立場や意見が異なる人にきちんと主張の機会を与えること、(2)期限をかならず定めること、(3)リーダーなどの判断者はいずれの主張の「当事者」にもならないことである。

要約

決断を下すには事前のルール作りが必要

組織やチームが納得するプロセスを踏む

「どちらを選ぶべきかわからない」「絶対に正しいかわからない」など、答えがない問題は世の中にたくさんある。もちろんビジネスにおいても同様だ。

しかし誰もが決められない問題に関して、「このようにすべきだ」と決断を下して、その責任を取ることがリーダーの役割である。答えがあるかどうかすらわからない問題に対して、「絶対に正しい答え」を求めて、決断を先送りするようではリーダー失格だ。時間が限られるなか、周囲から反発されようとも決断を下し、組織やチームを動かしていくことがリーダーには求められる。

一方で、「この案でいこう」と決めたとき、その案に賛成していない人たちがいることを忘れてはならない。彼らにも最終的には納得してもらう必要がある。組織やチームのメンバーの納得感が低いままに物事を進めてしまうと、途中で頓挫してしまうかもしれない。決断を下すときは、それぞれのメンバーが納得できるような決断プロセスを踏むことが大切なのである。

メンバーが納得できる決断のプロセス「手続的正義」
alashi/gettyimages

では、どのような決断プロセスを踏めば、メンバーが納得してくれるのだろうか。その答えは「手続的正義」という考え方にある。司法の世界では、「実体的正義」と「手続的正義」という2つの考え方がある。

実体的正義とは、「ある結果の内容自体に正当性があるかどうかを問う考え方」である。つまり「絶対的に正しい結果かどうか」が判断基準だ。

一方で手続的正義とは、「結果に至る過程・プロセスに正当性があるなら、正しい結果とみなす」という考え方だ。つまりここで論点となるのは、「適切な手続きに従って判断された結果かどうか」である。

ケーキを公平に二等分する方法

たとえば、「公平に2人でケーキを2つに分ける」にはどうしたらいいだろうか。ここでは、「2人はお互いに大きいほうを取りたい」と考えていることにする。

「単純にケーキを正確に二等分すればいいのではないか」と思うかもしれない。しかしどんなに高性能な機械を準備しても、正確に二等分することはきわめて難しい。突き詰めていくと、ミリ単位やナノ単位で誤差は生じてしまう。したがってこの方法は現実的ではない。

しかし手続的正義のやり方にもとづいたルール・プロセスを作れば、2人が納得するようにケーキを分けることも可能だ。まず1人がケーキを二等分に切り、次にそのケーキを切らなかった人が好きな方のケーキを選ぶ。そしてケーキを切った人が、残った方のケーキをもらうのである。

こうすれば、切る人は自分が損をしないようにケーキを二等分するだろう。誤差が出て小さい方のケーキをもらうことになっても、自分が切ったので不満は残らない。また、切らなかった人は大きい方を選べるので、もちろん不満は残らない。

このように、厳密に二等分しなくても「双方が納得するルール・プロセスがあればよい」とするのが、手続的正義の考え方である。

多数決の結果を認めさせるには仕組み作りが大切

「このまま事業を継続すべきか」「事業を撤退すべきか」などの問いの答えは誰にもわからない。しかしビジネスの世界において、正しいと思うことのみを追求していては、事業が成り立たなくなってしまう。

ゆえに

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要約公開日 2021.08.15
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