生物はなぜ死ぬのか

未 読
生物はなぜ死ぬのか
ジャンル
著者
小林武彦
出版社
定価
990円(税込)
出版日
2021年04月20日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
3.5
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生物はなぜ死ぬのか
著者
小林武彦
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定価
990円(税込)
出版日
2021年04月20日
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総合
4.0
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おすすめポイント

地球に生命が誕生したのは、ほとんど奇跡に近い。その奇跡的な命を次の世代へと繋ぐために、私たちは死ぬのである。命のたすきを次に委ねて「利他的に死ぬ」――これが本書に込められた著者のメッセージだ。

命は今から38億年前、たった1つの細胞から生まれた。地球上のあらゆる動植物は、すべてこの1個の細胞の子孫である。あらためてそう教えられると、その不思議さと、生命の舞台になった時空間の広大さに胸を打たれずにはいられない。生物は変化と選択を繰り返し、多様性に富んだ「生態系」を作り出してきた。

しかし、地球はこれまで5回の大量絶滅を経験してきたという。その最後のものが恐竜などの生物種の約70%が絶滅したおよそ6650万年前の白亜紀のものだ。しかし、ここで恐竜が滅んでくれた結果、私たちのような哺乳類が繁栄することができたのである。

著者が危惧するのは、6回目の大量絶滅が人間の手による生物多様性の喪失が原因で起こるかもしれないということだ。さまざまな生物が相互に依存している生態系は、多様性が失われると、ある時点で絶滅の連鎖が始まり取返しのつかないことになるという。

私たちの生命は、この誕生から絶滅に至る大きな命の流れに与している。そうした大きな視点を持てたときに、生と死の意味がクリアにみえてくるのではないだろうか。

また、社会的な生き物である人間は、生物学的な遺伝子、DNAだけでなく、文化的な遺伝子であるミームも次の世代に繋ぐことができるであろう。要約者は、そこにもう1つの希望があると感じた。

ライター画像
しいたに

著者

小林武彦(こばやし たけひこ)
1963年生まれ。神奈川県出身。九州大学大学院修了(理学博士)、基礎生物学研究所、米国ロシュ分子生物学研究所、米国国立衛生研究所、国立遺伝学研究所を経て、東京大学定量生命科学研究所教授。前日本遺伝学会会長。現在、生物科学学会連合の代表も務める。生命の連続性を支えるゲノムの再生(若返り)機構を解き明かすべく日夜研究に励む。海と演劇をこよなく愛する。著書に『寿命はなぜ決まっているのか』(岩波ジュニア新書)、『DNAの98%以下は謎』(講談社ブルーバックス)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    死んだ生物は分解され、回り回って新しい生物の材料となる。この「ターンオーバー」を繰り返し、変化が生まれその中で特定のものが生き残るという「変化と選択」を生き物は続けてきた。
  • 要点
    2
    変化による多様性を生み出すのに有効な有性生殖の仕組みを持つ生物が、進化の過程で選択されて生き残ってきた。
  • 要点
    3
    有性生殖においては、子供のほうが親よりも多様性が高い。そのため、親でなく子供が生物学的に選択され、後に残る。私たち生き物が死ななければいけない大きな理由は「多様性」の維持のためである。

要約

生命の誕生と大絶滅

変化と選択

なぜ地球で生物が誕生したのかは、今でもわかっていない。46億年前に地球が誕生して以降、何億年もかけて生まれたたった1つの細胞が、現存する地球のすべての生物の始祖となった。それは偶然、というより奇跡に近いできごとだった。

その確率を表すのに、このようなたとえがある。「25メートルプールにバラバラに分解した腕時計の部品を沈め、ぐるぐるかき混ぜていたら自然に腕時計が完成し、しかも動き出す確率に等しい」――実際に起こったのだからその確率はゼロではない。

細胞は、細菌のような「原核細胞」から、ミトコンドリアや葉緑体と共生する「真核細胞」へと変化を遂げ、今から10億年前に「多細胞生物」が生まれた。その過程でも死んだ生物は分解され、作り変えられて入れ替わるという「ターンオーバー」を繰り返してきた。その「変化」の中で効率よく増えるものが「選択」的に生き残るという、「変化と選択」が生物の多様性を支えている。つまり「進化が生き物を作った」のである。

生物多様性
vlad61/gettyimages

多様性が生まれてくると、ある生き物が他の生き物に居場所を提供したり、餌になったりするようになる。そうして生物間の関係が強まり、多くの生き物の生存を可能にする「生態系」が完成した。さまざまな種が存在して生態系が複雑になるほど、ますますいろいろな生物が生きられる正のスパイラルが働く。昆虫は植物の受粉を助け、土の中の微生物が動植物の死骸を分解する、というように。

こうした複雑な生態系は、環境の変動に強い。たとえば、ある種が絶滅したとしても、それと似た生存スタイルを持つ「ニッチ」の生物が代わりをするので、大きな問題は起こらない。絶滅で生じるロス(喪失)が生態系に吸収されるのである。

絶滅の連鎖

しかし、大量絶滅の場合は話がかなり違ってくる。たとえばヒトの活動の影響で生き物の10%が絶滅したとする。これは、数十年以内に起こりうると予測されている数値の上限である。これだけ多量に、しかも急激にいなくなると、似たようなニッチの生き物が抜けた穴を補うことがもはやできなくなる。

そうすると、それら絶滅した生き物に依存して生きていた生き物も絶滅するかもしれない。さらに、それらに依存していた生き物も絶滅し、ドミノ倒しのようにあっという間に多くの動植物が地球から消えてしまう。

そうなれば、人類にとっても深刻な食糧不足は避けられない。食料を巡って戦争でも起これば悲惨だ。大量絶滅は人類にも地球にも不幸以外の何ものでもない。

最も近くに起こった大絶滅は6650万年前(中生代末期白亜紀)のものである。生物種の約70%が地球上から消えたとされており、恐竜もこのときに絶滅した。しかし、そのおかげで、次のステージ、哺乳類の時代へと移ることができた。したがって、このときの大量絶滅は人類にとっては決して悪いことではなかった。しかし、次の大絶滅のあとに、私たち人類の子孫がそこにいるかどうかは予断を許さない。

生物はどのように死ぬのか

アクシデントか寿命か

「生物はなぜ死ぬのか」について考えると、「死」もまた進化が作った生物の仕組みの一部ということが言える。それでは、生き物の死に方にはどのようなものがあるだろうか。

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