16歳からの相対性理論

アインシュタインに挑む夏休み
未読
日本語
16歳からの相対性理論
16歳からの相対性理論
アインシュタインに挑む夏休み
未読
日本語
16歳からの相対性理論
出版社
定価
968円(税込)
出版日
2021年05月10日
評点
総合
3.5
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.0
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おすすめポイント

この本のタイトルを前に、まず、「16歳から相対性理論なんてわかるのだろうか?」という疑問がよぎる。この本は、そんな読者の予想を軽々と越えてしまった。

本書は、難しい相対性理論を大真面目に解説したものというよりも、高校生を中心とした青春物語のなかからその理論が自然と理解できるように工夫されたものである。主人公の鈴木数馬は、陸上部に所属する高校1年生。ふとしたきっかけで「なぜ光の速さは変わらないのか」について疑問をもつ。ちょっと複雑な家庭事情や、学校ならではの人間関係に悩まされ、それに巻き込まれながらも、光から重力、そしてアインシュタインの「相対性理論」へと理解を深めていく。学校の授業でもなく、だれに強要されるでもない。あるのは科学への純粋な興味と好奇心だけである。

本書の中で印象深いのは、「知識は限られているが、想像力はこの世界を包み込む」というアインシュタインの言葉だ。一人の人間が持ちうる知識はわずかだが、複数人が集まって想像力を働かせ、成し遂げようとすることは、大きな力を生む。研究を続ける世界中の科学者たちを突き動かしているのは、アインシュタインの残した相対性理論と、そこから想像できる新しい世界への好奇心なのかもしれない。

科学は苦手だとか、相対性理論がいったい何の役に立つのかと感じている方にこそ、本書をおすすめしたい。読み進めるうちに、夏休みという言葉の響きが懐かしいものとなっている立派な大人たちにも、学ぶことの楽しさを思い出させてくれることは間違いない。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

佐宮圭(さみや けい)
1964年生まれ。兵庫県尼崎市出身。早稲田大学第一文学部卒業。学研『大人の科学マガジン』などのサイエンスライターとして、日経BP『日経クロストレンド』などでビジネスライターとして活躍。2010年『鶴田錦史伝―大正、昭和、平成を駆け抜けた男装の天才女流琵琶師の生涯』で第17回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。『さわり』として刊行された。

本書の要点

  • 要点
    1
    光の速さは、乗り物に乗った状態で計測しても地面で計測しても変わらない。これを「光速不変の原理」という。動いているときと地面にいるときで光の速さが変わらないのは、時間が相対的だからである。自分から相対的に見て動いている相手の時間は、自分の時間よりも流れる速度が遅くなる。
  • 要点
    2
    重力は時空を歪めることができ、この歪みが波のように伝わることを「重力波」と呼ぶ。2015年9月に初めて重力波を観測したことで、人類はこれまで知ることのできなかった宇宙誕生時の情報を観測できる可能性に大きく近づいた。

要約

【必読ポイント!】 光

光の速さ
sakkmesterke/gettyimages

高校1年生の数馬は、夏休みの部活に向かう前のランニングを日課にしている。ある日のランニング中の土手で、数馬は同じ高校の先輩であるシュレという少女に出会う。開口一番で彼女が話題にしたのは、「光の速さはずっと変わらない」ということだった。

光が真空中で1秒間に進む距離は、1983年に秒速2億9979万2458メートルと定義されたが、この速さは科学の進歩によって速度の計測器の精度が上がっても変化しないという。

シュレは光の速さが変わらない理由を数馬に問い、明日の朝、同じ時間に同じ場所で答えを聞かせてほしいと伝えて、立ち去った。混乱する数馬だったが、ランニング後に会うことになっていた物理学者で父親の宗士郎に尋ねてみた。すると、宗士郎は5分では話せないからと、部活終わりに再び会って教えてくれることになった。

部活後、数馬は宗士郎とともに、土手下の砂利道で自転車を使った思考実験を行った。自転車が土手を秒速10メートルで走っているとき、この自転車から秒速10メートルで石を投げるとする。このとき、数馬が自転車に乗った状態で石の速さを測ると、石は前に投げても後ろに投げても速さは変わらず秒速10メートルだ。一方、同じ条件で自転車から投げた石の速さを、今度は地面に立った状態で測るとする。前に投げた場合は、自転車と石の速さを足した秒速20メートルで石は飛び、後ろに投げた場合は、自転車から石の速さを引いた秒速0メートルとなって石は投げた位置に落ちた。

しかし、光の速さはどうだろうか。自転車からLEDライトで前後に光を出した場合、自転車に乗った状態で計測しても、自転車から降りた状態で計測しても、光の速さは変わらないという。これは1887年のアルバート・マイケルソンとエドワード・モーリーの実験によって証明されている。この発見は、「光速不変の原理」と呼ばれる。

時間は相対的なもの

翌日、土手で会ったシュレに思考実験の結果を伝えると、シュレは実験結果がおかしいという。光の速さが、地面にいる人から測って秒速2億9979万2458メートルだとすれば、1秒後に光はそこから2億9979万2458メートル離れたところにあるはずだ。しかし、自転車は1秒間で10メートル進んでいる。自転車に乗っている人から測っても光の速さが同じだとしたら、その場合は地面から測った場合よりも10メートル足された距離になっていなければおかしい。数馬はまた翌日に、学校の実験教室にその謎の答えを持ってくるように言われる。

夕方、数馬は再び宗士郎を訪ねる。宗士郎は、「時間は絶対的ではなく、相対的なもの」だと話す。宇宙でボールを投げると、重力や空気の影響を受けないため、まっすぐ同じスピードで飛ぶ。これを等速直線運動という。この等速直線運動を使って、時間が相対的なものであるということを証明できる思考実験がある。

まず、対面する相手から見るとローマ字のCをかたどった形を右手で作り、これを光時計とする。光がCの切れ目である右手の親指から垂直に発されて、もう片方の切れ目である右手の人差し指の腹にくっつくまでの時間を仮に「1ビョン」とする。

この光時計をもった2人の人物が、等速直線運動をしている2つの宇宙船に乗っている。片方の船が「1ビョン」数えながら左から右に水平に動くあいだ、もう片方の船から光時計の動きを見る。すると、動く側の船では光は手のCの間を垂直に上がっていくが、見ている側の船では動く側の船の動きに合わせて左下から右上に斜めに上がるように見える。この斜めの光の軌跡を、見ていたほうの船の「1ビョン」の長さと比べると、4ビョンほどになるとしよう。しかし、動いていたほうの船では1ビョン分の時間しか経っていない。

つまり、自分から相対的に見て、動いている相手の時間は、自分の時間よりも流れる速度が遅くなるのである。

重力

科学部
35007/gettyimages

3日目、シュレに呼び出された実験教室で、数馬はシュレをはじめとする科学部の面々に、時間が相対的であることのしくみを披露する。そこにいた科学部の先輩オッカムは、数馬に新たな課題を突き付ける。

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