人間をかんがえる

アドラーの個人心理学入門
未読
人間をかんがえる
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アドラーの個人心理学入門
未読
人間をかんがえる
出版社
河出書房新社

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定価
2,695円(税込)
出版日
2021年06月30日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

著者のアドラーは、近年では日本でも注目を集めている。アドラーの考え方を紹介したり、応用したりする書籍が幅広く読まれているが、実際にアドラー自身の著作に触れる機会は少ないのではないだろうか。ある人の主張を理解しようとするときには、解説書だけでなく、本人の著作に触れることが欠かせない。本書は、人の心の在り方や性格形成の仕組みについて、丁寧な考察をした、アドラー自身の言葉をまとめている。普遍的なテーマを扱っているので、アドラーの著作を読んだことがない人にもおすすめの一冊だ。

本書を通して描かれるのは、現代人にとっても興味の尽きないテーマである人間の心の生活だ。フロイトやユング、アドラーのような、精神分析の手法が主流だった時代とは異なり、現代の心理学は、統計的なデータの分析や認知科学の手法に基づいた、科学的な分析が主流となっている。そのため、本書にはやや時代を感じさせる記述が含まれている。しかし、それでもなお、人間の心の生活を独自の視点から描き出そうとする洞察は一読に値する。自分自身のこれまでの人生経験や、子どもの頃の記憶に当てはめてみると、思い当たる箇所が少なからずあると感じられるだろう。自分や周囲の人の心を理解しようとするときの第一歩として、本書に触れてみてはいかがだろうか。

ライター画像
大賀祐樹

著者

アルフレッド・アドラー(Alfred Adler)
1870年、オーストリアのウィーン郊外に生まれる(晩年、アメリカに移住)。精神科医、精神分析医、心理学者。最初、フロイトの研究グループに招かれ精神分析と関わるようになる。後にフロイトと一線を画し、劣等感、共同体感覚、パーソナリティ理論、心理療法の研究・実践で活躍し、アドラー心理学とよばれる独自の「個人心理学」を確立した。近年には、いわゆる自己啓発研究の先駆者としても注目されている。1937年逝去。著書に『器官劣等性の研究』、本書をはじめ、多数がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    人間の心の問題を解く鍵は、幼年時代のごく初期にある。幼年時代にその人の心のひな形、行動指針、目標が形成され、大人になっても継続される。幼年時代の記憶を訊けば、その人がどんな種類の人間か、正確なイメージを得ることができる。
  • 要点
    2
    一人ではなく社会で生きる人間は「共同体感覚」を持っている。その人がどのような環境に置かれ、周囲の人とどのような関係を築いたかによって、どのような性格が形成されるかが決まる。
  • 要点
    3
    性格は先天的なものではなく、幼年時代から世界に適応するために周囲に対処し、行動指針を形成することで得られる、後天的なものである。

要約

【必読ポイント!】 心を理解する

人間の心の問題を解く鍵

今日、私たちの多くは孤立して生きている。そのため、みなたいして人間を知らない。人間知を発展させるには、人と親密に関わらなければならないのに、家族の中でさえ、理解しあえずにいる。人間知がもっと広まれば、私たちはたがいに理解を深め、快適に共同生活を営めるようになるだろう。

人間の心の問題を解く鍵は、幼年時代のごく初期にある。心の様々な現象を、それ単体で完結したものとみなしてはならない。心の現象は、常に全体の一部だ。ある大人の振る舞いは、その人の子どものころの秘められた目標と一致する。人生の初期になじんだ「生のひな形」を抜け出すことは容易ではない。だから、幼年時代の記憶を訊けば、その人がどんな種類の人間か、正確なイメージを得ることができる。

多くの人には納得しがたいようだが、人間の生の指針は、生涯変わらない。人間は一生の間に多くの経験をするが、それによって振る舞いを変えるのではなく、自分の人生のひな形を強化する一定の教訓だけを、経験から引き出そうとする。人一人を変えるのは容易いことではない。

人間の心について知れば、義務と課題が生じる。ある人のひな形が人生にふさわしくないとわかったら、それを打ち砕き、共同生活とその幸福のためにふさわしい視点を勧めることだ。

子どものころに形成される心の動き
kohei_hara/gettyimages

心があると認められるのは、動くことのできる生物だけである。これは、運動と心の生活が関連することを示している。生物は、周囲の状況に合わせて、攻撃、防御、保全、保護のそれぞれの器官を働かせる。心とは、人間という生物の存続を担保するためのものだ。つまり、心とは孤立したものではなく、外からの刺激に反応し、環境と対立や連携をしながら、生物の生命を保障するものなのだ。

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要約公開日 2021.09.22
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