最初に紹介する法則は、ユーザビリティの専門家ヤコブ・ニールセンによって2000年に提唱された「ヤコブの法則」である。その内容は、ユーザーは他のウェブサイトでの経験の積み重ねを通じて「デザインはこうあるべき」という期待を築き上げるというものだ。ありふれた慣例に従ったデザインにすることで、ユーザーは目の前の商品に集中できる。逆に、慣例となっていないデザインはユーザーを混乱させ、離脱につながってしまう。
このような行動の背景には「メンタルモデル」という心理学の概念がある。メンタルモデルとは、「システム、特にそのふるまいについて私たち自身がどう理解しているか」という概念を意味する。ウェブサイトのようなデジタルの世界であれ、スーパーマーケットのようなリアルの世界であれ、システムに何をしたらどうなるのかというモデルを私たちは頭の中に構築している。そして、他の類似した状況でメンタルモデルを適用し、理解の助けとしている。
プロダクトにはユーザーのメンタルモデルを考慮したデザインが求められる。そのため、デザインがユーザーのメンタルモデルと合っていない場合は問題が起こる。これは「メンタルモデル不協和」と呼ばれ、使い慣れたプロダクトが突如変更されたときに生じる。2018年のSnapchatのリデザインはその最たる例だ。緩やかな反復的開発や広範囲のテストを経ずに、いきなり大規模なオーバーホールをリリースした。これにより、ユーザーが競合のInstagramへと鞍替えしてしまった。
一方、メンタルモデル不協和を上手く回避した好例が、2017年に刷新されたYouTubeの新バージョンである。ユーザーは新しいデザインを試し、徐々に慣れたりフィードバックを送ったりすることができ、旧バージョンに戻すこともできた。
ヤコブの法則から学べることは何か。それは、まずはありふれたパターンや慣例から始め、その後うまくいきそうなときだけ慣例から離れるのがよいということだ。慣例から外れる場合はデザインをユーザーテストにかけ、ユーザー理解を確かめよう。
心理学者のウィリアム・エドモンド・ヒックとレイ・ハイマンは、1952年に「ヒックの法則」を定式化した。この法則はどのようなものか。
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