精神科医が教える 病気を治す感情コントロール術

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精神科医が教える 病気を治す感情コントロール術
出版社
出版日
2021年04月20日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

病気を早く治すためには何が必要だろうか。病院に通って医者のいうことを聞き、薬を飲むといったことを思い浮かべる方もいるかもしれない。しかし、自分が病気にかかっていることを知った患者は、そもそも医者の助言を素直に聞くことすら難しい精神状態に置かれる。現実逃避し、怒りが周囲や自分に向けられ、治らない病気にしびれをきらして転院を繰り返す――。

本書における「病気が治る」の定義は、「苦痛や痛みや不安が今よりも軽減、消失し、楽になる、症状がよくなる状態」である。そしてこの定義によると、すべての病気は「治る」のだという。

病気を「治す」ために、著者は、病気と闘うことをやめるよう勧めている。闘病をやめることで、病気を受容し、次第に周囲に対して感謝ができるようになる。よい精神状態を保つことで、病気は回復へと向かうそうだ。

著者は本書で、病気になりにくい精神状態や、病気で苦しむ患者との向き合い方についても言及している。それゆえ本書が対象とする読者は、今まさに病気に苦しんでいる患者だけではない。患者の家族や同僚にも知っておいてほしいことが書かれている。

いざ重い病気に直面してしまった場合、本書で紹介されている感情マネジメント法を知らないと、だれしも病気を拒絶し、闘病状態になるはずだ。病気とうまく付き合い、健やかに生きていくために、本書を一読することをお勧めしたい。

ライター画像
香川大輔

著者

樺沢紫苑(かばさわ しおん)
精神科医、作家
1965年、札幌生まれ。
1991年、札幌医科大学医学部卒。札幌医大神経精神医学講座に入局。
大学病院、総合病院、単科精神病院など北海道内の8病院に勤務する。
2004年から米国シカゴのイリノイ大学に3年間留学。うつ病、自殺についての研究に従事。
帰国後、東京にて樺沢心理学研究所を設立。
「情報発信を通じてメンタル疾患、自殺を予防する」をビジョンとし、YouTube30万人、Facebook15万人、Twitter10万人、メールマガジン15万人など、累計60万人以上に精神医学、心理学、脳科学の知識、情報をわかりやすく発信している。
著書は、シリーズ累計80万部の大ベストセラーとなった『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)、『精神科医が教える ストレスフリー超大全』(ダイヤモンド社)など37冊。累計180万部以上。

・YouTube「精神科医・樺沢紫苑の樺チャンネル」 https://www.youtube.com/webshinmaster
・樺沢紫苑公式メルマガ http://kabasawa.biz/b/maga.html

本書の要点

  • 要点
    1
    病気を「治す」ために必要なのは、病気と闘わず、否認、受容、感謝の3ステップを踏むことだ。言い換えると、自分の感情をコントロールすることである。
  • 要点
    2
    孤独や怒りは病気を悪化させる。心を落ち着かせるためには、感情を表に出して泣いたり、睡眠をとったり、周囲に助けを求めたりすることが効果的だ。
  • 要点
    3
    病気を受容することで、病気は回復に向かっていく。病気がよくなり、感謝の言葉が出るようになると、回復に向けたラストスパートとなる。

要約

病気が治らない理由

頑張りすぎてストレスが膨れ上がっている

精神科医である著者のもとには、何年も治療しているのに病気が治らないというメッセージが多く寄せられる。そうしたメッセージから伝わってくるのは「必死さ」だ。病気に苦しみ、治すためにとにかく頑張っているのだろう。

そういう人は、もう少し肩の力を抜いてほしい。病気を治そうと頑張れば頑張るほどストレスが膨れ上がり、あなたをさらに苦しめている可能性があるからだ。

著者の考える「治る」の定義は、「苦痛や痛みや不安が今よりも軽減、消失し、楽になる、症状がよくなる状態」である。この定義によれば、すべての病気は「治る」のだ。

その方法とは、病気と闘わず、否認、受容、感謝の3ステップを踏むこと。言い換えると、自分の感情をコントロールすることである。

病気と「闘う」ことでアドレナリンが分泌されている
kazuma seki/gettyimages

闘病という言葉が示すように、「闘う」という姿勢で病気と向き合う方は少なくない。しかし、これはその人を「治る」からかえって遠ざけることになる。闘うことで、ストレスホルモンと呼ばれる「アドレナリン」が分泌されるからだ。

アドレナリンは、心拍や血圧、呼吸数の増大、骨格筋への血流増加、発汗などの反応を引き起こし、身体能力をアップさせて「闘う」状態をサポートする役割を果たす。短期間でみると「ストレスに対応するホルモン」「ストレスからの防衛ホルモン」として効果的に働くが、これが長時間続いたり、1日に何度も繰り返されたりすると、身体の機能を酷使することになる。心拍と血圧が上がるために血管が収縮し、血流が悪化し、全身の細胞に栄養が行き渡らなくなる。血液がドロドロになったり、血管の老化が加速したりもする。

アドレナリンは、「不安」「恐怖」「闘争」「怒り」「興奮」といった感情を抱いているときに分泌されるホルモンだ。病気と闘い続けると、アドレナリンがどんどん分泌され、さまざまな弊害を引き起こし、病気を悪化させることになる。

「否認」によって治療が進んでいない

事実をすぐには受け入れられず、否定してしまう心理を「否認」という。医者からがんを告知された人が「私ががんになるはずない」と言ったり、恋人から別れを切り出された人が「冗談でしょう?」と言ったりするのが「否認」である。

否認は基本的な心の防衛システムであり、すべての人に共通した正常な心の動きだ。ほとんどの場合、時間とともに現実を受け入れられるようになる。

しかし病気の場合、否認を乗り越えなければ、治療を開始することすらできない。否認が続く限り、生活習慣を変えることも、服薬したり通院したりすることもないからだ。

否認してしまう理由となるのが、不安である。人間は強い不安を感じると、ノルアドレナリンという脳内物質が分泌されて、本能的に「闘う」か「逃げる」かの判断を迫られる。病気を告知されたとき、それを認められずに別の病院に行きたくなるのも、激しい口調で医師に抗議したくなるのも、そのためである。

不安を取り除いて否認を乗り越え、安心に至るために必要なものが、「信頼」「時間」「情報」だ。「信頼」は、医者と患者の関係性の中で醸成される。病気を治すのは医者と患者の共同作業なのだから、協力して歩んでいかなければならない。

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要約公開日 2021.09.30
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