100年予測

世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図
未読
100年予測
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世界最強のインテリジェンス企業が示す未来覇権地図
未読
100年予測
出版社
早川書房
出版日
2014年06月15日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

これからの100年間は、どんな未来となるのだろうか。アメリカの権威は今後も維持されるのか、それとも中国・インドなどの新興国が覇権をとるのか。本書は大胆にも今後100年間にわたって、各国がどのような覇権争いを行うかを予測している。単なるSFではないか、と思われる人もいるだろうが、本書は地政学および歴史を主としたアプローチで予測を行っていく。

もしあなたがある企業に勤めており、今後2020年頃まで中国への投資を強化していくべきか否かの意思決定を迫られているとしよう。その判断を下すためには今後の中国がどのように変化していくのか、その変化に合わせてどのようなリスクマネジメントを行うべきか、ということが当然の論点となってくるだろう。

本書では、2080年代までの予測を行っているが、本要約においては2020年~2040年までの世界の動きを見ていきたい。ここで主役となるのは、中国、ロシア、日本、アメリカの関係だ。長期停滞に陥っている日本が今後どのようなシナリオで、衰退または繁栄していくのか、興味はないだろうか。中国は今後も成長し続けるのだろうか。ロシアとアメリカが再び冷戦構造になることはないのだろうか。本書を読むことで各国間の歴史やパワーバランスを感じ取ることができるはずだ。

グローバルに活躍したいビジネスパーソンには必読書であると言えよう。

著者

ジョージ・フリードマン
1949年生まれ。ニューヨーク市立大学卒業後、コーネル大学で政治学の博士号を取得する。ルイジアナ州立大学地政学研究センター所長などを経て、1996年にインテリジェンス企業ストラトフォーを創設。政治、経済、安全保障にかかわる独自の情報を提供し、「影のCIA」の異名を持つ企業をCEOとして率いている。その顧客は世界中の一流企業、アメリカ政府機関や外国政府と多岐にわたる。テキサス州オースティン在住。

本書の要点

  • 要点
    1
    二〇二〇年、中国の景気は悪化し、そのひずみによって伝統的な地方の境界線に沿って分裂した結果、中央政府が弱体化して力を失う。
  • 要点
    2
    人口減少に直面した日本は移民に変わる手段として、中国現地に進出し、中国人労働力を活用するだろう。二〇二〇年頃には、中国の沿岸地域は日本と協力関係を強化し、中央政府の権力に対抗するだろう。
  • 要点
    3
    資源大国として経済基盤を築いたロシアは勢力を拡大するが、バルト諸国への進出により再びアメリカと冷戦構造となり、二〇二〇年頃敗北するだろう。
  • 要点
    4
    中国とロシアの衰退によって勢力を拡大した日本とトルコは、次第にアメリカとの対立を始めるだろう。

要約

【必読ポイント!】 2020年代

Goodshoot/Goodshoot/Thinkstock
中国

未来に関するいかなる議論も、まず中国を論じないことには始まらない。中国はここ三〇年で飛躍的な経済成長を遂げ、いまやまぎれもない主要国である。だが、成長が三〇年間持続したからといって、この先もずっと成長が続くということにはならない。中国の経済基盤は見かけほど強固ではない。

中国にとっての問題は、政治的な問題である。中国を一つに結びつけているものは、イデオロギーではなく、金だ。景気が悪化して資金の流入が止まれば、銀行システムが収縮するだけでなく、中国社会の骨組み全体が揺らぐだろう。中国では、忠誠は金で買うか、強制するものだ。貧困が広く存在し失業が蔓延する国に、景気悪化の圧力が加われば、政情不安が広がる。

深刻な経済危機が現実のものとなった場合、中央政府は共産主義に代わるイデオロギーを見つけなくてはならない。人民が犠牲を払うのは、信奉する対象があればこそだ。そして中国人ならば、共産主義を信奉できなくても、中国国家なら信奉できるはずだ。中国政府は国家主義と、国家主義とは切っても切り離せない外国嫌悪を煽ることで、分裂を食い止めようとするだろう。中国では歴史的に外国人に対する嫌悪感が強い。

中国への経済投資を守ろうとする外国との間に、経済問題をめぐって大きな対立が生じているこの頃は、国家主義に訴えやすい環境にあるはずだ。「偉大なる国、中国」という発想が、失われた共産主義イデオロギーにとって代わるだろう。これが起こる可能性が最も高いのは2010年代だ。対立の相手国としてうってつけなのは、日本とアメリカのいずれか、または両方である。

そんなわけで中国の歩む道筋として、次の三つが考えられる。第一が、いつまでも驚異的なペースで成長し続けるというものだ。だが、かつてこれを成し得た国はないし、中国が例外になるとも思えない。第二が、中国の再集権化である。強力な中央政府が秩序を打ち立て、地方の裁量を狭めることによってこれを抑え込む。このシナリオのほうが実現する可能性が高いが、中央政府の出先機関の役人が集権化と対立する利害を持つため、成功させるのは難しい。第三は、景気悪化がもたらすひずみにより、中国が伝統的な地方の境界線に沿って分裂するうちに、中央政府が弱体化して力を失うというものだ。これは中国ではいつの時代にも実現性の高いシナリオであり、富裕階級と外国資本に利益をもたらすシナリオでもある。これが実現すれば、中国は毛沢東時代以前と同じ状況に陥る。地域間の競争や、紛争さえ起きるなか、中央政府は必死に支配を維持しようとするだろう。中国経済がいつか必ず調整局面に入ること、これが深刻な緊張をもたらすことを踏まえれば、この第三のシナリオが中国の実情と歴史に最も即していると言える。

iStockphoto/Thinkstock
日本

世界の先進工業諸国は2010年代に人口が減少し始め、人件費の高騰に直面する。これらの国の中には、固定化した価値観のせいで、移民の受け入れが困難な国がある。中でも日本は移民に対する拒否反応が強い。だが日本はそれでも統制のとれた、高齢の労働者を補助する負担に耐え得る労働力の供給源を探さなくてはならない。だが、労働者はほかに選択肢がある場合、まず日本は選ばない。日本は帰化を希望する外国人に非常に冷たいからだ。

しかし、中国は大量の割安な労働力の供給源である。中国人が日本に来ないなら、日本がかつてのように中国に出向くだろう。日本企業の中国拠点が現地の中国人労働力を活用することが、移民に代わる手段になる。またこの手段を選ぶのは日本だけではない。

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要約公開日 2013.10.31
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