「感情」の地政学
恐怖・屈辱・希望はいかにして世界を創り変えるか

未 読
「感情」の地政学
ジャンル
著者
ドミニク・モイジ 櫻井祐子(訳)
出版社
早川書房
定価
1,700円 (税抜)
出版日
2010年03月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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「感情」の地政学
恐怖・屈辱・希望はいかにして世界を創り変えるか
著者
ドミニク・モイジ 櫻井祐子(訳)
未 読
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ジャンル
出版社
早川書房
定価
1,700円 (税抜)
出版日
2010年03月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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レビュー

人類の繁栄は感情によりどのように変化するのだろうか。本書では、希望、屈辱、恐れという感情がこの多極化した世界を支配しており、それは地域の発展する機運によって大きな偏差があると説いている。とりわけ、過剰な恐れ、過剰な屈辱感、不十分な希望の組み合わせが最も悲惨な世界を招き、世界をより良く導く挑戦のために必要となるのは、希望である。

人はそれぞれ様々な感情を内包しているように、国家あるいは地域が様々な感情を持ちながらも、あたかも一つの人格を持っているように表現していることが、本書を興味深いものとしている。感情を個人というミクロで見るのではなく、国家・地域と言うマクロで見ているのである。マクロで捉えるほど、その形成過程は長期に渡っており、変革のためには強い意思と世界を繋ぐ政治力が求められるのである。

政治や経済が合理性で動くと考えるのであれば、何故にこれほど世界は不合理なのか説明がつかない。平和と安定による発展を求める人が多数であるにも関わらず、憎悪の連鎖により国家・地域間の争いには終わりがないように感じられる。世界を血の通った人間の集合体として見る視点を持てば、筆者の深い洞察に心を打たれるだろう。本書は、政治家を志す方は無論のこと、深い洞察をもって世界の動向を理解・予見したい方、一般教養を身につけたい方の全てに一読を勧めたい良書である。

大賀 康史

著者

ヨーロッパを代表する国際政治学者の一人。1946年パリ近郊ヌイイ生まれ。フランスを代表する国際問題のシンクタンクである、フランス国際関係研究所(IFRI)共同創設者・上席顧問。現在ハーヴァード大学政治学部客員教授。他に欧州大学院大学教授、およびパリ政治学院教授も務める。また国際問題の論客として、フォーリン・アフェアーズ誌、フィナンシャル・タイムズ紙、ニューヨーク・タイムズ紙など幅広いメディアで言論活動を展開している。

本書の要点

  • 要点
    1
    恐れ、屈辱、希望は人間が生まれながらに持っている重要な要素である。過剰な恐れ、過剰な屈辱、不十分な希望の組み合わせは、社会に最大の不安定と緊張をもたらす。
  • 要点
    2
    希望に満ちたアジア、屈辱に満ちたアラブ・イスラム世界、恐れに満ちた西洋、という感情を持つ現在の世界は、今後の人類の繁栄を不確かなものとしている。
  • 要点
    3
    われわれは歴史的過程の悲劇性を深く認識した上で、世界を改善しなければならないし、改善することは実際に可能だという確信を持つ。その突きつけられた挑戦に立ち向かうために、世界に必要なのは希望である。

要約

グローバリゼーション、アイデンティティ、そして感情

iStock/Thinkstock
「イデオロギーの世紀」から「アイデンティティの世紀」へ

グローバリゼーションの時代にあって、われわれの暮らすこの複雑な世界は、感情を抜きにしては理解できない。メディアによって拡大された感情は、地政学にも影響を及ぼすとともに、世界をかつてないほど感情的にもしているのだ。

もし二〇世紀が「アメリカの世紀」であるとともに「イデオロギーの世紀」だったというのなら、二一世紀が「アジアの世紀」と「アイデンティティの世紀」になるのは明らかなように思われる。

二〇世紀のイデオロギー的風潮の中で、世界は社会主義、ファシズム、資本主義など、相いれないさまざまな政治モデルによって定義されていた。今日の世界では、イデオロギーはアイデンティティをめぐる闘争に取って代わられた。あらゆるモノや人が繋がる時代には、個性を主張することが何より重要になる。

個性あるいは自己の本質に対する認識には、感情が絡んでくる。恐れ、屈辱、希望は人間が生まれながらに持っている重要な要素である。過剰な恐れ、過剰な屈辱、不十分な希望の組み合わせは、社会に最大の不安定と緊張をもたらす、危険な組み合わせなのだ。

感情がものを言う

感情は、社会が自らに対して持っている自信の度合いを映し出す。この自信の度合いこそが、危機からの回復力、つまり課題に立ち向かい、状況の変化に適応する能力を決定する。例えば中国やインドが、ヨーロッパに比べて現在の経済危機から回復する能力が高いと考えられるのは、感情が国民の集団心理に重大な影響をおよぼすからなのだ。

本書の主張の中心をなしているのは、「感情がものを言う」という事実だ。感情は人間の態度や、異文化間の関係、国家の行動に影響をおよぼす。政治指導者も、歴史学の研究者も、意識の高い一般市民も、感情を無視してはいけない。

【必読ポイント!】 希望の文化 ~アジア世界~

iStock/Thinkstock
アジアの希望

中国とインドの二大経済大国は、それぞれ二九年間と一八年間にわたって、年率一〇パーセントほどのペースで経済成長を続けている。インドのジャーナリストで政治家のジャイラム・ラメシュは、アジアの急成長中の二大人口大国を簡単に呼ぶ方法として、「シンディア」という造語を生み出した。シンディアとは、自らを世界に開放し、異文化を通して自らの文化的本質を検証するほど揺るぎない自信を持つ、二つの全く異なる文明をいう。

中国はいつの時代も世界で最も人口の多い国だった。そのため中国の指導者は、社会や経済が混乱に陥るという恐怖感につねに苛まれ、集団の論理を優先する体制を作り上げた。自由の欠如と独立した司法制度の不在は、中国が長期的経済成長と生態系に配慮した持続可能な開発を推進する上で、深刻な妨げになる。だが圧倒的大多数の中国人が望んでいるのは、物質的進歩、まともな住居環境、海外旅行の自由、そして政治的安定なのだ。

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グローバル 政治・経済
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早川書房
定価
1,700円 (税抜)
出版日
2010年03月10日
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