問いかけの作法

チームの魅力と才能を引き出す技術
未読
問いかけの作法
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チームの魅力と才能を引き出す技術
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問いかけの作法
出版社
ディスカヴァー・トゥエンティワン

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定価
1,980円(税込)
出版日
2021年12月23日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.5
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おすすめポイント

「さあ、この企画に何か意見はありませんか? どんどんアイデアを出してください」

これは、とある組織におけるチームミーティングの一幕である。ファシリテーターはメンバーに活発な意見を出してほしいため、直接的な要求を口にする。しかし、参加者からは「特にありません。賛成です」「すみません。次までに考えておきます」などと、覇気のない返答があるばかり。期待していた画期的な提案はおろか、自分の意見さえ述べないありさまだ。このような「お通夜ミーティング」は、多くのビジネスパーソンが一度は経験したことがあるのではないだろうか。

本書の提唱する「問いかけの作法」を身につければ、上記のような会議を打破することはもちろん、眠っていたチームのポテンシャルを引き出す好循環を生み出すことができるという。周囲に投げかける「問いかけ」の質を変えることによってチームの持つ「とらわれ」を疑い、メンバーの持つ個性、すなわち「こだわり」を発揮することで、チームの魅力と才能を引き出せるのだ。

「問いかけ」は、個人のセンスに依存すると思われるかもしれない。だが、一定のルールとメカニズムによって成り立っている、誰にでも習得可能なスキルである。

日頃多くの会議に参加するビジネスパーソンはもちろん、さまざまなコミュニティに属する人も、ぜひ本書の内容をチェックし、豊かなチームをつくっていただきたい。

著者

安斎勇樹(あんざいゆうき)
株式会社MIMIGURI代表取締役Co-CEO。東京大学大学院情報学環特任助教。ファシリテーションを総合的に学ぶためのウェブメディア「CULTIBASE」編集長。1985年生まれ。東京都出身。東京大学工学部卒業、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(学際情報学)。研究と実践を架橋させながら、人と組織の創造性を高めるファシリテーションの方法論について研究している。主な著書に『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』(共著・学芸出版社)『リサーチ・ドリブン・イノベーション 「問い」を起点にアイデアを探究する』(共著・翔泳社)『ワークショップデザイン論-創ることで学ぶ』(共著・慶応義塾大学出版会)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    日本が磨き上げてきた「ファクトリー型」の組織形態は、その副作用として悪しき4つの現代病を生み出した。
  • 要点
    2
    本書の提唱する問いかけの作法は、チームにおいて「こだわり」を育み、「とらわれ」を疑うという2つを実現して、現代病を根治する。
  • 要点
    3
    チームのポテンシャルを最大限に発揮するための問いかけとは、①チームや相手を分析・観察して状況を「見立てる」、②望ましい反応を促進するための質問を「組み立てる」、③相手の注意を引き印象を操作する「投げかける」の3つの行為のサイクルによって成立する。

要約

チームの問題はなぜ起きるのか

ファクトリー型からワークショップ型へ

現代では、多くのチームにおいてお互いの意見が抑圧され、ポテンシャルが阻害されている事例は枚挙に暇がない。その問題の要因は、トップダウン式の「ファクトリー型」の組織形態にある。高度経済成長期の日本では、経営層が定めた問題に対して、現場メンバーが解決策を磨くことで売上を高め続けることができた。それゆえ、作業工程を効率的に分担し段階的に進めていくファクトリー型がフィットした。

しかし、現代のような変化が激しく未来の見通しが持てない時代においては、より柔軟な「ワークショップ型」への切り替えが求められる。固定観念に囚われず、ファシリテーションのもと、メンバー自ら試行錯誤しながら「問題」と「解決策」を探り、理念を追究する。目標をミスなく達成するファクトリー型のアプローチが無効になったわけではないが、ファクトリー型に偏重した組織ではうまくいかない。

ファクトリー型のチームが陥る4つの現代病
aa22/gettyimages

日本企業の多くはこれまでファクトリー型の習慣に磨きをかけてきた。その順応過程で発生した副作用が、ワークショップ型への移行を阻害している。以下に示す「4つの現代病」だ。

1.判断の自動化による、認識の固定化

過去の経験が固定観念となり、新たな発想が阻害されてしまう。「当たり前」に疑いをかける「とらわれを問い直す」ことが大事だ。

2.部分的な分業による、関係性の固定化

互いが互いに能力や価値観を決めつけ、コミュニケーションを諦めてしまう。多様な「こだわり」を理解し昇華させる「対話」が必要だ。

3.逸脱の抑止による、衝動の枯渇

集団から外れる行動にブレーキをかけるあまり、チームメンバーの主体的でこだわりのある発想まで阻害されてしまう。

4.手段への没頭による、目的の形骸化

目的が見えなくなっても手段に没頭できるため、行動への意義が感じられない。目的を発見し続けるチームを目指さなくてはならない。

「チームのポテンシャルが発揮されている状態」とは、チームの「こだわり」を見つけて育てること、「とらわれ」を問い直すことの2つが、互いに循環しながら実現されている状態だ。メンバー一人ひとりの「こだわり」は「創造性の源泉」となり、チームにとって「意味のある目的」に育つ。一方で、その「こだわり」や理念、目的が「とらわれ」になっていないかも疑い続ける。本書の「問いかけ」の技術は、そのヒントになるはずだ。

問いかけのメカニズムとルール

未知数を照らす「ライト」

「問いかけ」とは、「相手に質問を投げかけ、反応を促進すること」だ。たとえば「昨晩、何を食べましたか?」ときけば、相手は「記憶を思い出す」という反応を示す。「1年前の今夜、何を食べていましたか?」ときけば、「手帳やスマホのスケジュールを確認する」、あるいは「お手上げ」という反応を示すだろう。投げかける「質問」の仕方で、記憶の喚起、知識の引き出し、価値観の表出などを促せることが、「問いかけ」の奥深さに関わるメカニズムだ。問いかけには、チームにおける「未知数」を照らす「スポットライト」のような機能がある。会社のトップが考えていること、あのメンバーが得意なことなど、チームには「明らかになっていないこと」が無数に存在する。チームのポテンシャルを引き出す「反応」を狙い、どの未知数にどうライトを当てて質問するかが、問いかけの本質だ。そして良い問いかけとは、「見立てる」「組み立てる」「投げかける」の3つの行為のサイクルによって成立する。その詳細について以下、紹介しよう。

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要約公開日 2022.01.06
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