現代では、多くのチームにおいてお互いの意見が抑圧され、ポテンシャルが阻害されている事例は枚挙に暇がない。その問題の要因は、トップダウン式の「ファクトリー型」の組織形態にある。高度経済成長期の日本では、経営層が定めた問題に対して、現場メンバーが解決策を磨くことで売上を高め続けることができた。それゆえ、作業工程を効率的に分担し段階的に進めていくファクトリー型がフィットした。
しかし、現代のような変化が激しく未来の見通しが持てない時代においては、より柔軟な「ワークショップ型」への切り替えが求められる。固定観念に囚われず、ファシリテーションのもと、メンバー自ら試行錯誤しながら「問題」と「解決策」を探り、理念を追究する。目標をミスなく達成するファクトリー型のアプローチが無効になったわけではないが、ファクトリー型に偏重した組織ではうまくいかない。
日本企業の多くはこれまでファクトリー型の習慣に磨きをかけてきた。その順応過程で発生した副作用が、ワークショップ型への移行を阻害している。以下に示す「4つの現代病」だ。
1.判断の自動化による、認識の固定化
過去の経験が固定観念となり、新たな発想が阻害されてしまう。「当たり前」に疑いをかける「とらわれを問い直す」ことが大事だ。
2.部分的な分業による、関係性の固定化
互いが互いに能力や価値観を決めつけ、コミュニケーションを諦めてしまう。多様な「こだわり」を理解し昇華させる「対話」が必要だ。
3.逸脱の抑止による、衝動の枯渇
集団から外れる行動にブレーキをかけるあまり、チームメンバーの主体的でこだわりのある発想まで阻害されてしまう。
4.手段への没頭による、目的の形骸化
目的が見えなくなっても手段に没頭できるため、行動への意義が感じられない。目的を発見し続けるチームを目指さなくてはならない。
「チームのポテンシャルが発揮されている状態」とは、チームの「こだわり」を見つけて育てること、「とらわれ」を問い直すことの2つが、互いに循環しながら実現されている状態だ。メンバー一人ひとりの「こだわり」は「創造性の源泉」となり、チームにとって「意味のある目的」に育つ。一方で、その「こだわり」や理念、目的が「とらわれ」になっていないかも疑い続ける。本書の「問いかけ」の技術は、そのヒントになるはずだ。
「問いかけ」とは、「相手に質問を投げかけ、反応を促進すること」だ。たとえば「昨晩、何を食べましたか?」ときけば、相手は「記憶を思い出す」という反応を示す。「1年前の今夜、何を食べていましたか?」ときけば、「手帳やスマホのスケジュールを確認する」、あるいは「お手上げ」という反応を示すだろう。投げかける「質問」の仕方で、記憶の喚起、知識の引き出し、価値観の表出などを促せることが、「問いかけ」の奥深さに関わるメカニズムだ。問いかけには、チームにおける「未知数」を照らす「スポットライト」のような機能がある。会社のトップが考えていること、あのメンバーが得意なことなど、チームには「明らかになっていないこと」が無数に存在する。チームのポテンシャルを引き出す「反応」を狙い、どの未知数にどうライトを当てて質問するかが、問いかけの本質だ。そして良い問いかけとは、「見立てる」「組み立てる」「投げかける」の3つの行為のサイクルによって成立する。その詳細について以下、紹介しよう。
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