本書の要点

  • 「怒ること」は愚かなことだ。「自分が正しい」という思考を捨て、自分の不完全さを認めれば、怒ることはなくなる。

  • 怒る人ほど頭が悪いという真理がある。怒りは自分を破壊し、他人を傷つける。怒った状態の人間は、智慧も客観性もない動物以下の存在である。

  • 怒ってしまった場合は「これは怒りの感情だ」と、自分の内なる感情を観察しよう。怒りがすぐに消えるはずだ。

1 / 4

【必読ポイント!】 「怒り」とは何?

「怒ること」は愚かなこと

我々は日頃、怒ることを肯定する言葉を耳にする。怒っている人を目にする機会も、決して少なくはないはずだ。あなたが日常的に誰かの怒りに触れているのは、怒りについて何も知らない人ばかりだからだ。本来、「怒り」という言葉は気軽に口にできるものではない。「私は怒りました」と言うことは、「私はバカです」と触れ回っているのと大差ないからだ。著者はよく「怒りたくないのに怒ってしまう。どうしたらよいでしょうか」といった相談を受ける。その答えはシンプルで、「怒らないこと」ただそれだけだ。それ以外に答えはない。そう聞くと多くの人は「それができないから聞いているのだ」とムッとする。そうした人は心の中で「私は怒りたい放題、思う存分、勝手に怒ります。でも、怒ってはいけないから、何かいい方法を教えてください」と思っているのだろう。そしてその矛盾した気持ちに気づいていない。怒らないようになるには、まず「私は怒りたいのだ。ロクなものではないのだ」と認めること。問題を解決するために、問題の理解から始めよう。

人間は「怒り」と「愛情」で生きている

Prostock-Studio/gettyimages

「怒り」とは、愛情と同じく心にサッと現れるひとつの感情である。人間は、家族や好きな人を見ると心の中にすぐ愛情が生まれる。怒りも愛情と同じように心の中に一瞬で芽生える感情であり、簡単にいうと、人間は「愛情」と「怒り」、これら2種類の感情で生きているといえる。お釈迦さまの言葉を忠実に伝える古代インド語「パーリ語」には、怒りを意味する単語が多く存在する。その中でも一般的なものはdosa(ドーサ)だ。dosaは「穢れる」「濁る」という意味を持つ。人間は、心にdosaが生まれると、その逆の感情、piti(ピーティ)という喜びの感情を確実に失う。心に怒りが生まれると同時に、喜びが消えてしまうのだ。だから、じつは怒りはわかりやすいものである。自分が今怒っているかどうかわからない場合は、「今、私は楽しい?」「今、喜びを感じている?」と自問自答してみるといい。楽しくないと感じるなら、心に怒りの感情がひそんでいるということだ。

「暗い感情」(dosa)から「怒り」(vera)へ

感情には「どんどん強くなる」という性質がある。そして強くなった感情は違った働きをする。わかりやすい例を出そう。我々のからだには電気が流れていて、それは小さな豆電球を明るくすることもできないくらい少量だ。しかしその電気も、たくさん集まれば大きなエネルギーとなる。怒りもこれと同様で、ネガティブな気持ちが非常に小さいものでも、それが溜まっていくと、別の働きをする。自分が爆発してしまい、他人まで傷つけてしまうかもしれない。拳を握ったり、筋肉が震えたりするほどの「強い怒り」を、パーリ語ではvera(ヴェーラ)という。dosaがあまりにも強烈になると、veraとなり、じっとしていられなくなる。さらに強くなると、行動を抑えられなくなり、いろいろなものを破壊していく。まっ先に破壊するのは自分だ。自分を破壊したあとに、他人も破壊していく。破壊は怒りから生まれるのだ。創造の源泉は愛情で、創造したものを破壊するのが怒りである。世の中には、愛情と怒りというふたつのエネルギーの働きがあるといえる。

怒りは「自分が正しい」という考えから生まれる

kuppa_rock/gettyimages

怒らないほうがよいとわかっているのに、我々はなぜ怒るのだろう。それは、我々が常に「私は正しく、相手は間違っている」と信じているからだ。しかしその思考は間違っていて、一刻も早く捨てた方がよい。人間が完全であるはずなどない。物事を正しく判断できる知識人は、自分で意見を述べながらも「今はこう言っているが、それでも隙はある」と理解しているのだ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2130/3687文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2022.02.13
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

なぜかうまくいく人の「秘密の習慣」(ハンディ版)
なぜかうまくいく人の「秘密の習慣」(ハンディ版)
佐藤伝
悩まない生き方
悩まない生き方
矢作直樹
「本当の自分」がわかる心理学
「本当の自分」がわかる心理学
繁田香織(訳)シュテファニー・シュタール
要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑
要領がよくないと思い込んでいる人のための仕事術図鑑
F太小鳥遊
世界最高のコーチ
世界最高のコーチ
ピョートル・フェリクス・グジバチ
一瞬で心をつかみ意見を通す対話力
一瞬で心をつかみ意見を通す対話力
ひきたよしあき
大人の雑談力
大人の雑談力
桐生稔(監修)
幸せのメカニズム
幸せのメカニズム
前野隆司

同じカテゴリーの要約

壁打ちは最強の思考術である
壁打ちは最強の思考術である
伊藤羊一
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
橘玲樺山美夏
とりあえずやってみる技術
とりあえずやってみる技術
堀田秀吾
無料
肩書がなくても選ばれる人になる
肩書がなくても選ばれる人になる
有川真由美
子どもが本当に思っていること
子どもが本当に思っていること
精神科医さわ
忘我思考
忘我思考
伊藤東凌
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
ハーバード、スタンフォード、オックスフォード… 科学的に証明された すごい習慣大百科
堀田秀吾
ハーバードの心理学講義
ハーバードの心理学講義
ブライアン・R・リトル児島修(訳)
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
なぜあの人は同じミスを何度もするのか
榎本博明
1つの習慣
1つの習慣
横山直宏