世界最高のコーチ

「個人の成長」を「チームの成果」に変えるたった2つのマネジメントスキル
未読
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「個人の成長」を「チームの成果」に変えるたった2つのマネジメントスキル
未読
世界最高のコーチ
出版社
朝日新聞出版

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出版日
2021年12月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「もう嫌だ」そう口にする人がいたら、コーチは問いかける。「何が嫌なんですか?」「何が欲しかったんですか?」「なぜそれが欲しかったんですか?」「なぜそれが大切なんですか?」

コーチというとスポーツを思い浮かべやすいが、本書ではビジネスの世界のコーチを指している。ビジネスにもスポーツのような目標があり、マネジャーには個人の成長とチームの成果が期待される。

仕事で上司から「あなたは何が欲しいのか?」と直接的にきかれたことはあるだろうか。そのストレートな問いかけに対して「私は◯◯が欲しい」と素直に答えられたら、余計な誤解や言葉にできないストレスは随分と減るかもしれない。

著者はGoogle で人材開発に携わり、世界トップレベルのハイパフォーマーたちをもコーチングしてきた。2000年の来日以来、多くの日本人と日系企業に関わってきたこともあり、日本の組織文化に馴染むアドバイスをしてくれる。本書を読んでいるだけで、著者から「人に優しく、結果に厳しい」コーチングを受けているような気分になる。

日本には本音を口にしないハイコンテクストな忖度文化があるが、最近は1on1を導入する企業も増え、考えを言葉にして伝え合う時間を持てるようになってきた。マネジャーがコーチとしてメンバーとより密接に関わりやすい素地は整ってきている。マネジャーもそうでない人も本書を手にとり、よきコーチとよきメンバーの関係が増えていくことを願っている。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

ピョートル・フェリクス・グジバチ Piotr Feliks Grzywacz
プロノイア・グループ株式会社代表取締役、株式会社TimeLeap取締役、GA Technologies社外取締役。連続起業家、投資家、経営コンサルタント、執筆者。ポーランド出身。2000年に来日し、ベルリッツ、モルガン・スタンレーを経て、2011年、Googleに入社。
アジア・パシフィック地域におけるピープル・ディベロップメント(人材開発)に携わったのち、2014年からはグローバル・ラーニング・ストラテジー(グローバル人材の育成戦略)の作成に携わり、人材育成と組織開発、リーダーシップ開発の分野で活躍。2015年に独立し、未来創造企業のプロノイア・グループを設立。2016年にHRテクノロジー企業モティファイを共同創立し、2020年にエグジット。2019年に起業家教育事業のTimeLeapを共同創立。著書に、『世界最高のチーム』(朝日新聞出版)、『0秒リーダーシップ』(すばる舎)、『世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか』『Google流 疲れない働き方』(共にSBクリエイティブ)、『ニューエリート』(大和書房)、『日本人の知らない会議の鉄則』(ダイヤモンド社)、『プレイ・ワーク』(PHP研究所)、『パラダイムシフト』(かんき出版)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    コーチがすべきことは「問いかけ」と「フィードバック」である。
  • 要点
    2
    無条件の肯定的関心をもった上で問いかけし、信頼関係を築く。コーチングには、認知バイアスを解除して物事の適切な理解を促す効果もある。
  • 要点
    3
    相手を尊重した即時フィードバックを積み重ねると、変化に強い柔軟性のあるチームになる。マネジャーは、「どうすれば相手が受け入れてくるのか」を考えることが肝となる。
  • 要点
    4
    ハイコンテクストな文化に惑わされず、心理的安全性の高い環境を作る。目標とモチベーション要素を明確にし、チームをハイパフォーマー集団にしていこう。

要約

【必読ポイント!】 メンバーが成長する「コーチング」

創造的な会話でメンバーが変わる

「よきマネジャーは、よきコーチである」。Googleで人材開発に携わった著者が本書で伝えたいメッセージだ。ここでのコーチは、「チームのメンバー一人ひとりの目標達成をサポートし、成長を促す存在」を指す。その役割を通じて、会社全体にいい影響をもたらしていくことも、コーチングの目的である。

コーチングは、それを受ける人がコーチのサポートを積極的に受け入れ、サポートを自ら求めて変わることができる、「コーチャブル」な状態であるのが理想だ。そのためにも、コーチは常に仕事の本質を言語化し、メンバーが最高のパフォーマンスを出せるように「プロセス」をサポートし続けなくてはならない。

そこでコーチがやるべきことは、「問いかけ」と「フィードバック」だ。その二つのスキルを組み合わせ、メンバーの成長を支えていく。その役割を果たすために重要なのは、お互いの理解を深め合うことで行動の変化を作り出していく「創造的な会話(対話)」だ。「問いかけ」は対話を促し、相手の思考レベルを底上げする。それと同時に「フィードバック」を行うことで、「評価や改善点などを伝え、相手の成長を促す」。

人に好奇心を持って、集中する
insta_photos/gettyimages

問いかけとフィードバックを駆使するコーチングは、自分の経験を押し付けるのではなく、相手の気づきを促したり、考えを整理する手助けをしたりする。そうしてメンバーが「自分で答えを見つける」ことを大事にするのだ。

メンバー自身が頭を整理できるよう、決めつけないで対話を始めることが重要となる。うまくパフォーマンスが出せていない人がいるなら、基準に達していないという前提から入るのではなく、何がボトルネックになっているかの現状認識の確認から始める。

コーチングの基本は「人に優しく、結果に厳しく」だ。返答に対して「それ本当?」といい意味で疑い、あれこれ対話をする。好奇心を持って相手に意識を集中することで、メンバーの言葉の裏にある意図や深層心理まで探っていく。

成長思考を育む

「本人も気づいていない何かが眠っている」ということを前提にして相手の真意を探る。そのためには言葉づかいに気をつけながらも、できるだけ率直に話したほうがよい。

メンバーが怒ったときは、その人の価値観を知るチャンスだ。「あなたはこれを大切にしているんじゃないの?」と、本人にとっての大事な気づきが得られると、信頼感も増し、「共に結果を出していく仲間」になっていける。

「自分にはこういう面もあったんだ」という気づきは、「人間は変われる」というグロース・マインドセット(成長思考)のスタートになる。そうした気づきの積み重ねがコーチャブルな態度を育み、さらなる成長につながるのだ。

思いやりと気づきを与える「問いかけ」

問いかけの準備

創造的な対話は「問いかけ」から始まる。効果的に用いることで相手の考えるレベルを引き上げられる。

問いかけの準備として、相手の視点を知ることは欠かせない。相手の話に耳を傾け、「ニーズや問題、不安に思いを巡らし、相手の現状を知ろうと努める」。

相手の話を聞いて返答するまでの間には、「解釈」と「評価」というプロセスがある。これを著者は「対話(創造的な会話)」と呼ぶ。話し手が言おうとしていることに対してすぐに自分の意見を返すのではなく、聞いたことを一つひとつ自分の言葉にして相手に確かめながら、相手に対する理解を深める作業が「対話」なのだ。

無条件の肯定的関心からラポールへ
ferrantraite/gettyimages

効果的にコーチングを行うには、相手と良好な関係、「ラポール(共感に基づく信頼関係)」を築くことが大切だ。

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要約公開日 2022.02.08
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