だから僕たちは、組織を変えていける

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出版社
クロスメディア・パブリッシング

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出版日
2021年12月01日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

情報革命によって私たちの社会は工業社会から知識社会へとシフトした。しかし、はたして企業などの組織は知識社会という新しいパラダイムに適応したものになっているだろうか。

例えば数値目標のような計画をとりあげる。著者のいう知識社会にふさわしい組織像の1つ「学習する組織」では、計画は「実行されるべきもの」ではなく「絶え間ない環境変化を知覚する、学習のためのアンテナ」を捉え直すことだという。「予算の達成」よりも「予算との差異からの学び」に注目すべきだというのだ。もしあなたの組織が依然として「予算必達」を掲げ、実質的に数字にばかり振り回されているとすれば、新しいパラダイムに移行できていないといえる。

では新しいパラダイムに応じて組織を変革するためにはどうすればいいのか? それが本書のテーマであり、「たったひとり」でも変革の一歩を踏み出せるというのが著者の主張である。幹となるのは「関係の質」から始まる「成功循環モデル」だ。本書では、このモデルを土台にさまざまな組織開発の理論やメソッドが、実践者に寄り添った構成と図解で紹介されていく。そこには、志ある人にひとつでも多くの武器を与えたいという著者の熱量が感じられる。

日本企業の多くでは、PDCAやKPIに偏った組織運営が幅を利かせている。この慣性にあらがい、組織の原理を「統制」から「自走」へと変えていくのは容易ではないだろう。それでも本書を読めば、希望を見出し、理想の組織・チームづくりへの一歩を踏み出せるはずだ。

ライター画像
しいたに

著者

斉藤徹(さいとう とおる)
起業家、経営学者。ビジネス・ブレークスルー大学教授。株式会社hint代表。株式会社ループス・コミュニケーションズ代表。1985年、日本IBM入社。1991年に独立しフレックスファームを創業。2005年にループス・コミュニケーションズを創業。ソーシャルシフト提唱者として、知識社会における組織改革を企業に提言する。2016年から学習院大学経済学部経営学科の特別客員教授に就任。起業家、経営者、教育者、研究者という多様な経歴を活かして、2020年からはビジネス・ブレークスルー大学教授として教鞭を執る。2018年に開講した社会人向けオンラインスクール「hintゼミ」には、大手企業社員から経営者、個人にいたるまで、多様な受講者が在籍し、期を増すごとに同志の輪が広がっている。企業向けの講演実績は数百社におよび、組織論、起業論に関する著書も多い。主な著書は『業界破壊企業』(光文社)、『再起動(リブート)』(ダイヤモンド社)、『BEソーシャル! 』『ソーシャルシフト』(日本経済新聞出版社)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    知識社会の人間的でクリエイティブな組織をつくるための変革は、関係の質→思考の質→行動の質→結果の質→関係の質の「成功循環モデル」が基本になる。ポイントは関係の質からスタートすることだ。
  • 要点
    2
    「関係の質」を高めるためのベースが「心理的安全性」である。そして、組織のなかでメンバーが自然体の自分、素の自分をとりもどし、「ホールネス」を発揮することが重要となる。
  • 要点
    3
    組織変革の核心は、自らが起点となり、仲間を増やしていくことだ。

要約

時代と組織のパラダイムシフト

3つのパラダイムシフト

「農業革命」「産業革命」に続く歴史上の大変革が、20世紀後半に起こった「情報革命」である。それに伴い、社会は工業社会から知識社会へとシフトした。

さらにインターネットの時代に入り、私たちは短期間で3つのパラダイムシフトを経験した。まずは1995年頃から始まった「デジタルシフト」だ。誰でもアイデア次第で起業ができる時代が到来し、アマゾンやグーグルといった企業が生まれた。そこでのキーワードは「技術とスピード」である。

2008年以降は、ソーシャルメディアが人と企業の関係を変える「ソーシャルシフト」が起こった。そして2020年頃からコロナショックに伴い、多様な生き方を選択できる「ライフシフト」が始まっている。ソーシャルシフトとライフシフトそれぞれのキーワードは「共感と信頼」「自律と対話」だ。

知識社会にマッチした組織では、人間性への回帰と人間的でクリエイティブな経営モデルが重要とされる。知識社会でめざしたい組織像は次の3つである。顧客の幸せを探求し、常に新しい価値を生み出す「学習する組織」。社会の幸せを探求し、持続可能な繁栄を分かち合う「共感する組織」。そして、社員の幸せを探求し、多様な人が自走して協働する「自走する組織」だ。

成功循環モデル
pixelfit/gettyimages

では理想の組織を実現するにはどうしたらいいのか。「統制」から「自走」へのシフトは、システム思考を研究するダニエル・キムが提唱した「成功循環モデル」がベースになる。これは(1)関係の質→(2)思考の質→(3)行動の質→(4)結果の質→(5)関係の質という循環であり、ポイントは関係からスタートすることだ。

「関係の質」を高めるための一歩は対話である。率直に話し合う場をつくり、信頼関係を築く。次に「思考の質」を高め、前向きな気持ちとアイデアが生まれる土壌をつくっていく。つづいて「行動の質」を高め、一人ひとりが自律的に行動でき、問題が起きたときには助け合えるような環境をつくる。この循環によって組織のパフォーマンスはおのずと高まり「結果の質」が実現する。さらには強い結束が生まれるといった高次の「関係の質」につながっていく。

【必読ポイント!】 やる気に満ちた「やさしいチーム」のつくりかた

関係の質を高める心理的安全性

「関係の質」を高めるためのベースになるのが「心理的安全性」である。これは、まわりの評価を恐れることなく、自分の意見や想いを発言できる環境を指す。メンバーからの評価や、人間関係のリスクを感じない生産性の高い職場であり、これこそがサブタイトルでいう「やさしいチーム」である。そうしたチームには共通して「均等な発言機会」や他者の感情を読み取る「社会的感受性」の高さがある。

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要約公開日 2022.03.15
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