世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?

海外には、日本で知られていない面白いビジネスがたくさんある!
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世界の伸びている中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?
出版社
クロスメディア・パブリッシング
出版日
2014年06月11日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は「中小・ベンチャー企業の経営」というテーマに的を絞り、世界で成長を続ける中小・ベンチャー企業に対するインタビューや実例を数多く掲載、それらを基に事業の成功の秘訣やヒントについて解説している。著者はミラノと日本を拠点に、ビジネスプランナーとしてアジアや欧州の多くのビジネスをサポートしてきた経験から、日本の中小・ベンチャー企業の経営者に対し、事業や経営を考える際に視野を広げる材料としてまた海外展開を検討する際のヒントとして活用してほしいとの強い思いで、本書を執筆したのだという。

この本の特徴は、世界で活躍する複数の中小・ベンチャー企業に対し、企業が成長するための3つの重要な要素は何か、海外ビジネスにおいて国境をどう活用しているか、という2つの同じ質問を投げかけることで複数他社の回答を比較可能にし、その中から成功する企業の共通点または特筆すべき点を見出し企業経営のヒントとして提示している点にある。回答結果からは、成功する企業のポリシーには共通項が多くあることが判明したのだが、あえて少数意見のポリシーに耳を傾け、そこからビジネスの活路を見出そうとするスタンスは興味深い。

欧州においては中小・ベンチャー企業が活躍する土壌が既にあり、ニッチ産業で勢力を伸ばす企業が数多くある。日本経済の先行きは不透明であり、中小・ベンチャー企業の置かれた立場は決して明るいものではないが、本書を手に取って、苦境の下でも思考停止せず歩みを進める欧州の中小・ベンチャー企業の姿勢を参考にしてほしい。

著者

安西洋之
モバイルクルーズ株式会社代表取締役
上智大学文学部仏文科卒業後、いすゞ自動車入社。欧州自動車メーカーへのエンジンなどのOEM供給ビジネスを担当後、独立。1990年よりミラノと東京を拠点としたビジネスプランナーとして欧州とアジアの企業間提携の提案、商品企画や販売戦略等に多数参画している。国際交渉のシナリオ立案とデザイン企画を得意としている。
また、海外市場攻略に役立つ異文化理解アプローチ「ローカリゼーションマップ」を考案し、執筆、講演、ワークショップ等の活動を行っている。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界各国のITベンチャー企業やイタリアの中小製造業の経営者にインタビューを行ったところ、多くの企業家が挙げた成功の要素として、経営ビジョン、人材、コンピタンスがある。しかし、本書ではそれ以外に挙がった要素(デザイン、ルール作り、オープン、ローカル)に的を絞りビジネスのヒントを紐解いている。
  • 要点
    2
    「デザイン」という言葉は、今や商品の形や色に留まらず組織やサービスといった枠組み作りなど広範囲に及んでいる。今後はスモールデザインとビッグデザイン両方を兼ね備えたアイデアの提供が求められるほか、オープンなプラットフォームを利用しアイデアを享受する手法などは、資源の限られた中小・ベンチャー企業にとって手軽にビジネスチャンスを広げる可能性を秘めている。
  • 要点
    3
    日本でも独自の経営手法で成功を収める中小・ベンチャー企業は数多くある。中小・ベンチャー企業は時代のトレンドを感じるセンサーであり、自分の感覚を信じ前進すること、自分の得た情報の中で確信を得ること、ローカライズの傾向の中で得意分野を生かせる土壌を見つけることが何より重要である。

要約

伸びている中小・ベンチャー企業は高く狭く売るのが得意

世界の伸びているITサービス企業に学ぶ
maxkabakov/iStock/Thinkstock

初めにIT関連の中小・ベンチャー企業6社に焦点を当て、成功する企業の秘訣を紐解いていく。その1つがマサチューセッツ州に本社を置く「ハブスポット」。受け手に押し付ける印象を与えずに売込む手法である「インバウンドマーケティング」の統合ソフトを開発し、全世界でビジネス展開する急成長中の会社である。「顧客のために解決する」という強いミッションを社員全員で共有するだけでなく、社内の透明度が高くあらゆる社内情報にアクセス出来る環境を整えており、社員一人一人が経営者と同じ立場で議論できることを企業文化としている。その結果、各社員が現場で瞬時に判断しスピードを持ってゴールに到達することが可能となり、全社員の実績が会社の急成長に大きく寄与している様子が伺える。

また、欧州各国でデジタルメディアのマーケティングを行う企業の集合体「ボックスネットワーク」。その1つで、ミラノとローマを拠点とし約80名のスタッフで運営している「ハガクレ」のCEOであるマッサロッティ氏は、企業成長の3要素としてコンピタンス、イノベーション、チームを挙げている。

また、インターネットという世界はボーダーレスだからこそ異文化に対する理解が必要だと言及している。異文化を理解していないと的外れな戦略を実行してしまう恐れはあるが、この文化差による数多くの経験から得たノウハウがビジネスにつながるのではないかと考える。

イタリアで伸びているモノ作り企業に学ぶ
ad_krikorian/iStock/Thinkstock

更に、イタリアで成長を続けるモノ作り企業4社にも焦点を当てる。いずれもニッチ産業に活路を見出し大きく成長した企業だ。その一つ、果物のカッティング機械メーカーであるABLの創業者令嬢で役員のアスカリ氏は、海外戦略の質問に対し、地元の小さな銀行と協力しながら国際決済を行い海外へ輸出業を拡大したことを明かした。事実、この数年マネーロンダリング対策により銀行の各種手続きは煩雑化し、国際取引に新規参入する地方の中小・ベンチャー企業にとっては口座開設すらハードルが高くなっている。ABLのように、海外戦略の際には国際取引経験のある同規模の他社や地元の金融機関などと連携していく姿勢が必要だ。

「メイド・イン・イタリー」というブランドの中核を担ったのは中小製造業であるように、イタリアでは中小・ベンチャー企業が産業を牽引してきた力は大きい。一方で、海外進出に際し、ステレオタイプや偏見をどう克服していくか、安全基準への適合をどう実施していくかといった悩みは、国を問わず中小・ベンチャー企業にとって共通の課題だ。その具体的な解決策はイタリア製造業の企業にヒントがあると考えインタビューを行った。

デザインの使い方とブランドの育て方

中小・ベンチャー企業が生き抜くためのキーワード

これからの時代を企業が生き抜くための鍵である「ビジョン」、「人材」、「コンピタンス」は多くの企業家が挙げたキーワードであり、企業の成長には欠かせない基本要素である。しかしここでは、敢えて少数意見であった「デザイン」「ルールメイキング」「オープン」「ローカル」について深掘りし、新たなビジネスヒントを得ていきたい。

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要約公開日 2014.10.10
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