視点という教養

世界の見方が変わる7つの対話
未読
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視点という教養
出版社
イースト・プレス

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出版日
2022年06月30日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

私たちは幼い頃から長い時間をかけてたくさんの勉強をしてきた。はたしてそこで得た知識をどれだけ上手く活用できているだろうか。歴史上の出来事の名称や年号を暗記しても、それがどのような意味を持つのか、私たちがどのような教訓を得られるのかを深く考えなければ、本当の意味で学びを得たとはいえない。

本書は2021 JAPAN PODCAST AWARDSベストナレッジ賞番組「a scope」を書籍化した一冊だ。著者の二人が様々な分野の専門家と対談して、学びを得ていく。文化人類学、物理学、仏教学、脳科学。こういった各界の専門家たちとの対談に、読者は知的好奇心を大いにかきたてられるだろう。印象的なのは、著者らが各分野を掘り下げていくだけでなく、他の分野とのつながりや共通項を見つけていくプロセスからも学びを得られる点だ。

そもそもリベラルアーツとは、古代の「自由人」が備えるべき教養を意味する。伝統的に文法学、修辞学、論理学、数学、幾何学、天文学、音楽の七科目と定められているが、本書はその枠組にこだわらない。時代が変われば求められる教養も変わるからだろう。また、様々な学問分野に関する知識量よりも、そこからどんな視点が得られるかが重要となる。

本書を通じて思考OSをアップデートしていけば、思考や生き方の選択肢が増えていくことだろう。世界を見る目が変わること請け合いの一冊だ。

ライター画像
大賀祐樹

著者

深井龍之介(ふかい りゅうのすけ)
株式会社COTEN 代表取締役
島根県出雲市出身。大学卒業後、大手電機メーカーや複数のベンチャー企業の取締役・社外取締役などを経て、2016年に株式会社COTENを設立。「メタ認知を高めるきっかけを提供する」をミッションに掲げ、3500年分の世界史情報を体系的に整理。数百冊の本を読んで初めて分かるような社会や人間の傾向・行動パターンを、誰もが抽出可能にする「世界史データベース」を開発中。COTENの広報活動として「歴史を面白く学ぶコテンラジオ(COTEN RADIO)」を配信。2019年には、「JAPAN PODCAST AWARDS2019」で大賞とSpotify賞をダブル受賞。 Apple Podcast総合ランキング1位。NTT「ナチュラルな社会をめざすラボ」顧問(2022年5月11日現在)。

野村高文(のむら たかふみ)
Podcast Studio Chronicle代表
音声プロデューサー・編集者。愛知県知立市出身。東京大学文学部卒。PHP研究所、ボストン・コンサルティング・グループを経て、2015年にNewsPicksに入社。NewsPicksアカデミアマネージャー、編集部デスク、音声事業プロデューサーなどを歴任。2022年に独立し、Podcastレーベル「Chronicle(クロニクル)」を立ち上げ。手掛けたPodcastに「News Connect あなたと経済をつなぐ5分間」「みんなのメンタールーム」「The Reading List 未来に残るビジネス名著」など。TBSラジオ「テンカイズ」に出演中。旅と柴犬とプロ野球が好き。

本書の要点

  • 要点
    1
    価値観の転換のスピードが速い現代では、レールに沿って生きるのではなく、どのように生きるかについて自分で考えなければならない。そこでリベラルアーツが必要とされる。
  • 要点
    2
    リベラルアーツとは知識やスキルのことではなく、ものごとを「どこから見るか」という観点のことだ。観点、視点が多ければ多いほど、どう生きるかについてのオプションを増やすことができる。
  • 要点
    3
    脳科学と仏教の親和性が高いというように、様々な学問分野同士に、思いもよらぬつながりを見いだすことができる。

要約

【必読ポイント!】 リベラルアーツの力

リベラルアーツで視点を増やす

本書の狙いは、様々な分野の専門家との対談をもとにリベラルアーツ(教養)を理解し、世界を捉え直すことだ。現代において教養が必要とされる理由は何か。著者の一人である深井氏は次のように述べる。

現代は価値観の転換のスピードが速く、様々な価値観が同時に併存している時代だ。安定した会社に入り、結婚して子どもを産むといった既存のレールに乗れば幸せになれた時代とは違い、誰もが迷いながら生きている。しかし、「自分と社会の関係性がどうあるべきか」という根本的な問いに対する答えがクリアになれば、おのずと進む方向が決まっていく。そのために必要とされるのがリベラルアーツである。

リベラルアーツとは、知識やスキルのことではなく、ものごとを「どこから見るか」という観点を指す。観点は多ければ多いほうがいい。より多くの視点を得られれば、時代の変化にも、自分自身に対する反応にも振り回されなくなる。このような思考法が、まさに現代人に求められているのだ。視点が増えれば、人生のオプションが増え、決断の迷いが減る。そうすれば現代の混乱から抜け出せるようになるだろう。

なぜ複数の視点が必要なのか?
chuwy/gettyimages

深井氏は、複数の視点を獲得することで、「思考OS」を定期的にアップデートしていかなければならないと主張する。思考OSとは、時代ごとに社会のベースとなる考え方のことだ。

紀元前6世紀から4世紀ごろ、ギリシャのソクラテス、インドのブッダ、中国の孔子など、世界中で同じタイミングで哲学者が大量発生した。「生きるとは何か」「人間とは何か」を考えることで、思考OSが論理的・理性的になっていった。次のキリスト教OSでは、人びとの考えや行動のすべてのベースが信仰になった。宗教改革やルネサンスを経て、フランス革命によって「人権」の概念が憲法に取り入れられるようになった。ところが、二度の世界大戦に見られるように、「国家のために人民が頑張るOS」の時代に突入する。

このような大転換は、今までは数百年に一度の頻度でしか起きなかった。しかし現代では、インターネットという情報伝達技術の革新によって変化のスピードが加速し、数十年、もしくは十年に一度の頻度でOSの転換期が訪れている。

人間はものごとを相対的にしか認識できない。そのため、現代を真に理解するためには、歴史を学び、自分とは異質なものの比較によって新しい視点を得なければならない。

文化人類学

2年間、現地の生活にどっぷり浸かる

文化人類学をテーマとした対談のゲストは九州大学大学院人間環境学研究院准教授の飯嶋秀治氏である。飯嶋氏は文化人類学について、日本人の視点ではなく現地の視点からものごとを見て自文化との違いを見いだす学問だと説明する。

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要約公開日 2022.08.17
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