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世界のトップ企業がこぞって採用したMIT博士のミスを減らす秘訣
未読
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世界のトップ企業がこぞって採用したMIT博士のミスを減らす秘訣
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出版社
出版日
2022年05月17日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

人は誰も、生きていく中でいくつものエラーを犯す。それは当然のことなのだから、いちいち気にしていられない、と思うかもしれない。しかし、世の中には取り返しのつかないエラーも確実に存在する。たった一回の、ほんのささいなエラーが、大きな事故につながり、人命が失われることがある。1つのエラーによって姿を消す企業は後を絶たない。

エラーを完全に防ぐのは不可能に思えるが、本書はそれを否定する。すべてのエラーは防げると断言するのだ。世界中で起きたヒューマンエラーに起因する事故に対処してきた著者が開発したのは、ヒューマンエラーを根絶するためのエラーフリー・メソッドだ。著者によれば、このエラーフリー・メソッドを用いれば「新しいエラー」も「分類できないエラー」もない。すべてのエラーは対策可能だという本書のはしばしから、世界中で発生し続ける悲惨な事故を何とかしたい、人類の歴史からエラーを根絶したいという情熱がにじみ出ている。エラーさえなければ、事故で人命が失われることも、エラー対応に無駄な経費をかけることも、倒産で従業員が路頭に迷うこともないのだ。

本書はエラーフリーに至るための実践的入門書として位置付けられているが、実際に読むと日々の業務の中で使える内容が多い。自分も普段の業務の中でエラーを犯していないか、犯したエラーが放置されていないか、それを見直すことが、未来の自分や周囲の人を守ってくれるかもしれない。エラーフリーの実現のために自分を見直したくなったとき、最適な一冊だ。

著者

邱強(きゅう きょう)
清華大学卒業。マサチューセッツ工科大学で機械と原子力エネルギーの研究で博士号を取得。博士号は25歳のとき、わずか8カ月でトップの成績で取得した。シリコンバレー以外では、若くして起業に成功した数少ない中華系実業家の一人で、自らから設立したリスクマネジメント会社を売却したことで経済的成功もおさめた。妻と5人の子どもとともにカルフォルニア州ラホヤ(La Jolla)在住。
30年にわたりMIT専門家を主軸とするチームを率いて、エラーフリー思考とエラーを防ぐ14のメソッドの研究開発に携わっているほか、1987年にエラーフリー会社を設立した。彼のチームは、これまでに世界各地で発生した5000件を超えるヒューマンエラーと設備に起因する重大事故の処理を手掛けている。
エラーフリー・テクノロジーによってフォーチュン500社の8割をサポートし、ウォルマート、BIVI、電力・ガス会社のエクセロン、AEP、フランス原子炉メーカーのフラマトム、TVA、米国海軍の軍艦メーカーなど世界トップ企業の成功を支援している。同時に、2万人以上の顧客にトレーニングを提供して、会社のエラー率の低下と、競争力の向上に寄与している。

本書の要点

  • 要点
    1
    成功した企業が犯しやすいのが、慢心によるエラーだ。ノキアは決定を間違える「誤処理エラー」、コダックは行動しない「省略エラー」で業界トップから谷底へ転落した。
  • 要点
    2
    ヒューマンエラーは、必要とされる注意力と習熟度の観点から、「知識型エラー」「規則型エラー」「スキル型エラー」の3つに大別できる。
  • 要点
    3
    組織のリーダーが犯しうる知識型エラーは、ときに企業を倒産まで追い込む。
  • 要点
    4
    従業員がよく犯すスキル型エラーは、作業に必要な注意力とその人がそのときに持っている注意力に差が生まれたときに起きやすい。

要約

成功のカギはエラーフリー

ヒューマンエラーを根絶するための「エラーフリーメソッド」

著者は30年もの間、MIT専門家を主軸とするチームを率いて、世界各地で発生した重大事故の処理を手掛けてきた。単純なヒューマンエラーが、思いがけぬ巨大な損失をもたらしたり、大きな犠牲を払う事態に繋がったりする。恐ろしいことにエラーのほとんどは過去に発生例がある。にもかかわらず、同じ問題が発生し、深刻な死傷事件までもが起きている。

著者らのグループが重要な成功例と失敗例をかきあつめ、ビッグデータ分析を行った結果、成功と失敗を分ける要素は1つしかないことがわかった。それはエラーの数だ。あらゆる危機や事故の背後のすべてに共通する、たった1つの原因は、ヒューマンエラーだ。

ヒューマンエラーを根絶するために著者らはエラーフリー・メソッドを開発した。設備の不具合をなくし、事故や危機を防ぎ、犠牲者をゼロにすることがエラーフリーの目標だ。デカルトの研究方法を応用して作成したエラーフリー思考は、長年磨き上げられ、14のテクノロジー・ポイントに基づくエラー防止策が完成した。エラーフリーを実現することは、決して不可能ではない。

業界トップをも転落させる、致命的なエラー
z_wei/gettyimages

慢心は最も犯しやすいヒューマンエラーの1つだ。慢心のせいで自滅した人や国の例は枚挙にいとまがない。ビジネスの世界でも、成功した企業ほど慢心というエラーを犯しやすい。

かつて世界シェアナンバーワンの携帯電話メーカーであったノキアは、ほんの数年間で業界トップから谷底へ転落した。マイクロソフトによるノキア買収を発表する記者会見でヨルマ・オリラCEO(当時)は「われわれは何の過ちも犯していない。なぜ敗北したのか分からない」と涙した。しかし、実のところノキアは過信により致命的なエラーを犯している。

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要約公開日 2022.08.04
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