社会契約論
ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ

未 読
社会契約論
ジャンル
著者
重田園江
出版社
定価
1,012円(税込)
出版日
2013年11月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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社会契約論
ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズ
著者
重田園江
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定価
1,012円(税込)
出版日
2013年11月10日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
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おすすめポイント

本書は、ただの社会契約論の解説書ではない。資本主義のグローバル化が進んでいる現代という文脈で、ホッブズ、ヒューム、ルソー、ロールズを解釈し、社会を成立させる「約束の力」についての知見を与えてくれる。

現代はグローバル化、地球規模での分業体制が進んだ。その結果、経済格差が広がり、資本主義・市場主義がもたらす歪みが、目に見えて現れるようになった。社会契約論では、個々の人間が持つ欲望やエゴイズムの次元とは別の、「一般性」の次元を設定する。この次元があるからこそ、社会的な視点を人は手に入れられる。

あとがきに書かれている、著者の学生のころの体験は印象的だ。日本に来て風俗で働く東南アジアの女性を知るため、マニラにある「スモーキー・マウンテン」を見に行く。そこは長い間ゴミが廃棄された場所で、自然発酵、自然発火による煙が出ており、鼻で息ができないほどの悪臭が漂っていた。そのゴミの山のてっぺんで、赤ん坊を抱えた母親が手を振っていた。著者はこのとき、生まれた場所や境遇のどうしようもない隔たりに呆然とし、彼女たちに何もできなかったことに対して、無力感を覚えた。

この強烈な体験が、「この社会は間違っているんじゃないか」「社会を変えたい」という原動力になる、と著者は書いている。この本はその熱にあふれた一冊だ。

自分と他者との間にどうにもできない隔たりがあり、何かしようにも自分には何もできない無力さに打ちひしがれるときがある。その状況に対して他者との関わり方を示唆するのが、社会契約論なのだ、と要約者は感じた。

ライター画像
中崎倫子

著者

重田園江(おもだ そのえ)
1968年兵庫県西宮市生まれ。早稲田大学政治経済学部、日本開発銀行を経て、東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。現在、明治大学政治経済学部教授。専門は、現代思想・政治思想史。フーコーの思想を、とりわけ「権力」や「統治」といった主題を中心に研究する。また、社会科学・人間科学への統計の応用史を掘り下げ、さらには「連帯」と「正義」をめぐる哲学的探究をつづける。著書に『ミシェル・フーコー―近代を裏から読む』(ちくま新書)、『統治の抗争史―フーコー講義 1978-79』(勁草書房)、『隔たりと政治―統治と連帯の思想』(青土社)などがある。著者最新刊『ホモ・エコノミクス――「利己的人間」の思想史』(ちくま新書)。

本書の要点

  • 要点
    1
    社会契約論を「約束の思想」として読もうと試みる。「関係」の観点から、秩序の生成の瞬間として読む。
  • 要点
    2
    二人の人間が相互に権利を譲渡し合う「信約」を取り結んでおり、それが集まって政治社会を形成する拘束力を生む、とホッブズは考えた。
  • 要点
    3
    社会契約によって成立した共同社会を担うのが一般意志であり、すべての人が自発的かつ自由に法に従う人になることをルソーは求めた。
  • 要点
    4
    個々の人々の多様性、立場の違いを前提に、一般性の視点に立つための装置としてロールズが考えたのが、「正義の二元論」と「無知のヴェール」だ。

要約

約束の秩序

社会契約論とはどんな学問か

社会契約論は、次の特徴をもった思想である。

第一に、社会の起源を問うことだ。「私たちが暮らすこの社会はどこから来て、どんなふうに生まれたのか」を解き明かす。いまある社会がこのままでいいのかを考える際の一つの基準となる。

第二に、社会が作られ維持される、最低限必要なルールを問うことだ。ルールがあるから社会となるが、そのルールは自然と生まれたものではなく、「人工物」であると考える。「人間社会が維持されるための最低限のルール」とともに、「そのルールが正しいかどうか判断する際、人間自身が持つべき基準や手続きはどうあるべきか」を考える。

第三に、社会は誰がどうやって作り、何によって維持されるかを問うことだ。誰がどう作れば、人間だけで「持続性と凝集力がある社会ができるのか」を考える。

こうした問いに対し社会契約論は、「約束だけが社会を作る」という答えを与える。社会が形成される前は、人は自由で独立しており、ばらばらの状態(自然状態)だ。この人たちが約束を交わし、「他者との継続的な絆が結ばれる社会的状態」へと移行する。

いま社会契約論を読む理由
Prostock-Studio/gettyimages

著者は社会契約論について、国家と個人の対立構図を前提とするのではなく、「約束の思想」として読む。「何もなかったところに、人々が集まり、約束する」秩序形成の瞬間に注目する。この読み方が重要なのは、社会契約論の「一般性」という特徴と関係するからだ。

秩序には「市場の秩序」と「約束の秩序」がある。市場の秩序とは、市場の商品を通じて作られる。この秩序の擁護者は、「商品の背後に当事者の誰もが得する幸福な関係を見出す」。一方で、商品の売り手や買い手が誰であるのか問わないことで、市場には「不平等や不正を隠す機能」もある。

約束の秩序は、「相互利益を実現する秩序が自然に生まれるとは考えない」。秩序の条件をことばや条項、人々が目に見える形にする。現にある人間たちの果てしない違いや多様性、欲望などの現実のうえに、「一般性」の次元を立てようとする。これによって人は、何が正しく、何が間違っているかを判断できるのだ。

一般性の次元に立つことで、社会秩序が最低限守るべき事柄が明示される。ここにおいて私たちは、社会全体と、そこで結ばれる関係の基本要素に対して、責任を持たなくてはならない。

本書はまさにこの「約束」と「一般性」をテーマに、社会契約論を考察する。

人間のダメさを「約束」で乗り越えようとしたホッブズ

自然状態で怯える人間

『リヴァイアサン』を代表的著作とするトマス・ホッブズは、どのように社会契約論を考えていたのだろうか。

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