僕の狂ったフェミ彼女

未読
日本語
僕の狂ったフェミ彼女
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僕の狂ったフェミ彼女
出版社
イースト・プレス

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定価
1,760円(税込)
出版日
2022年03月19日
評点
総合
4.2
明瞭性
4.0
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

過激な発言が注目を集めるせいか、「フェミニズム」という単語には否定的なイメージがつきまとう。しかしながら、フェミニズムの本来の目的は、歴史的に権利の主体として認められていなかった女性の地位を男性と同等に引き上げることにある。「男性だから」「女性だから」という理由で不当な扱いや不利益を受けることない、すべての人が平等な権利を持つ状態を目指すことと捉えるならば、誰にとっても無視できない問題だ。

日本以上にフェミニズムへの風当たりが強い韓国で出版された本書『僕の狂ったフェミ彼女』は、プチ・アンチフェミの「僕」が、フェミニストになった「彼女」を「更生」させようとする様子が描かれる。「狂った」彼女は当時韓国で有効であった「堕胎罪」に反対するデモに参加していた。妊娠した女性が人工中絶をした場合、女性と担当した医師には刑罰が課されていた一方、父親たる男性にはなんの罰則もなかったのだ。堕胎自体の賛否はここでは脇に置くとして、女性と医師だけが罪に問われることのアンバランスさは否定できない。明日もデモに行くという「彼女」の横で、「僕」は「彼女を妊娠させたら結婚する気になってくれるかな」と身勝手な思惑を巡らせている。

絶望的に噛み合わない二人は、どこにでもいる「二人」の姿だ。その姿が現実に存在する溝を埋めるための気づきを与えてくれる。終盤の彼女の言葉を借りるならば、男も女も息苦しい世の中が変わらなくても「少なくとも私は変わるはず」なのだから。

ライター画像
池田友美

著者

ミン・ジヒョン
1986年生まれ。西江(ソガン)大学校で国文学と新聞放送学、日本学を学ぶ。2008年に日本に交換留学した際には東北大学の学友会映画部 De Palmaに所属し、自主映画を制作した。韓国芸術総合学校の映像院映画科大学院で劇映画シナリオを専攻。2015年に『조선공무원 오희길전(朝鮮公務員 呉希吉(オヒギル)伝)』で「大韓民国ストーリー公募大展」優秀賞を受賞し、2019年にはテレビドラマ『レバレッジ—最高の詐欺師たち—』の脚本を執筆。映画とドラマの現場で脚本家を務めながら、「韓国映画性平等センター」に所属し、性暴力予防教育講師としても活動中。2021年12月に最新長編小説『나의 완벽한 남자친구와 그의 연인(私の完璧な彼氏と彼の恋人)』が出版された。
初恋は中学三年、初めての恋愛は大学二年の時。それ以来、恋愛にそれなりの素質(?)があることに気づき、多くの出会いと別れを経験してきた。2016年の江南駅殺人事件に大きな衝撃を受け、フェミニズムの勉強を始めるが、それが私たちの恋と愛に与える影響の大きさを身をもって知り、再び大きな衝撃を受けた。本書はそうした経験が元になっている。

本書の要点

  • 要点
    1
    就活を前にノイローゼになっていた僕を癒してくれた彼女。僕が一年の海外インターンに行く間、待っていてくれると信じて疑わなかったが、メッセージ一つでフラれ、女性不信になった。
  • 要点
    2
    初恋を引きずり、結婚する踏ん切りがつかない僕の前に、再び現れた彼女はあろうことかフェミニストになっていた。
  • 要点
    3
    彼女となんとかヨリを戻した僕は、彼女にフェミニストをやめさせるべく奮闘する。

要約

終わった初恋の再燃

彼女こそが運命の人だと信じてた

大学4年に再履修したフランス語の授業で、僕は彼女と出会った。変わった子だなという興味はすぐに好意へと変わり、懸命なアプローチの末、僕らは恋人になった。彼女は僕の胸をときめかせ、就活の不安とノイローゼに苦しむ僕を包んでくれもした。

交際1年の記念日を迎える直前、僕はインターンのために渡米することになった。就活に苦戦していた僕に訪れたチャンスを誰もが応援してくれたが、彼女だけが行かないでと言い、僕らは涙にくれた。

出国の日、離れていても心は一つだと誓い合い、空港でキスを交わすはずだった。だけど、彼女はメール一つで「別れよう」と告げてきた。離れていられる自信がないから、と。

アメリカにいた1年の間、多くの女性と付き合ったけれど、愛とか、もうどうでも良かった。あんな一通のメッセージで終わってしまう程度のものなのだから。

初恋の彼女は、メガルになって現れた
Maria Voronovich/gettyimages

帰国して大企業に就職し、3年目になった「僕」ことスンジュンは、知人から紹介された年下の女の子と3回目のデートをしていた。女の子らしく、よく尽くし、子育てもちゃんとやりそうで、セックスも悪くなさそうだ。結婚相手には申し分ない。だけど、思い浮かぶのは終わった初恋のことだった。

これまでも悪くない子はたくさんいた。ほとんどが結婚を望み、周囲も結婚を期待し、僕にも結婚したい気持ちはある。でも、どうにも行動できなかった。なんで「今後の関係」は、男から切り出さなきゃならないんだ?

デートを終え、人通りの多い交差点を歩いていると、若い女性の集団がデモ集会をやっていた。「私の生命が大切だ!」「妊娠中絶合法化!」という横断幕があちこちに見える。

あれが噂に聞く「メガル(韓国でフェミニストを一括りにして揶揄する呼称)」だろうか。男が嫌いすぎて頭がおかしくなった、こじらせまくった女たち。何かにつけては「ハンナム(家父長的で女性を蔑視するミソジニー的な考えの男性を批判する呼称)」と男はみんな犯罪者予備軍かのように罵っているらしい。

とはいえ、僕の周りの女性たちはみんな「まとも」だったから、実際にメガルを見るのははじめてだ。さりげなく覗き見ていると、一人の「メガル女」と目が合った。不気味な黒ずくめの女は近づいて僕の顔をじっと見つめてくる。言いようのない恐ろしさに全速力で駆け出すと、女も追ってくる。人通りを掻き分け、建物に入り、男子トイレに逃げ込もうとしたところで、小さな手が肩に乗った。

「よ、キム・スンジュン。久しぶりじゃん?」

メガル女は彼女だった。4年前、僕を裏切った初恋の人は「メガル」になって現れた。

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