本書の要点

  • 一流の仕事人たちは、どんな仕事も他人事にせず、必ず「自分の仕事」として行っている。

  • モノづくりとは、じっくり時間をかけて形づくっていく中で、いつの間にかできているものである。その形は最初にイメージしたものとは違っていることがほとんどだ。

  • 自分が感じた違和感や疑問を放置せず、自分らしさを模索しつづけると、いつしか自分らしい仕事が形づくられる。

  • 仕事を「自分の仕事」にするポイントは、自分が仕事に合わせるのではなく、自分に仕事を合わせる力にある。

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働き方がちがうから、結果もちがう

最初に考えたものが、最後まで続くことはあり得ない:工業デザイナー・柳宗理

AntonioSolano/gettyimages

私たちは毎日、誰かがデザインしたものに囲まれて暮らしている。別の言い方をすれば、いろんな人の“仕事ぶり”に24時間・365日接して生きているということだ。「こんなもんでいいでしょ?」とつくられたものは、「こんなもんで…」という感覚を伝え、それを手にする人の存在をないがしろにしている。多くの人が自分を疎外して働いた結果、手にした人をも疎外する社会ができているのならば、同じ構造で逆の成果を生み出すことも可能なはずだ。著者はある日、柳宗理氏によるコーヒーカップを手に入れた。ボーンチャイナの白い食器は「とても丁寧に作られている。大事に使わなければならない」と思わせるものを内包していたという。著者は四谷駅近くにある柳宗理氏の設計室を訪れた。柳氏はものをつくる際、最初から図面やスケッチを作るのではなく「いろんな模型を作ってみて、これでいいかなとか悪いかなとかやる」と語る。どんなものでもまずは作ってみて、検討する。柳氏の作品で有名な「バタフライスツール」も、はじめは椅子をつくろうとも思わず、塩化ビニールの板を曲げたりしているうちにできてきたのだという。手をつかって、具体的に形にしてゆく中で、はじめてイメージが固まっていく。できたものは、最初に考えたものとはまったく違うものになっているが、それこそが「本式」なのだと柳氏は結ぶ。

“その人”の光る部分を引き出す:アートディレクター・宮田識

キリンビバレッジ「世界のキッチンから」、モスバーガー、ラコステなど、数々の広告デザインやブランディングを手がけてきたドラフトを率いる宮田識氏。宮田氏は日本を代表するアートディレクターであると同時に、デザインの「現場」のデザイニングに長けた独創的なマネージャーでもある。スタッフであるデザイナーたちの力を十二分に発揮させることは、彼の大きな役割の一つだ。宮田氏は「その人が持っている“ちょっと光っている部分”に気づいて、焦点の合った仕事を与えると、人は必ず成長する」と語る。そんな時、彼らは平気な顔をしていくらでも働いて、勝手に成長していく。

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要約公開日 2022.11.04
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