朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた

戦略的ビジネス文章術

未読
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戦略的ビジネス文章術
出版社
出版日
2022年07月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

現代は、人類の歴史の中でもっとも書き言葉が活発な時代かもしれない。メールなどはもちろん、SNSを通じたリアルタイムのテキストメッセージは、いまやプライベートだけではなく仕事にまでかかわるようになっている。書類は紙から解き放たれることで無限に生産され、人の間を行き来する。この傾向に、コロナ禍によるリモートワークの推進が拍車をかけていることは間違いないだろう。

しかし、日常における多くの文章は、短くとりとめのないものだ。あまりにも書くことが日常的になりすぎて、まとまった文章を作成することはかえって難しくなっているのかもしれない。ビジネスシーンでは特に、意識的に文章戦略を練らなければ、思い通りの結果を得ることはできないだろう。

本書における文章術のベースは、新聞記事というオールドな媒体の執筆手法だ。しかし、ここで紹介される文章術はそこにとどまらない。文章を書くこととは、コミュニケーションである。そしてコミュニケーションであるからには、事実を単に正確に述べるだけでなく、相手に対して意図をしっかりと伝える必要がある。本書で使われる「戦略的」という言葉は、すなわち文章によって相手を動かすところまでを見据えて、目標を達成するための技術であるという意味を含んでいる。

書き言葉がよりいっそう使われる現代だからこそ、日常の言葉を戦略的な言葉へとシフトしていかなければならない。本書はその戦略を練るために、最適な一冊となるだろう。

ライター画像
池田明季哉

著者

野上英文(のがみ ひでふみ)
朝日新聞記者
MIT(マサチューセッツ工科大学)経営大学院MBA(経営学修士)
NewsPicksトピックスオーナー
1980年、兵庫県生まれ。神戸商科大学を卒業後、朝日新聞社で大阪社会部、経済部、国際報道部、ハーバード大学国際問題研究所研究員などを経てジャカルタ支局長をつとめる。そのかたわら文章講座を主宰し、「読みやすく、わかりやすく、正確な」 書き方の普及と指導に力を注ぐ。40歳を機にMITに私費留学してMBAを取得、時事問題からリスキリングまで幅広い話題をつづったNewsPicksトピックス「新聞記者×MBA 世の中まるっと二刀両断」が注目を集める。NewsPicks+dでは特約編集者として、ビジネスに役立つ経済、DX、学びのコンテンツを監修する。

大阪地検特捜部による証拠改ざん事件の調査報道で新聞協会賞受賞。国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)によるグローバルな税逃れを報じた「パラダイス文書」取材班の日本代表、ジャカルタ外国特派員協会(JFCC)役員をつとめた。共著に『チャイナスタンダード』『ルポ タックスヘイブン』『ルポ 橋下徹』『証拠改窟』(以上、朝日新間出版) 『プロメテウスの罠4』(学研プラス)など。

https://newspicks.com/topics/nogami

本書の要点

  • 要点
    1
    文章はできるだけ短くすべきである。短く伝わりやすくすることこそ難しく、技術が必要だ。
  • 要点
    2
    アウトラインから書くことが勧められることが多いが、むしろ見出しを最初につけることのほうが重要だ。仮の見出しを置き、それに沿って書いていくのがよい。
  • 要点
    3
    最初から完璧なものを書くのではなく、とにかく最後まで書き切り、それから編集していくことでよりよいものにしていこう。

要約

うまく書けないのは、あなたのせいではない

書く力がないと損をする
Andrii Zastrozhnov/gettyimages

とりあえず文章を書いてみたものの、伝えたいことはぼやけたまま、だらだらと長さだけが増していく。誰しもそんな経験があるだろう。しかし、結末がわからない文章を読み手が楽しんでくれるのは、ミステリー小説ぐらいだ。アメリカのビジネスシーンでは、「結論ファースト」を求められるが、アメリカでも多くの人が結論を後回しにし、もったいぶって読み手に「私はこれだけ頑張っていますよ」とアピールしてしまう。

日本の教育現場でも、作文は原稿用紙のマス目を埋めることばかりが目標となり、丁寧な添削結果は返ってこない。多くの人は文章力を鍛える機会がないまま大人になっている。書く力の不足は、日本の社会問題であるとすら言える。

コロナ禍の在宅勤務の増加によって、テキストを介した意思疎通の機会も増加した。自分の考えやアイデアをうまく書き表せないことは仕事上の大きなハンディになりうることから、文章力への需要は高まりを見せている。

文章力を高める第一歩は、読み手の本音を知ることだ。第二次世界大戦で英国首相としてナチス・ドイツとの戦いを指導したウィンストン・チャーチルは、「公文書はあまりにも長く散漫である」という主旨のことを繰り返し述べ、同僚やスタッフにもっと短い文章を書くよう求めている。米国大統領を務めたドナルド・トランプも、報告の内容を見出しにまで落とし込むのが好きだという。英国と米国の国家元首のこうした考えは、ビジネスシーンでも重要な示唆となるだろう。

読み手にとっては、短く簡潔な文章が好ましい。しかし、簡潔にまとめた短い文章を書くことは、散漫で長い文章を書くことより、極めて難しい。フランスの数学者・哲学者のブレーズ・パスカルは、こう言ったとされる。「もし、もっと時間があれば、私はもっと短い手紙を書いたでしょう」。

この一見矛盾に思える事実を知り、受け入れることが「文章の道」への出発点だ。いかに言葉少なく、的確に表現できるようになるか。これこそが文章力を伸ばすということだ。

「仮見出し」と「リード文」

アウトラインよりも「仮見出し」を作成せよ

伝わる文章を書くために最初に意識するべきなのは、読みたくなる「見出し」をつけることだ。受け手はいつでも手っ取り早さを求めている。ここで読み手の関心を引かなければ読んではもらえない。

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要約公開日 2022.11.06
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