戦略的ビジネス文章術の表紙

戦略的ビジネス文章術

朝日新聞記者がMITのMBAで仕上げた


本書の要点

  • 文章はできるだけ短くすべきである。短く伝わりやすくすることこそ難しく、技術が必要だ。

  • アウトラインから書くことが勧められることが多いが、むしろ見出しを最初につけることのほうが重要だ。仮の見出しを置き、それに沿って書いていくのがよい。

  • 最初から完璧なものを書くのではなく、とにかく最後まで書き切り、それから編集していくことでよりよいものにしていこう。

1 / 4

うまく書けないのは、あなたのせいではない

書く力がないと損をする

Andrii Zastrozhnov/gettyimages

とりあえず文章を書いてみたものの、伝えたいことはぼやけたまま、だらだらと長さだけが増していく。誰しもそんな経験があるだろう。しかし、結末がわからない文章を読み手が楽しんでくれるのは、ミステリー小説ぐらいだ。アメリカのビジネスシーンでは、「結論ファースト」を求められるが、アメリカでも多くの人が結論を後回しにし、もったいぶって読み手に「私はこれだけ頑張っていますよ」とアピールしてしまう。日本の教育現場でも、作文は原稿用紙のマス目を埋めることばかりが目標となり、丁寧な添削結果は返ってこない。多くの人は文章力を鍛える機会がないまま大人になっている。書く力の不足は、日本の社会問題であるとすら言える。コロナ禍の在宅勤務の増加によって、テキストを介した意思疎通の機会も増加した。自分の考えやアイデアをうまく書き表せないことは仕事上の大きなハンディになりうることから、文章力への需要は高まりを見せている。文章力を高める第一歩は、読み手の本音を知ることだ。第二次世界大戦で英国首相としてナチス・ドイツとの戦いを指導したウィンストン・チャーチルは、「公文書はあまりにも長く散漫である」という主旨のことを繰り返し述べ、同僚やスタッフにもっと短い文章を書くよう求めている。米国大統領を務めたドナルド・トランプも、報告の内容を見出しにまで落とし込むのが好きだという。英国と米国の国家元首のこうした考えは、ビジネスシーンでも重要な示唆となるだろう。読み手にとっては、短く簡潔な文章が好ましい。しかし、簡潔にまとめた短い文章を書くことは、散漫で長い文章を書くことより、極めて難しい。フランスの数学者・哲学者のブレーズ・パスカルは、こう言ったとされる。「もし、もっと時間があれば、私はもっと短い手紙を書いたでしょう」。この一見矛盾に思える事実を知り、受け入れることが「文章の道」への出発点だ。いかに言葉少なく、的確に表現できるようになるか。これこそが文章力を伸ばすということだ。

2 / 4

「仮見出し」と「リード文」

アウトラインよりも「仮見出し」を作成せよ

伝わる文章を書くために最初に意識するべきなのは、読みたくなる「見出し」をつけることだ。受け手はいつでも手っ取り早さを求めている。ここで読み手の関心を引かなければ読んではもらえない。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2577/3559文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2022.11.06
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

自分の仕事をつくる
自分の仕事をつくる
西村佳哲
成長の技法
成長の技法
田坂広志
ダマシオ教授の 教養としての「意識」
ダマシオ教授の 教養としての「意識」
千葉敏生(訳)アントニオ・ダマシオ
ビジネススクール 意思決定入門
ビジネススクール 意思決定入門
内田和成
トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術
トヨタで学んだ「紙1枚!」で考え抜く技術
浅田すぐる
こころの葛藤はすべて私の味方だ。
こころの葛藤はすべて私の味方だ。
チョン・ドオン藤田麗子(訳)
部下のやる気はいらない
部下のやる気はいらない
岩崎徹也
3秒で勝負を決める ビジネスTikTok
3秒で勝負を決める ビジネスTikTok
堀越大樹

同じカテゴリーの要約

AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣
越川慎司
壁打ちは最強の思考術である
壁打ちは最強の思考術である
伊藤羊一
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
しんどい世の中でどうすれば幸せになれますか?
橘玲樺山美夏
仕事の「判断ミス」がなくなる脳の習慣
仕事の「判断ミス」がなくなる脳の習慣
加藤俊徳
肩書がなくても選ばれる人になる
肩書がなくても選ばれる人になる
有川真由美
頭のいい人が話す前に考えていること
頭のいい人が話す前に考えていること
安達裕哉
きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」
きちんと伝わる説明の「型」と「コツ」
阿部恵
AIエージェント革命
AIエージェント革命
シグマクシス
やりきる意思決定
やりきる意思決定
中出昌哉
生成AI最速仕事術
生成AI最速仕事術
たてばやし淳