とりあえず文章を書いてみたものの、伝えたいことはぼやけたまま、だらだらと長さだけが増していく。誰しもそんな経験があるだろう。しかし、結末がわからない文章を読み手が楽しんでくれるのは、ミステリー小説ぐらいだ。アメリカのビジネスシーンでは、「結論ファースト」を求められるが、アメリカでも多くの人が結論を後回しにし、もったいぶって読み手に「私はこれだけ頑張っていますよ」とアピールしてしまう。
日本の教育現場でも、作文は原稿用紙のマス目を埋めることばかりが目標となり、丁寧な添削結果は返ってこない。多くの人は文章力を鍛える機会がないまま大人になっている。書く力の不足は、日本の社会問題であるとすら言える。
コロナ禍の在宅勤務の増加によって、テキストを介した意思疎通の機会も増加した。自分の考えやアイデアをうまく書き表せないことは仕事上の大きなハンディになりうることから、文章力への需要は高まりを見せている。
文章力を高める第一歩は、読み手の本音を知ることだ。第二次世界大戦で英国首相としてナチス・ドイツとの戦いを指導したウィンストン・チャーチルは、「公文書はあまりにも長く散漫である」という主旨のことを繰り返し述べ、同僚やスタッフにもっと短い文章を書くよう求めている。米国大統領を務めたドナルド・トランプも、報告の内容を見出しにまで落とし込むのが好きだという。英国と米国の国家元首のこうした考えは、ビジネスシーンでも重要な示唆となるだろう。
読み手にとっては、短く簡潔な文章が好ましい。しかし、簡潔にまとめた短い文章を書くことは、散漫で長い文章を書くことより、極めて難しい。フランスの数学者・哲学者のブレーズ・パスカルは、こう言ったとされる。「もし、もっと時間があれば、私はもっと短い手紙を書いたでしょう」。
この一見矛盾に思える事実を知り、受け入れることが「文章の道」への出発点だ。いかに言葉少なく、的確に表現できるようになるか。これこそが文章力を伸ばすということだ。
伝わる文章を書くために最初に意識するべきなのは、読みたくなる「見出し」をつけることだ。受け手はいつでも手っ取り早さを求めている。ここで読み手の関心を引かなければ読んではもらえない。
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