Web3とメタバースは人間を自由にするか

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Web3とメタバースは人間を自由にするか
出版社
定価
1,650円(税込)
出版日
2022年12月02日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

スマホを使わない日はない。アマゾンで買い物をして、ツイッターで友人の近況を知り、グーグルマップを活用して移動する。その快適さや楽しさを味わい、その背後にあるテクノロジーの進化の恩恵を受ける。そしてふとしたときに、自分たちの暮らしや働きがデータとして保存され、「すべて監視されている」ような気がして寒気がする。

「何を買おう」「だれと話そう」「どこへ行こう」。そんな一挙手一投足がデータになり、ビッグテックのAIで処理され、知らず知らずの内にコントロールされている。しかし一度知ってしまった楽しさや快適さからは、もう離れることはできない。みんながLINEで連絡をとっていたら、使わざるを得ない。そこにプラットフォームの強さとこわさがある。

そこで現れたムーブメントがWeb3(ウェブ3)だ。特定の企業がデータを抱え込むのではなく、ブロックチェーンという台帳を使って分散管理すれば、プラットフォームの支配から逃れられるのではないか? そう期待する声も多い。しかし本当に「支配のない世界」はつくれるのだろうか。それが本書のテーマだ。

NFT・メタバース・自動運転は、お金のやり取り・コミュニケーション・リアル世界の移動という別次元のテクノロジーに思えるが、ビッグテックによる「支配と隷従」から「関係と承認」の未来へと話を進める中ですべてがつながっていく。テクノロジーの未来は、私たちの将来の生き方と濃密な接点があることがわかるはずだ。

ライター画像
Keisuke Yasuda

著者

佐々木俊尚(ささき としなお)
1961年生まれ。早稲田大学政治経済学部中退。作家・ジャーナリスト。毎日新聞社などを経て2003年に独立し、テクノロジーから政治、経済、社会、ライフスタイルにいたるまで幅広く取材・執筆している。『脳が超スピード化し、しかもクリエイティブに動き出す! 現代病「集中できない」を知力に変える 読む力 最新スキル大全』(東洋経済新報社)、『キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる』(ちくま新書)など著書多数。総務省情報通信白書編集委員。

本書の要点

  • 要点
    1
    ビッグテックのサービスはネットワーク効果によって「支配と隷従」を人びとにもたらす。その構造から自由になろうとすれば、テクノロジーがもたらす安楽な暮らしを諦めることになる。
  • 要点
    2
    完全な自由を目指すのではなく、「支配と隷従」のありようを変え、公正に運営される「関係と承認」のシステムを構築すべきだ。
  • 要点
    3
    ウェブ3は「関係と承認のテクノロジー」である。メタバースや自動運転といった技術は、コミュニケーションと居場所を拡張し、だれもが「参加」できる新たな社会関係を生み出す。

要約

安楽な暮らしか、支配されない自由か

現代の「パンとサーカス」が迫る選択
Eoneren/gettyimages

フェイスブック(現メタ・プラットフォームズ)などのビッグテックは、「安楽な暮らし」を実現しつつある。今後AIとロボットに仕事を奪われることがあっても、政府が国民に生活費(ベーシックインカム)を支給し、私たちは古代ギリシャよろしくロボットという奴隷に仕事を任せて、あまった時間を民主主義の議論やエンタメに振り分けるようになるかもしれない。

もちろんこれには強い批判もある。「安楽な暮らし」を管理するビッグテックは、プライバシーの監視をお金儲けの道具にしているからだ。しかしそこに抜け落ちているのは格差社会の視点である。お金に余裕のない人はビッグテックの提供する無料、安価のサービスを喜んで受け入れる。

これはまるで古代ローマ帝国の「パンとサーカス」だ。無償で与えられるパン(食事)とサーカス(娯楽)で人びとは満足し、政治的な関心は薄まる。「喜び」があるから支配を受け入れるのだ。

さらに、ビッグテックの支配は「ネットワーク効果」が強力に働く。同じサービスを使う人が増えるほど、サービスを使うメリットが高まるのだ。みんなLINEを使っていると、他のサービスに移るのが難しくなる。それは、そこから逃れられない「隷従」のニュアンスを含む。

AIを駆使したテクノロジーによる「支配と隷従」の構図は、GAFAM以外の企業が覇権を握っても変わらない。そうなると、わたしたちは二者択一の選択を迫られる。安楽な暮らしを楽しむ代わりにビッグテックの支配を受け入れるか。それとも支配と隷従からの自由を目指し、安楽な暮らしを諦めるか。

テクノロジーは進化しても社会が悪夢にならない。そんな第三の道はあるのだろうか?

自由のテクノロジーが抱えるジレンマ

「支配と隷従」に対抗する動きは、2020年代に活発になってきた。ウェブ3だ。ウェブ3は、ブロックチェーンという「あらゆる取引が記録される台帳」を核とした、新たなインターネットである。

この台帳を独占管理する企業はいない。そして、インターネットにつながる無数のコンピューターに同時に保存されるため、改ざんがほとんど不可能であるという特徴がある。送金や契約は「間違いなく正しい」ことが常に保証されているし、ひとつのプラットフォームの都合で記録が消えてしまうこともない。ブロックチェーンは「自由」なしくみであり、プラットフォームへの対抗馬としても期待されている。

しかし、リアル世界の価値とどう結びつけるかという問題もある。デジタルのアート作品に価値を与えるNFT(非代替性トークン)は、デジタルデータに「これがホンモノである」と示すデジタル鑑定書を付け加え、ブロックチェーンで保管できる。ただし、あくまで真正なのは鑑定書だけであり、これに紐付けられたアート作品が真正かは証明できない。『キャプテン翼』の著作権をもたない企業が漫画のデジタル画像にNFTを付与して発行しようとした事態は、その一例だ。

信頼できる会社にNFT発行サービスを任せれば、プラットフォームの再来になる。ブロックチェーンは自由でも、公正に管理する「支配」のサービスが存在しないとウェブ3は成立しないというジレンマがあるのだ。

ウェブ3は社会の「関係」を拡張する

トークンエコノミーの活路
elenabs/gettyimages

ウェブ3では「支配と隷従」を破壊できない。「ビッグテックの破壊」を叫ぶ起業家は、「権力の奪取」を願っているだけである。そもそもこの社会に、支配による管理や運用を除いた完全に自由な世界は存在しない。それは無政府世界であり、「弱者が蹂躙され、強者が君臨するディストピア」だ。

だから、「支配と隷従」が公正に運営されるシステムを検討すべきである。

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