「立方体が描けない子」の学力を伸ばす

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「立方体が描けない子」の学力を伸ばす
出版社
定価
990円(税込)
出版日
2022年10月28日
評点
総合
3.7
明瞭性
3.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

『ケーキの切れない非行少年たち』は、凶悪犯罪を起こす非行少年たちの中には、知的なハンディキャップを抱える子が少なくないという事実を描き、衝撃を与えた。同書の著者である宮口幸治氏が今回テーマにしたのは、認知機能に弱さを抱えた、「立方体の描けない」少年たちの学力を伸ばす方法だ。

立方体の模写は、標準的な子どもであれば、7から9歳の間にクリアできる課題だ。だが、著者が少年院で出会った中高生のなかには、「立方体が描けない子」が多くいた。原因は、見たり聞いたりする力の弱さである。立方体が模写できないほど認知機能の弱い子は、勉強でも対人関係でも困難を抱えやすい。こうした子は本来支援を必要としているが、周囲からそのことに気づかれないまま大人になるケースも少なくない。また、仮に支援の必要性に気づく大人が現れたとしても、具体的な支援の方法がほとんどないという現実があった。こうした状況を打破しようと著者が開発したのが、学習・社会・身体の認知機能の強化を目指す「コグトレ」だ。

本書では、コグトレの開発の経緯や、トレーニングを受けた子どもたちの変化が描かれる。すでに一定の効果が見られているコグトレは、少年院以外の施設でも利用が開始されているという。「困っている子ども」の特徴もまとめられていて、身近な子どもの支援の必要性に気づくきっかけになりそうだ。子どもを見守る立場にある方には、特に一読いただきたい内容である。

ライター画像
菅谷真帆子

著者

宮口幸治(みやぐち こうじ)
立命館大学産業社会学部・大学院人間科学研究科教授。医学博士、児童精神科医、臨床心理士。京都大学工学部卒業、建設コンサルタント会社勤務ののち、神戸大学医学部医学科卒業。大阪府立精神医療センター、法務省宮川医療少年院、交野女子学院医務課長などを経て2016年より立命館大学教授。困っている子どもたちを教育・医療・心理・福祉の観点で支援する「日本COG-TR学会」を主宰。
著書に、80万部を超えた『ケーキの切れない非行少年たち』、『どうしても頑張れない人たち ケーキの切れない非行少年たち2』『ドキュメント小説 ケーキの切れない非行少年たちのカルテ』(以上、新潮新書)のほか、『コグトレ みる・きく・想像するための認知機能強化トレーニング(三輪書店)』など。

本書の要点

  • 要点
    1
    少年院に収容されている子どもの中には、見る力や聞く力といった認知機能が弱く、入ってくる情報が正確に理解できないために不適切な行動に至った子がいる。周囲が子どもの抱える困難に気づき、適切な支援を行うことが重要だ。
  • 要点
    2
    困難を抱えた子どもの特徴は、認知機能の弱さ、感情統制の弱さ、融通の利かなさ、不適切な自己評価、対人スキルの乏しさ、および身体的不器用さが挙げられる。著者が開発したコグトレは、こうした人々の認知機能を社会面、学習面、身体面から強化するトレーニングとして、広く活用されている。

要約

立方体が描けない子どもたち

精神科外来には、本当に問題のある子は来なかった

認知機能は生活する上で欠かせないものだ。例えば、相手の表情を読み取って(視覚認知)どんな気持ちか想像する(推論)ことや、熱いフライパンを見て(視覚認知)、触るのを止めておこう(判断)と考えるのには、認知機能を使っている。協調性や忍耐力などの能力についても、認知機能が土台であると考えてよいだろう。

認知機能の弱い子どもは、困難を抱えているはずであるが、そのことに気づかれないケースが多々ある。本書は、認知機能の大切さと、そこに弱さをもつ、困っている子どもたちに焦点を当てる。

精神科医である著者が公立の精神科病院を辞めて少年院に移ったのは、病院でできることは限られているとわかったからだ。子ども自身が自分の判断で精神科にかかることはない。保護者や福祉関係機関の支援者が連れてきて診察が行われるわけだが、これはじつはそれだけで恵まれたケースなのだ。

少年院では、なんらかの障害を抱えていて支援が必要であったにもかかわらず、そのことに誰にも気づかれなかった子どもたちがいた。非行化して加害者になり、少年院に入れられ、そこで初めてその少年には障害があり、支援が必要だったとわかるという現実があったのだ。

更生プログラムをより効果的にするために
Irina_Strelnikova/gettyimages

少年院に勤務を始めた直後の著者は、凶暴で手がつけられないと言われていた少年の診察を担当した。少年には知的障害があり、会話は弾まない。そこで、気分を変えるつもりでReyの複雑図形という検査をしてみた。これは、主に認知症や頭部外傷などの患者の認知機能を評価する検査として使われていたものだ。見本の図形を見ながら模写するという課題に対し、少年が描いてきた図は、見本とは全く異なる形の図だった。この見本がこういうふうにしか見えていないということは、世の中のことが歪んで見えているのではないか、と著者は驚いた。見る力がこれほど弱いならば、聞く力も弱く、こちらが伝えたいことが伝わっていないかもしれない。彼らを更生させるには、まず認知機能を改善する必要があるのではないかと思い至った。

認知機能の弱い少年は、少年院に大勢いた。立方体の模写は、標準的な子どもであれば7歳から9歳までの間にクリアできる課題だ。ところが、少年院にいる中学生、高校生でも、これができない少年がいる。殺人や傷害、強制わいせつなどの凶悪犯罪を行った少年たちのなかには、立方体の描けないものがいる。このような未熟な認知機能のまま、被害者の気持ちを考えさせるような従来の矯正教育を行っても、効果は上がらないのではないだろうか。

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