なめらかな社会とその敵

PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論
未読
日本語
なめらかな社会とその敵
なめらかな社会とその敵
PICSY・分人民主主義・構成的社会契約論
著者
未読
日本語
なめらかな社会とその敵
著者
出版社
定価
1,540円(税込)
出版日
2022年10月10日
評点
総合
4.0
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

20世紀に子ども時代を過ごした者ならば、21世紀の未来には大きな変革が起こり、高度なテクノロジーによって実現した様々な便利なツールが普及し、豊かで明るく幸せな生活を送れるようになると思い描いていたことがあるのではないだろうか。

現実の21世紀は、20世紀の頃と比べて多少の変化はあったとしても、劇的な大変革はいまだ生じていない。誰もが豊かで明るい生活を送れているとは言えず、むしろ悪化している面さえあるように感じられる。人間が社会を認知するイメージが変化に追いつかず、社会の変革も大きなものとなっていない。

本書は、「膜と核が生み出す境界によって囲い込まれていた社会」というこれまでのシンプルな認知から、「複雑な社会を複雑なまま認知する、なめらかな社会」への転換を促す。自然科学や数式、様々な思想の理論や概念、専門用語が用いられているため、一見すると難解な印象があるかもしれない。ただ、論旨は極めて明解だ。文章表現もなめらかであるため、意外なほど読みやすい。

これまでの社会のあり方からの大きな変化、パラダイムシフトを迫る本書が提示する未来像は、最初のうちはイメージを持ちにくいかもしれない。だが少しずつ読み進めることで、次第にそのイメージを共有し、未来に対する柔軟でなめらかな発想を持てるようになるだろう。

ライター画像
大賀祐樹

著者

鈴木健(すずき けん)
1975年長野県生まれ。1998年慶應義塾大学理工学部物理学科卒業。2009年東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は複雑系科学、自然哲学。東京財団仮想制度研究所フェローを経て、現在、東京大学特任研究員、スマートニュース株式会社代表取締役会長兼社長。著訳書に『NAM生成』(共著、太田出版)、『進化経済学のフロンティア』(共著、日本評論社)、『現れる存在』(共訳、ハヤカワ文庫NF)など。

本書の要点

  • 要点
    1
    世界は本来複雑だが、人間の認知の限界によって、単純化されたものとして認知されてきた。インターネットやコンピュータによって、複雑な世界を複雑なまま、なめらかなものとして認知できるようになってきている。
  • 要点
    2
    世界を単純化する認知は、膜で囲い込むことで内と外を区別し、核で制御するという、生命活動そのものに起源がある。世界を膜や核ではなく、その背景にある網として認知することで、なめらかな社会が実現される。
  • 要点
    3
    なめらかな社会の実現のためのアイデアとして、経済における伝播投資貨幣PICSYの導入や、伝播委任投票システムから成る分人民主主義の実装が挙げられる。

要約

【必読ポイント!】 複雑な世界を複雑なまま生きる

世界の複雑さを単純化する膜と核

本書の問題提起は、この複雑な世界を複雑なまま生きることが、いかにして可能となるかということである。世界は複雑なので、何が原因で何が結果かということも、単純に理解できるものではない。

しかし、人間の認知には限界があるため、複雑な世界を複雑なまま受け入れるのは難しい。複雑なまま理解できずにいると、対応することもできない。したがって、意識は世界を単純なものとしてみなし、認知コストを下げるための装置として生み出された。

だが、インターネットやコンピュータの登場で、認知や対策の能力が上がれば、徐々に世界を複雑なまま扱えるようになってくる。

ネットはオープンな特性を持ち、資源の囲い込みを嫌い、あらゆるものをシェアしようとする。一方、現実社会では囲い込みに満ちあふれている。これを【膜】の現象と呼ぶ。

また、ネットの自立分散性は、中央集権的な制御を排除するが、現実は中央集権的な組織に満ちている。これを【核】の現象と呼ぶ。

経済と政治にまつわる膜と核
luismmolina/gettyimages

近代の経済システムは、私的所有を認め、資本が労働力を組織化し、企業という膜の中に囲い込むことで成立している。企業では、経営陣が核となって組織を制御し、資源配分を決定する。本来ならば、各人が社会に与えた価値に対して価値が与えられるべきなのに、会社の利益さえ上がればよくなる。

貨幣は経済システムの血液であり水流のようなものだ。だが資本は蓄積されやすく、水流によどみを生む。気づけば人々は資本に制御され、資本蓄積が自己目的化してしまっている。

近代の政治における国民国家という概念の成立によって、国境と、国民のメンバーシップという、内と外とを分ける膜が明確化されてきた。権力は一人ひとりの意志の委任から成立しているはずなのに、権力構造は国民の意志どおりに執行されることをしばしば拒んできた。そして国民からの委任の維持もままならなくなり、政党や派閥の間での権力闘争が自己目的化してしまう。権力もまた、委任という水流によどみを生み出す。

これら経済と政治の歴史で繰り返される問題は、社会システムにおける膜と核の問題とも言える。膜と核の問題は、人類という種に限らず、生命論として根深い起源を有する。

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