本書の要点

  • ホタルの幼虫期は10か月と案外長く、なんと、じつは幼虫も光る。ホタルは人気ゆえに無理に移入されて、その数を減らしてしまったり、もともとの生態系に影響が出たりすることもある。

  • ダンゴムシは、障害物にぶつかると右、次にぶつかると左、と交互に曲がりながら進む、という興味深い性質をもっている。丸まることと引き換えに速さを失ったダンゴムシが、遠くへ効率的に移動するための知恵なのかもしれない。

  • 高速飛翔はもちろん、高速移動からの空中停止や、急な方向転換も得意としているトンボの飛翔能力はかなり高く、写真を撮るのも難しいほどだ。

1 / 4

【必読ポイント】夏の愛され虫

ホタルの幼虫の意外な素顔

kororokerokero/iStock/Thinkstock

カブトムシ、クワガタムシ、セミと並んで夏の代表的な虫はなんだろうか。そう、ホタルである。ホタルはわざわざ遠方より運ばれてきて庭園に放たれたり、時には保護区が出来たりと、とくに国民的に愛されている虫と言っても過言ではない。しかし、そのように愛され、認知度の高いホタルではあるが、光るということ以外に、ホタルの生態を知っている人はほとんどいないのではないだろうか。メレ山氏は、どんな生物なのか詳しく知りたい、という思いから、足立区生物園で催されている鑑賞会、「ホタル見night!」に参加した。日本には亜熱帯を中心として約50種のホタルがいるが、私たちが普段ホタルとして認識しているのはゲンジボタルかヘイケボタルだ。ゲンジボタルは流れのある川に生息し、ヘイケボタルは水田や湿地に生息する。ともに幼虫の期間は10か月ほどあるという。「はかない印象を持っていましたが、けっこう長生きですね」というメレ山氏の意見には、皆さんも同意なさるだろう。幼虫期は餌も違う。足立区生物園のスタッフの方によれば、ヘイケボタルはタニシやモノアラガイなど色々な貝を食べるけれど、ゲンジボタルは偏食でカワニナしか食べないそうだ。カワニナはもともと臭みのある貝なので、暑さで腐ると異臭がひどく、それを食べているゲンジボタルの幼虫も臭いのだとのこと。匂いを例えると墨汁のような香りがするそうだ。甲冑を着たような見た目もなかなかごつく、成虫の姿はなかなか想像しにくい。さて、ホタルの最大の特徴と言えば、やはり光ること。この光るという現象、実は成虫だけのものではないということをご存じだろうか。じつはホタルは幼虫期も光っている。成虫期にホタルが光るのは異性を呼ぶサインであるが、幼虫期は全く反対で、捕食者への「食べてもおいしくないよ」という警告になるらしい。ホタルの幼虫・成虫は窮地に陥ると臭い粘液を出すので、そもそも好んで食べようとする捕食者も少ないらしい。光と粘液で自分の身を守っているのだ。

ホタルの光に誘われるのはホタルだけじゃない

alexeys/iStock/Thinkstock

成虫のホタルの光には、他のホタルを呼び寄せる効果があることは先に述べた。しかしこの光に誘われるのはホタルだけではなく、その美しさに人間も誘われてしまう。夏に儚げに光る姿は、何ともいえない哀愁を帯び人気が高い。ホタルが自生する川の周辺は、重要な観光資源ともなっているようだ。しかし、人の、ホタルへの愛が時に暴走してしまうことをメレ山氏は警告している。ホタルの里をスローガンに町おこしした結果、養殖池や水路をつくるために元々あった生き物の住みかが潰されたりしている。また、観光客が押し寄せて肝心のホタルが減少し、慌てて他の地域のホタルを移入する、といった皮肉な結果となっている地域もあるという。ホタルの光り方には地域ごとにわずかな差があるため、むげに移入すると、オスメスの交信が混乱して、共倒れになってしまうこともあるという。慎重に、ホタルを大切にしていかなければならない。

2 / 4

左へ右へ

鉄のディフェンスをもったダンゴムシの知恵

Chatchai Somwat/iStock/Thinkstock

等脚目に属し、甲殻類の仲間であるダンゴムシは、近くにある石をひっくり返せばすぐ見つかる、人間にとって最も身近な虫の一つだ。なんと、食べることも出来るという。しかし、メレ山氏が注目したいのはダンゴムシが美味か否かではない。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2632/4028文字

4,000冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2014.11.25
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.

一緒に読まれている要約

低温「ふしぎ現象」小事典
低温「ふしぎ現象」小事典
低温工学・超電導学会
ネコと分子遺伝学
ネコと分子遺伝学
仁川純一
地球外生命 9の論点
地球外生命 9の論点
立花隆佐藤勝彦ほか自然科学研究機構(編)
破壊する創造者
破壊する創造者
夏目大(訳)フランク・ライアン
分子からみた生物進化
分子からみた生物進化
宮田隆
ロボコン
ロボコン
ニール・バスコム松本剛史(訳)
ハチはなぜ大量死したのか
ハチはなぜ大量死したのか
ローワン・ジェイコブセン中里京子(訳)福岡伸一(解説)
死なないやつら
死なないやつら
長沼毅

同じカテゴリーの要約

一流の研究者たちが教える 快眠の科学
一流の研究者たちが教える 快眠の科学
伊藤和弘三島和夫(監修)
なぜゲームをすると頭が良くなるのか
なぜゲームをすると頭が良くなるのか
星友啓
新版 科学がつきとめた「運のいい人」
新版 科学がつきとめた「運のいい人」
中野信子
スマホ脳
スマホ脳
アンデシュ・ハンセン久山葉子(訳)
スタンフォード式 最高の睡眠
スタンフォード式 最高の睡眠
西野精治
最強に面白い 睡眠
最強に面白い 睡眠
柳沢正史(監修)
新版 「空腹」こそ最強のクスリ
新版 「空腹」こそ最強のクスリ
青木厚
FACTFULNESS
FACTFULNESS
ハンス・ロスリングオーラ・ロスリングアンナ・ロスリング・ロンランド上杉周作(訳)関美和(訳)
無料
科学的に元気になる方法集めました
科学的に元気になる方法集めました
堀田秀吾
リサーチ・クエスチョンとは何か?
リサーチ・クエスチョンとは何か?
佐藤郁哉