ときめき昆虫学

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ジャンル
出版社
イースト・プレス
定価
1,760円(税込)
出版日
2014年04月14日
評点
総合
3.5
明瞭性
3.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

「昆虫」と聞いて思うことは人によってそれぞれだろう。小学校で習った昆虫の定義を思い出す人もいれば、もちろん「昆虫」と聞いただけで嫌な顔をする人もいるはずだ。本書の著者であり、各所に写真で登場するメレ山メレ子氏は、不思議な形をした世界の珍虫などの写真は好んで見ていたものの、室内に実際に現れる虫にはおびえる、いわゆる普通の人の一人だった。

しかし、社会人になってから趣味の旅行記のブログを書き始めた時、「ぶつくさ言う彼らの泡粒のような声が聞こえてくるかのように感じられ」、虫たちの視点から見える世界を写真で表すことに夢中になったという。現在は会社勤めの傍ら、虫に関連するさまざまな活動をしている。

本書ではメレ山氏がセレクトした20種の虫についてのエッセイが、写真とともに掲載されている。本書で扱われているのは、必ずしも昆虫の定義に沿ったものだけではない。私たちの日常になじみ深い虫が選ばれており、チョウやハチ、カタツムリやダニなども紹介されている。

知っていたと思っていたことが覆されたとき、その瞬間に「ときめき」がある、とメレ山氏はあとがきで語っている。どの章でも、メレ山氏は、身近なトピックから専門的な深みまで自在に行き来し、「ときめき」とユーモアたっぷりに、虫への愛をつづっている。ダンゴムシ一匹でも、メレ山氏にとっては無限に考えを働かせられる大切な生き物なのだ。この「メレ山昆虫記」を読めば、皆さんの心に眠る、虫への関心のスイッチもオンになってしまうかもしれない。

著者

メレ山メレ子
1983年、大分県別府生まれの会社員。2006年からブログで旅行記を書き始める。青森のイカ焼き屋で飼われていた珍しい顔の秋田県を「わさお」と名付けて紹介したところ、薬師丸ひろ子と映画で共演するほどのスター犬になってしまう事件に見舞われた。
やがて旅先で出会う虫の魅力に目ざめ、虫に関する連載や寄稿を行うように。2012年からは、昆虫研究者やアーティストが集うイベント「昆虫大学」の企画・運営を手がける。虫と虫にまつわる人の魅力を、今後も探していきたいと思っている。ムネアカオオアリの家族とゲンゴロウ2匹と暮らす。この本はブログの書籍化『メレンゲが腐るほど恋したい メレ子の日本おでかけ日記』(P-Vine Books)に続く2冊目の著作。
http://d.hotena.ne.jp/mereco/

本書の要点

  • 要点
    1
    ホタルの幼虫期は10か月と案外長く、なんと、じつは幼虫も光る。ホタルは人気ゆえに無理に移入されて、その数を減らしてしまったり、もともとの生態系に影響が出たりすることもある。
  • 要点
    2
    ダンゴムシは、障害物にぶつかると右、次にぶつかると左、と交互に曲がりながら進む、という興味深い性質をもっている。丸まることと引き換えに速さを失ったダンゴムシが、遠くへ効率的に移動するための知恵なのかもしれない。
  • 要点
    3
    高速飛翔はもちろん、高速移動からの空中停止や、急な方向転換も得意としているトンボの飛翔能力はかなり高く、写真を撮るのも難しいほどだ。

要約

【必読ポイント】夏の愛され虫

ホタルの幼虫の意外な素顔
kororokerokero/iStock/Thinkstock

カブトムシ、クワガタムシ、セミと並んで夏の代表的な虫はなんだろうか。そう、ホタルである。ホタルはわざわざ遠方より運ばれてきて庭園に放たれたり、時には保護区が出来たりと、とくに国民的に愛されている虫と言っても過言ではない。

しかし、そのように愛され、認知度の高いホタルではあるが、光るということ以外に、ホタルの生態を知っている人はほとんどいないのではないだろうか。メレ山氏は、どんな生物なのか詳しく知りたい、という思いから、足立区生物園で催されている鑑賞会、「ホタル見night!」に参加した。

日本には亜熱帯を中心として約50種のホタルがいるが、私たちが普段ホタルとして認識しているのはゲンジボタルかヘイケボタルだ。ゲンジボタルは流れのある川に生息し、ヘイケボタルは水田や湿地に生息する。ともに幼虫の期間は10か月ほどあるという。「はかない印象を持っていましたが、けっこう長生きですね」というメレ山氏の意見には、皆さんも同意なさるだろう。

幼虫期は餌も違う。足立区生物園のスタッフの方によれば、ヘイケボタルはタニシやモノアラガイなど色々な貝を食べるけれど、ゲンジボタルは偏食でカワニナしか食べないそうだ。カワニナはもともと臭みのある貝なので、暑さで腐ると異臭がひどく、それを食べているゲンジボタルの幼虫も臭いのだとのこと。匂いを例えると墨汁のような香りがするそうだ。甲冑を着たような見た目もなかなかごつく、成虫の姿はなかなか想像しにくい。

さて、ホタルの最大の特徴と言えば、やはり光ること。この光るという現象、実は成虫だけのものではないということをご存じだろうか。じつはホタルは幼虫期も光っている。成虫期にホタルが光るのは異性を呼ぶサインであるが、幼虫期は全く反対で、捕食者への「食べてもおいしくないよ」という警告になるらしい。ホタルの幼虫・成虫は窮地に陥ると臭い粘液を出すので、そもそも好んで食べようとする捕食者も少ないらしい。光と粘液で自分の身を守っているのだ。

ホタルの光に誘われるのはホタルだけじゃない
alexeys/iStock/Thinkstock

成虫のホタルの光には、他のホタルを呼び寄せる効果があることは先に述べた。しかしこの光に誘われるのはホタルだけではなく、その美しさに人間も誘われてしまう。夏に儚げに光る姿は、何ともいえない哀愁を帯び人気が高い。ホタルが自生する川の周辺は、重要な観光資源ともなっているようだ。

しかし、人の、ホタルへの愛が時に暴走してしまうことをメレ山氏は警告している。ホタルの里をスローガンに町おこしした結果、養殖池や水路をつくるために元々あった生き物の住みかが潰されたりしている。また、観光客が押し寄せて肝心のホタルが減少し、慌てて他の地域のホタルを移入する、といった皮肉な結果となっている地域もあるという。ホタルの光り方には地域ごとにわずかな差があるため、むげに移入すると、オスメスの交信が混乱して、共倒れになってしまうこともあるという。慎重に、ホタルを大切にしていかなければならない。

左へ右へ

鉄のディフェンスをもったダンゴムシの知恵
Chatchai Somwat/iStock/Thinkstock

等脚目に属し、甲殻類の仲間であるダンゴムシは、近くにある石をひっくり返せばすぐ見つかる、人間にとって最も身近な虫の一つだ。なんと、食べることも出来るという。しかし、メレ山氏が注目したいのはダンゴムシが美味か否かではない。

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要約公開日 2014.11.25
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