買いたがる脳

なぜ、「それ」を選んでしまうのか?
未読
買いたがる脳
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なぜ、「それ」を選んでしまうのか?
未読
買いたがる脳
出版社
日本実業出版社
出版日
2014年10月01日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

一目ぼれで商品を購入したり思わず衝動買いしてしまったことは、誰しもが経験ある出来事ではないだろうか? しかし、実はそれが無意識に誘導されていたと知ったら、あなたはどう感じるだろうか? 本書は、そんなショッピングシーンの裏側を垣間見ることのできる興味深い一冊である。

本書では脳科学や行動経済学、消費者心理学の研究成果が数多く紹介されており、広告やマーケティング、販売への活用実態やそれらの研究による強力な「脳への売り込み」の状況を説明している。今やショッピングは店頭からインターネットまで多種多様な形態が存在している。特にオンラインショッピングに関しては、消費者の購買志向やウェブページの閲覧回数など個々の買い物状況がビッグデータとして蓄積され、消費者のショッピング傾向の把握やデータ分析による具体的な売上改善施策が可能となった。

また、脳科学の発達によりショッピング時の脳波の動きは逐次データ化でき、例えば店内ディスプレイに消費者がどう感じているのかが目に見える時代となった。こういった買い物客の様々なデータを応用し、消費者の自覚なしに商品購入させるよう巧妙な操作が施されているのが現代のショッピング現場なのだという。マーケティングや広告、販売関係者にとっては最新技術と研究成果が学べる一冊であり、消費者にとってはショッピングの真実を知る一冊となるだろう。

著者

デイビッド・ルイス
「買い物をする脳」の分析に神経科学を応用したパイオニア的存在の研究者。「ニューロマーケティングの父」と呼ばれ、1980年代からサセックス大学でテレビCMと脳波の関係の研究をしていた。最先端のリサーチに基づくコンサルタントを行う「マインドラボ研究所」を設立。高度な技術を駆使して、買い物をするときの人の心と体の反応を研究している。現、同ラボディレクター。

本書の要点

  • 要点
    1
    脳科学が発達したことから生まれたニューロマーケティングにより販売戦略は大きな変化を成し遂げ、心理学との組み合わせで具体的な売上増加の施策実行が可能となった。
  • 要点
    2
    脳の思考プロセスは主に「無意識の判断」、「カテゴリー化」、「経験則に基づく判断」といった3種類に自動化され、買い物の仕方にも大きく影響している。
  • 要点
    3
    ショッピングシーンには、無意識に消費者の購買行動に働きかける様々な工夫が施されている。消費者は主体的に買い物ができる支配感に陶酔するが、実は無意識のうちに購入に誘導されているのだ。

要約

ショッピング現場に潜む「かくれた説得者」

Wavebreakmedia Ltd/Wavebreak Media/Thinkstock
強烈な欲望「ウォンツニーズ」

1960年代半ば以降、神経科学領域の研究が急速に進み、脳の動きを観察できる技術の確立により脳科学がビジネスへ応用されるようになる。これを「ニューロマーケティング」と名付け、実際にショッピングしている最中の消費者の脳波を分析し効率的に戦略を立てることが可能になった。例えば、店内のレイアウトや商品ディスプレイに対する消費者の無意識の反応を調べ、売上増加につながる具体的戦略を策定するなどである。また、店内の看板の色や照明といった間接的な工夫も商品の売上に大きく影響する。ショッピング現場にはこのような「かくれた説得者」が消費者の購買行動を後押しする仕組みが随所に組込まれているのだ。

「欲しい」という要望が高まると「欲しいし必要(ウォンツニーズ)」という願望に変化し強い購買欲求につながる。ここで重要なのは「ウォンツニーズは作られる」ことであり、広告や販売業者以外にもテレビなど多くの媒体がその役割を果たす。「ウォンツニーズ」を作り出す具体的方法は、買い物客に料理の仕上げ工程などの「作業」をあえてしてもらう、希少性を作り出す、楽しさを演出する、などである。消費者の無意識の反応を分析すればこの「ウォンツニーズ」が最高レベルになる商品を特定できるのだ。

どうやって「脳」へ売り込むのか?

セールスの本質とは「問題解決」であり、その構成要素は「課題」、「方法」、「目標」の3項目に分類される。その「問題」とはウォンツニーズから生じる問題であり、脳内イメージから消費者の潜在意識に入り込み、どの点に注目しどの要素を強調すべきかを分析する。

マーケティングの代表的手法は「価格設定」である。消費者の価格判断はいい加減なもので、商品の容量の変化は気にせず価格だけで決定するケースが多い。商品の容量を減らし価格を維持することは、消費者の負担を増やさず企業の利潤を拡大できる方法として近年よく見られるものだ。また、価格に関しても、実は消費者は先頭数字だけを注目している、ということが分かっている。

消費者の潜在意識にある購買行動の障害の一つに「拒否反応」というものがある。人が嫌悪感を示すものはできるだけ排除することが大切だ。例えば、ゴミ袋や猫用トイレと食料品は同じ棚に陳列しない(「伝染効果」の除去)、などだ。潜在的恐怖心の影響は実際の接触がなくても生じ、選択や評価に大きな影響を及ぼすとされる。

【必読ポイント!】「あなたの考えはお見通しです」

QEEGとfMRI―消費者の考えをのぞき見する

脳画像技術と脳機能の研究により開発されたニューロマーケティングは、消費者行動に関する多くの謎を解明してきた。従来の調査方法であるアンケートは被験者の脚色が含まれ、思い込みなどでも結果は左右されるため、データの信頼度が不透明だった。

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要約公開日 2014.11.25
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