イノベーションの考え方

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出版社
日本経済新聞出版

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定価
990円(税込)
出版日
2023年01月13日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

イノベーションとは何だろう。一度でも疑問に思った方は、イノベーションに関する書籍を手にしたことがあるのではないだろうか。何をどうすればイノベーションを生み出せるのか、そもそもイノベーションとは何か。その疑問に答えを出してくれるのが本書である。

イノベーションの研究は100年前から進められており、様々な事例やアイデアの発想法などが既に蓄積されている。本書は、その蓄積された結果にもとづいて、イノベーションをいかに実現するかを論理的に記述し、イノベーションに対して疑問をもつビジネスパーソンや、研究開発に携わる方、イノベーションをもっと理解したいと考える方に向けた入門書である。

著者は、イノベーションに関する数々の著書をもち、多角的なイノベーション研究を重ねてきた。本書ではその専門性を最大限に発揮しながらも、ビジネスパーソン向けの仕様となっている。身近な事例や学術的な知識を用いて、イノベーションの基本からイノベーションのパターン、イノベーションを生み出すためのヒントなどをわかりやすく解説している。

そもそもイノベーションに正解はない。だが、過去の経験から導き出されたイノベーションの規則性や理論を正しく理解すれば、個人や組織に合ったイノベーションが創出しやすくなるだけでなく、自社の事業や組織体制の分析にもアレンジできるはずだ。イノベーションに悩むビジネスパーソン必携の一冊である。

ライター画像
衛藤実穂

著者

清水洋(しみず ひろし)
早稲田大学商学学術院教授
1973年生まれ、97年中央大学商学部卒業、99年一橋大学大学院商学研究科修士課程修了、2002年ノースウェスタン大学歴史学研究科修士課程修了、07年ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスPh.D取得(経済史)、同年アイントホーフェン工科大学リサーチフェロー、08年一橋大学イノベーション研究センター専任講師、一橋大学大学院商学研究科・イノベーション研究センター准教授、同教授を経て、19年より現職。
著書に『ジェネラル・パーパス・テクノロジーのイノベーション』(有斐閣、日経・経済図書文化賞、組織学会高宮賞受賞)、General Purpose Technology , Spin-out , and Innovation (Springer, Schumpeter Prize受賞)、『野生化するイノベーション』(新潮選書)、『アントレプレナーシップ』『イノベーション』(いずれも有斐閣)などがある。
論文はResearch PolicyやBusiness History Reviewなどに多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    イノベーションとは「経済的な価値をもたらす新しいモノゴト」である。「新しい」だけではなく、「経済的な価値」と「新規性」があるかどうかが決め手である。
  • 要点
    2
    イノベーションには試行錯誤が必要だ。画期的なモノゴトは、多くの失敗のうえに成り立っている。
  • 要点
    3
    イノベーションには経験的な規則性がある。
  • 要点
    4
    新規性の高いイノベーションを起こすには、小さくて多様性の高いチームが適切だ。また、アントレプレナーシップをもつメンバーがいるとイノベーションを生み出しやすい。

要約

イノベーションとは何か

「新しい」はイノベーションではない

イノベーションとは「経済的な価値をもたらす新しいモノゴト」である。その大切なポイントは、「経済的な価値」と「新しいモノゴト」の2つである。しかし、新しければいいということではない。イノベーションの「新しさ」とは、「新規性」が高いかどうかにあるからだ。

「新規性」は2つに分けられる。まず、ラディカル・イノベーションだ。蒸気機関の登場で生産性が飛躍的に向上したような、「既存のモノゴト」を大きく破壊するイノベーションである。もう1つは、「既存のモノゴト」に革新的な改良を加え、改良が進むにつれて経済的な価値を生み出すインクリメンタル・イノベーションである。両者はトレードオフの関係であり、一石二鳥とはいきにくいが、戦略的に考えることでチャンスの源泉になる可能性がある。

イノベーションに必要な「新しい知識」
Dilok Klaisataporn/gettyimages

イノベーションには「新しい知識」が必要だ。その理由は、新しい知識やアイデアをビジネスの源泉にすると、大きな経済的価値が生まれやすいからである。

例えば、所得が高い仕事に医師や弁護士などがあるが、彼らの平均所得が大きくなるのは、平均を押し下げる人たちが少ないからである。彼らの稼ぎ方は基本的に労働時間に依拠しており、これを5倍、10倍にしようとするのは容易でない。

一方、知識やアイデアを元にしたビジネスは稼働時間や場所にとらわれにくい。ハリー・ポッターは著者のJ・K・ローリングが寝ている間も世界中で売れているし、新薬は開発チームが食事をしている間も売れ続ける。さらに、多重利用ができることも経済価値を引き寄せやすい。知識やアイデアは多くの人が同時に消費しても、その質に影響を与えないからだ。

とはいえ、新しい知識を生み出すには投資が必要で、それは「サンク・コスト(埋没費用)」になりやすい。研究開発費や広告宣伝費に代表されるサンク・コストは、事業撤退時に取り戻すことができないため、投資を控えようとする企業も少なくない。しかし、サンク・コストは独占的な利益の源泉となり、これを避けていては大きな競争力を築けない。

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